診療のウェイトを病院から診療所にする

スウェーデンはこの約一世紀にわたって病院中心主義を貫いてきた。一定の人口(四万〜五万人)にひとつの病院をつくり、それを全国的に整備して頂点に大学付属病院を位置づけ、病院の医療費は、県が県税を徴収してまかなう(県税の八〇パーセントが病院医療費に使われていた)という方式で整備し、診療所は例外的に存在するといった完全な病院中心で、この整備は一九六〇年代には終わっていた。

ところが、この方式では予約後、診療をうけるまでの待ち時間が長すぎるという国民の不満が強く(白内障手術などは二年間も待たされた)、もうひとつは、病院の医師を選択することができない(病院では外来も入院もすべて輪番制で、担当の医師は日時によっていっもちがっていた)ために、医療に必要な医師と患者の人間関係が成立しなかった。さらに、大病院では検査を厳重に行なうので医療費も嵩む。

こういったことから、一九八〇年代に入って、人口一万〜二万人に一カ所程度の診療所を設置し、地域の住民は、まず診療所で診療を受け、重症の場合は大病院に紹介するという改革を行ない、一九九三年からスタートしている。イギリスのファミリー・ドクター制度に似た方式だが、医師への支払いは人頭割でなく月給、医療費の支払いは出来高払いで、その支払いを県からコンミューン(市町村)に移行させている。

地域の住民は診療所での自己負担は一〇〇クローネであるが、紹介なしに大病院に行くと三〇〇クローネ取られる。実際には診療所に来る患者の八パーセントが病院に紹介されているという。この診療所は日本の開業医より規模が大きく、ここから訪問看護を行なっている。

入院日数を減らすことが患者にとってプラスになる。つまり退院することそのものがリハビリになるとの考え方で施策を展開している。一九五〇年代のスウェーデンの平均入院日数は一四・八日だったが、現在は六・六日(内科七・五日、外科五・九日)に短縮されている。病床数は一九七〇年には五万床だったのが一九九〇年には三万五〇〇〇床に減っている。病床利用率は九〇〜九五パーセントで、入院回数は逆に一九七〇年の八五万回が、現在では一六八万回にふえている。入院日数はぐんと減って、アメリカのように即日退院がふえた。ただ通院(外来)は減っていない。