Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

映画 3月のライオン前編

マンガもTVアニメも見ていたが、映画館にも足を運んだ。最近の邦画はマンガの原作を実写化したものが多く、どれもマンガをなぞっている以上のことをしていないという思いがあったが、この映画はマンガのキャラクターに似た俳優を登場させていたが、それ以上に一人ひとりの役者の力によって、マンガ以上のドラマが描かれていた。17歳のプロ棋士である主人公の成長譚であり、現在は失われてしまった下町の三姉妹の周囲にうかびあがる日本人の懐かしさの入り交じる暮らしと、一局一局にしのぎを削る、天才集団でもあるプロ棋士たちの世界を主人公は行ったり来たりする。主人公の桐山零は、一人のプロとして、天才的な頭脳集団の一人として、将棋盤をはさんで一匹狼のプロたちと切り結ぶ。私のような一般人から見たら、変わった人々の集団としか思えない棋士たちの世界にも、我々と同じように、生活もあれば喜怒哀楽もある。そして将棋の世界しか、ほぼ知らない主人公は17歳にしては幼すぎるところがある。その実直さは、けなげに、清貧に、心を寄せて生きる姉妹の生き方と無理なくシンクロする。まっすぐに、一つのことに向かって生きていくのはかっこ悪いとされるのかもしれないが、棋士のように自分と向き合っていくことでしか達成できないものがある。過酷な運命のもとで、ささやかだが、手にとって実感できる現実を直視して生きていくことでしか得られないものがある。少女マンガの世界は本当に深い。LA LA LANDで感じた少女マンガ的世界観とも通じるものがある。
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