初音の巻終えて


 連続語り会二十一回「初音」の巻が無事終了しました。
みなさまありがとうございます。
この師走は選挙やらで世知辛い雰囲気も例年以上ですが、
キッド・アイラック・アート・ホールでは一足早いお正月気分を味わって頂きました。
年末に源氏が新年の衣裳を配る「衣配」から新春を迎え 
六条院、二条東の院の女の方々が贈られた衣裳に身を包んでの源氏との語らい、その中に明石の御方の存在感が光りました。

 六条院という荘厳な御殿に同じく暮らしながら、
会うことさえ許されない我が子に鴬の初音をかさねて贈る切ない歌。
そして源氏のお越しを迎える御方のありようは、
六条院源氏の心を動かし、元旦の夜御方のもとにとどまらせます。
彼女は父譲りの演出家であったのかも知れませんが、
それ以上にわが子を思う母の気持ちに私は心動かされました。
紫式部も我が子と離れ道長に仕える身、式部の心がここに重なったかのように思えますが、そんな式部の心を受けとめる殿方はいたのでしょうか。

 籠の鳥のように源氏の加護を頼んで生きるしかない女君達。
そこに玉鬘が加わって、若い公達のこころのみならず源氏の心まで揺らぐ気配の春。

 もうすぐ迎える新春。来年が美しい年になるように祈る思いです。