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徒然日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

花の棲み家 (ボタニカルアート作品のHP)

2017-08-16

[] 「月岡芳年 妖怪百物語」

 原宿の太田記念美術館で開催中の「月岡芳年 妖怪百物語」を見てきました。


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月岡芳年(1839〜92)は幕末から明治にかけて活躍した国芳門下の浮世絵師です。独特で繊細な美意識と大胆で躍動的な構図は現代でもとても新鮮で、会場では時間が経つのを忘れるくらいでした。

 

 芳年と言えば、老婆が妊婦を逆さづりにして包丁を研いでいる「奥州安達がはらひとつ家の図」が有名ですが(展示ありです!)同じ大判竪二枚続の「平維茂(たいらのこれもち)戸隠山鬼女退治之図」というのが印象に残りました。

 題材となっている話をザックリ言うと…ある日、維茂は戸隠山を訪れた際に美女に出会い酒盛りをするが、その正体が鬼女だと分かると退治した、という内容。

 

 「平維茂隠山鬼女退治之図」 https://ja.ukiyo-e.org/image/mfa/sc162667

 

 美女は艶やかに美しく、惑わされるのもさもありなんという感じです。着物は片輪車文で波間に紅葉もある模様かと思いましたが、紅葉は模様ではなくちょうど上から落ち葉や枝が振りかかっているもので、なかなか洒落ています。ちなみにこの鬼女の名前を紅葉というそうです。

 また、この作品では維茂が「川面」に写ったのが鬼だと気付いたところを描いていますが、別のでは「盃」に写っている場面になっています。水や酒に写って正体がバレるというのが面白いですね。


 「和漢百物語 鷺池平九郎」は農夫の平九郎が釣りに行って「巴蛇 うわばみ」を退治するという話です。絵は平九郎が川辺で釣り糸を垂れていて、釣り糸の下には大きなとぐろを巻いた得体の知れないものがいますが、平九郎は振り返って背後にある美しいアジサイを見ているので気づいてはいません。

 描いている場面が、退治しているところではなくアジサイを見ているところと言うのが何とも日本的な情緒を感じました。うわばみは青い水の中に線だけで描かれているので、目を凝らさないとよく分かりませんでした。


 「和漢百物語」が見られるサイト  http://www.benricho.org/Unchiku/youkai/08wakanhyakumonogatari/index.html


 絵を見ると植物にどうしても目が行くのですが、植物繋がりで印象に残ったのは「新形三十六怪撰 葛の葉きつね童子にわかるるの図」です。命の恩人のために娘に化けた葛の葉狐が、正体を知られ恩人との間に出来たわが子に別れを告げ去って行くという場面を描いたもので、障子ごしに見えるのは女性ではなく狐のシルエットになっています。その後ろから這い這いして追いかける童子が後の陰陽師安倍晴明です。上から垂れ下がるクズの花が味わい深く描かれています。


 さらに「新形三十六怪撰 四ツ谷怪談」では母子が添い寝をしている一見和やかな風景が描かれていますが、帯が蛇の鎌首のように宙に浮かんでいたり、掛け軸が妙に大きいと思ったら「葛」だったり。葛の別名は裏が白く目立つから裏見草(うらみぐさ)です。四ツ谷怪談ですから当然「恨み」ということなのでしょうね。


 「新形三十六怪撰」が出版されたのが明治22年から25年だそうで、面白いことに在原業平ザンギリ頭になっていたり、構図や雰囲気が今っぽいところもあります。新しいものと古くからあるものとが混然一体となっていた当時を感じさせられました。

  

 「新形三十六怪撰」が見られるサイト  http://www.benricho.org/Unchiku/youkai/09shinkei36kaisen/index.html


 また、全体を通して注目したのは芳年が描く人物の横顔でした。ある時点から正確なデッサンの西洋風な横顔が登場してきて興味をひきました。だからといって年代が下ると全て西洋風かといったらそうではないようです。

 写実的な動きや臨場感あふれるものには西洋風な正確な顔や身体のフォルム、歌舞伎や様式美が求められるようなものには古典的な浮世絵風のインパクトあるフォルムと描き分けているようにも感じました。

 

 今回の展示はこの「妖怪百物語」が終わると「月百姿」が始まります。加えて横浜市歴史博物館でも「歴史×妖×芳年」を開催中です。芳年好きとしては嬉しい限り、出来たら全部見たいと思っています。

   


太田記念美術館 「月岡芳年 妖怪百物語・月百姿」

横浜市歴史博物館 「歴史×妖×芳年」

2017-08-13

[] 《グロリオサ

 グロリオサイヌサフラン科 グロリオサ属)の球根をいただき「これは描きたい!」と思って大切に育てていました。

 切り花でよく見かける花ですが、切り花だと雄しべの葯がとれていたり、茎の葉が切り取られているものも多いので、球根から育てられるのは有り難いことです。

 グロリオサの蕾は花弁が最初下向きで、咲き始めるとだんだん花弁が上に反りかえっていきます、シクラメンと同じですね。最後は炎が揺らめいているような感じになります。英名でFlame Lilyと呼ばれているのも納得です。和名のキツネユリも雄しべがヒゲに見えなくもないですね。


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グロリオサ》花    


 偶然ですが、別の方からも同じ種類のグロリオサの「実」をいただけることになり、珍しいのでこれも一緒に画面に入れることにしました。花が咲いている時も、子房から雌しべが一本出ているのは目を惹きますが、受精するとその子房がピーマンのように成長していきます。

 実のデッサンを終えた段階で写真も撮っておき、後は花を粗方描き終えてから構図を決めようと、実を棚に置いてすっかり忘れていました。


 さて、実を画面に入れようとレイアウトなど考えている時、もう枯れて腐っているだろうと何気なく実を見てみると、なんと鮮やかな種が出現していました。これは天恵、描き入れるしかありません!


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グロリオサ》実・種


 今回は葉を一部鉛筆で仕上げることにしました。理由は全部彩色すると少々五月蠅く思われたのと、花の咲き始めの部分が細かいので葉の色と重なると不明瞭になりそうだったからです。


作品《グロリオサ》はこちら→「花の棲み家」

2017-07-29

[] 《アガパンサス

 アガパンサスヒガンバナ科アガパンサス属で、6,7月ごろから公園の花壇や街路樹の根元などでもよく見かける花です。今は花の盛りも過ぎて種が出来ているのも多いですね。


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アガパンサス》部分


 花の色は青紫色から白で、同じアガパンサスでも種類によって青紫色の紫が強いもの、青が強いもの、花弁の真ん中の筋がはっきりしたもの、そうでないものがあります。

 また、大きさは高さが1mくらいあるような大きなものから、鉢植えに向くコンパクトな園芸品種もあるようです。トランペット状に広がった花の丈も長短あり、花弁に少しウェーブがあるものなども見受けられます。

 

 毎年見る花でいつか描きたいと思っていたところ、花と葉を一つずつ頂きました。ボタニカルアートで割とオーソドックスな花と葉をクロスさせた構図にして、クラシックな感じで大事に描かせてもらいました。

 

 ところで、今回は下描きが終わって「さあ彩色だ」という段階で、買ってからそれほど時間は経っていないのに水彩紙の調子が悪いことが判明。「紙が風邪をひく」と言ったりしますが、表面のサイジング(滲み止め)が劣化して異常にに吸い込んでムラになったり、滑らかな線にならず横に滲んでてしまう状態です。私としては紙の保管は湿気が少なくなるようにシリカゲルを入れたり、あまり買いだめしないようにしてはいるのですが…どうにか描く前に劣化が分かる方法はないものかと切に思います。


 新たな紙に下描きをし直し、これが結構きつかった┐(´д`)┌ まあ、そんなこんなでやっと仕上がったアガパンサスです。


 作品 《アガパンサス》はこちら 「花の棲み家」

 

2017-07-25

[] 「レオナルド×ミケランジェロ展」

 先日、丸の内の三菱一号館美術館で開催中の「レオナルド×ミケランジェロ展」を見てきました。


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 レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452〜1519)とミケランジェロ・ブオナローティ(1475〜1564)の素描(ディゼーニョ、デッサン)が見られるなんて、こんな素晴らしいことはありません。

 

 会場に入るとすぐに本展の目玉であるレオナルドの《少女の頭部/〈岩窟の聖母〉の天使のための習作》とミケランジェロの《〈レダと白鳥〉の頭部のための習作》がありました。

 「うわ〜、いきなりか、心の準備ってもんがあるじゃないか」と思いましたが、ここは動揺を鎮めてしっかりと目に焼き付けなければ勿体ないというものです。


 先に展示されていたのはミケランジェロの《〈レダと白鳥〉の頭部のための習作》。描かれているレダは女性ですがモデルは男性で、女性らしさを表すために目元だけを描いたものには睫毛が目立つように描かれているそうです。

 もともとミケランジェロの女性は逞しく中性的に見えますが、レダからは性別を超えた人間の美しさを感じました。頭蓋骨の形や量感、その上にある繊細な筋肉の緊張感、さらにそれらを覆う滑らかな皮膚、その全てを慎重に正確に感知して、丹念に写しとっている素描は神業としか思えません。見れば見るほど美しく、力強く、品格がありました。


 次はレオナルドの《少女の頭部/〈岩窟の聖母〉の天使のための習作》です。左上から右下へのハッチングが創り出す人物の存在感は、まるで平面の紙からその部分だけ3次元の空間があるかのようです。加えて女性らしいしなやかな首のひねりや、眼差しが複雑さを増していてどこか深遠な雰囲気でした。

 ハッチングの手数が少ないのにこれほどまでに完成度があるのは、金属尖筆の色や黄褐色に地塗りした紙、鉛白によるハイライトが効果的使われているからなのだと思いました。

 ハッチングというのは立体感や陰影などを表す細かな平行線で、左利きのレオナルドは左上から右下へのハッチングが特徴的で、ミケランジェロはクロスハッチングになっています。


 二作品を見ただけで今日やるべき事は達成できたという気持ちでしたが、他にも画集でしか見たことがないミケランジェロの素描があり感激も一入。 

 印象に残ったのはミケランジェロの《イサクの犠牲》で、神に息子を殺せと言われたアブラハムが信仰のために息子を殺そうとして、その寸前に天使が現れ止められる。という場面を描いたものです。

 抗うイサクのポーズは決定されておらず、流動的な線が重なっていて試行錯誤の跡が見えます。さらに裏面までにまで表の形をなぞるように描かれており、天才といえども優れた作品を生み出すには苦労がある事を伺わせるようでした。

 他にも《背を向けた男性裸体像》は躍動感と筋肉が美しく完璧で、これぞディゼーニョのお手本といった感じ。《衣をまとった人物像の習作》はクロスハッチングが布目と相まって素晴らしかったです。

 

 余談ですが、展示は3Fから始まり最後が1Fになっています。監視員の方に確認したところ「2Fと3Fは行き来できるが最後の1Fに行ったら3Fには戻れない」とのことでした。なので、注目のレオナルドとミケランジェロの二作品はもっと見ておけば良かったと後悔しないように、3Fにいる間に何度かじっくり鑑賞しました。

 

 展示の合間に両巨匠の言葉が掲げられているのですが、それがまた流石に凄いのです。

 どうもミケランジェロ贔屓なのですが、「アントニオ、素描しなさい。素描しなさい。アントニオ、素描しなさい、時間を無駄にしないで。」という言葉は、絵画や彫刻全ての創作活動はそこから始まるという事や、地道な努力の必要性を端的に伝えていると思いました。

 もう一つ、「彫刻と言いますのは、削り取っていく種類のものを言っているので、付け加えていく種類の彫刻は絵画と同じものです。」というのも鋭い指摘。ふと、ジェコメッティの細く削り取られたけれど存在感のある彫刻が脳裏に浮かびました。


 展覧会は一人で行く事が多いのですが、それ以外はほどんど親友のMさんと二人。で、今回は二人でした。見終わって時間があったので原宿へ行って浮世絵専門の隠れ家的美術館「太田記念美術館」へも行ってきました。ちょっとハードでしたけれど、Mさんいつもありがとう。 


 三菱一号館美術館「レオナルド×ミケランジェロ展」

2017-07-07

[] 《クレマチス

「天空」という素敵な名前のクレマチスをいただいたので描いてみました。

 花の色はうす紫、花径が10センチ弱、雄しべが多数弁化していて花弁の沢山ある八重咲きのクレマチスです。


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クレマチス‘天空’》部分

 

 花弁と書きましたが、クレマチスは真の花弁というのはなく花弁に見えるのは萼片だそうです。言われてみれば確かに萼は見当たりませんよね。


 今回描いたものは、葉や葉の付き方がよくあるタイプとはちょっと違っていて、クレマチスらしい葉ではないけれど、見た通りに描いてあります。以前描いたミゼットブルーはよくあるタイプではないかと思います。

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クレマチス‘天空’》部分


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クレマチス‘ミゼットブルー’》部分  以前のブログ記事→ http://d.hatena.ne.jp/kyou2/20150621/p1


 「天空」はこれでもかというほど花弁(と言ってしまいますが (;^_^A) があり、ワサワサという感じでした。また雄しべが中心に少しだけ残り(雌しべはよく分かりませんでした)未熟花弁状のものも見受けられ、この花が沢山の雄しべが弁化したのだという様子がよく分かりました。


 作品《クレマチス‘天空’》はこちら→「花の棲み家」