渡邉義浩『三国志事典』(2017年5月22日)

先日、2017年5月22日(月)に大修館書店より渡邉義浩『三国志事典』が3888円(税込)で発売された。

三国志事典 - 株式会社大修館書店
http://www.taishukan.co.jp/book/b287561.html

本書の紹介文と目次は以下の通りである。

三国志研究の第一人者による初の総合事典!

三国志』を読み、学び、楽しむための情報が詰まった事典。正史『三国志』に伝のある人物440人全員についての解説をはじめ、三国時代の歴史や名場面、文化・宗教など、基本事項を網羅。また、邪馬台国卑弥呼でおなじみの「魏志倭人伝」の原文も返り点付きで全文を掲載し、解説。索引や年表、資料類も完備。


目次
第Ⅰ章 正史『三国志
陳寿の生涯
○正史『三国志』の成立
裴松之
○『後漢書』について
○『晉書』について
三国時代とは
 1.蒼天 已に死す
 2.乱世の姦雄
 3.赤壁の戦い
 4.三国鼎立
 5.秋風五丈原
 6.物語の終焉
○『三国志』物語の派生
 1.蜀漢正統論の芽生え
 2.朱子学大義名分論
 3.三国伝説の展開
 4.「説三分」と『三国志平話』
 5.『三国志演義』の形成
 6.毛宗崗本の特徴

第Ⅱ章 魏の歴史と人物
○魏の歴史戦略
○魏の人物小伝

第Ⅲ章 蜀の歴史と人物
○蜀の歴史戦略
○蜀の人物小伝

第Ⅳ章 呉の歴史と人物
○呉の歴史戦略
○呉の人物小伝

第Ⅴ章 後漢書・晉書の人物
後漢末の歴史概略
後漢末の人物小伝
○西晉の歴史概略
○西晉の人物小伝

第Ⅵ章 名場面四十選
(1)乱世の姦雄
(2)鞭打つ劉備
(3)孫堅の神秘的出生
(4)董卓専横
(5)菖操の大義
(6)孫堅袁術
(7)天下の英雄は君と私である
(8)袁紹の覇権
(9)関羽の義
(10)江東を託す
(11)荀紣の分析
(12)髀肉の嘆
(13)三顧の礼
(14)草盧対
(15)君臣水魚の交わり
(16)長坂坡の忠臣
(17)長坂橋の咆哮
(18)魯肅の戦略
(19)名門の貴公子
(20)仁者の兵
(21)神となった英雄
(22)呉下の阿蒙
(23)漢魏革命
(24)遺孤を託す
(25)七縦七擒
(26)出師の表
(27)泣いて馬謖を斬る
(28)後出師の表
(29)天下の奇才
(30)死せる諸葛、生ける仲達を走らす
(31)孫策の江東平定
(32)白馬の戦い
(33)官渡の戦い
(34)曹操華北統一
(35)赤壁の戦い
(36)劉備の入蜀
(37)夷陵の戦い
(38)街亭の戦い
(39)蜀漢の滅亡
(40)三国統一

第Ⅶ章 思想と文学
儒教一尊から四学三教へ
1.儒教の展開
 (1)鄭玄
 (2)荊州
 (3)王肅
2.文学
 (1)曹操
 (2)曹丕
 (3)曹植
 (4)「建安の七子」
 (5)陸機
 (6)阮籍・嵆康
3.玄学
4.史学
5.道教
6.仏教

第Ⅷ章 魏志倭人伝と国際関係
一、「魏志倭人伝」を生んだ国際関係
 1.曹操の抑圧策
 2.海に活路を求めて
 3.漢の融和政策の継承
 4.「四国志」の可能性
 5.日本から発掘される呉鏡
二、「魏志倭人伝」に見える和国の虚と実
 1.朝貢と回賜および制書
  (1)朝貢と回賜、制書
  (2)往来する使者
  (3)倭国の乱を見届ける
 2.倭国の地誌と政治体制
  (1)東南の異民族
  (2)儋耳と朱崖
  (3)倭国への好意
  (4)持衰
  (5)特産物
  (6)占い
  (7)習俗
  (8)女性の多さ
  (9)国制
  (10)身分
  (11)卑弥呼の王権
  (12)他の倭種と倭国の大きさ
 3.倭の諸国と道程
  (1)帯方郡の東南
  (2)対馬国壱岐国
  (3)末蘆国・伊都国
  (4)奴国・不弥国
  (5)投馬国・邪馬台国
  (6)旁国
  (7)郡より一万二千里の彼方
 4.倭人伝から見える邪馬台国
  (1)中国に類似した官制
   2-(9) 国政
  (2)呪術に基づく内政
   2-(11) 卑弥呼の王権
   2-(10) 身分
   2-(6) 占い
   2-(4) 持衰
  (3)鋭敏な国際感覚

第Ⅸ章 資料集
○各時代の勢力全体図
○三国年表
○官職一覧
裴松之引用書一覧
○基本用語集

索引
○人名索引
○事項索引

これまで三国志に関する事典といえば渡辺精一三国志人物事典』(講談社,1989年8月)や沈伯俊 他『三国志演義大事典』(潮出版社,1996年7月)、小出文彦 監修『三国志人物事典』(新紀元社,1999年1月)、坂口和澄『正史三國志群雄銘銘傳【増補・改定版】』(潮書房光人社,2012年12月)などが刊行されたが、そのほとんどが『三国志演義(毛宗崗本)』に拠る内容であった。ついに三国志の研究者による演義ではなく正史に拠った事典が発売ということで、三国志ファンにはたまらないであろう。しかしながら目次を見ると、例えば「第Ⅶ章 思想と文学」では鄭玄の儒や荊州学、王肅の学問など渡邉先生の「名士」論が土台となっている事が多く記されているため、コアな三国志ファンにとっては第Ⅱ〜Ⅴ章以外は賛否両論あるだろう。

これだけ充実した内容の辞典はなく、最新の研究も踏まえて執筆されているであろう。非常に安価な価格に設定されているため、三国志ファンや三国志に興味がある方、またWikipediaで人物や出来事について調べる頻度が多い方は手元に置いても損はしないだろう。

三国志事典

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三国志人物事典

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三国志人物事典 (Truth In Fantasy)

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正史三国志群雄銘銘伝

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