私が作ると、

私が作ると、
まったくの架空のハナシなんだけれども、
実在の地名を使ってしまいます。
実在する地名と、架空の地名を混在させて、それで、かえって混乱を来す、ナンテことにもなりかねません。
キムさんという在日韓国人の名前が登場するというのも、私の癖、なんだろうと思います。

この教材を作るにあたっても、いろんな人たちの協力を仰ぎました。
ジープも、ランドクルーザーも宅急便も、商品名だよ。」と教えていただきました。

「現役を退いてリタイアした」という言い方が、くどいですね。
「悠々自適の晴耕雨読の」←晴耕雨読なら悠々自適にきまってんだろうと言われてしまいますね。

情報紙⑦


グループ実習【伊豆高原の住人】

 伊豆の天城高原村では、現役を退いてリタイアした人たちが悠々自適の晴耕雨読の生活をしています。
あなたは、天城高原村の麓の郵便局の集配課に勤務する郵政社員です。
 今日、届いた郵便物の中に「天城高原村 柿の木のある家 様」というのがありました。しかし、番地や氏名が書かれていないのです。そして、差出人の住所氏名も不明です。
 あなたは、現在の集配地区に配属されて日が浅く、まだ、あなたは、この村に郵便物を届けたことがありません。
 でも、あなたは、この宛先だけをたよりに、受取人をつきとめたいと思っています。

 あなたのグループの人たちは、お互いの手持ちの情報を交換しあいながら協力しあって課題解決をするということに合意しています。
 課題解決のための情報交換の制限時間は、「始め!」の合図があったときから、  分以内です。
グループに与えられた模造紙には、単語や記号や数字、直線や曲線を書きこむことはできますが、グループのメンバーのそれぞれに与えられた情報の文章をそのままに書き写すことは、できません。
 また、模造紙に書きこむための筆記用具は、グループに与えられたマーカーだけです。


あなたが知っている情報

■バンガローに住んでいる人は、雉(きじ)を飼っています。
■土生都(はぶつ)さんの隣りに住んでいる人は、ジープを運転しています。
■村の家々は、ゆるやかな半円形のかたちに並んでいます。



情報紙③


グループ実習【伊豆高原の住人】

 伊豆の天城高原村では、現役を退いてリタイアした人たちが悠々自適の晴耕雨読の生活をしています。
この村の人たちは、それぞれ、異なった種類の果樹を栽培しています。
 あなたは、種苗(しゅびょう)会社の営業マンです。
あなたは、営業本部長から、それぞれの住人がどんな果樹を栽培しているのかについて調査するように命じられています。
あなたは、このグループの人たちと協力しあいながら、「誰が、どのような果樹を栽培しているのか」をつきとめなければなりません。

 あなたのグループの人たちは、お互いの手持ちの情報を交換しあいながら課題解決をするということに合意しています。
 課題解決のための情報交換の制限時間は、「始め!」の合図があったときから、  分以内です。
グループに与えられた模造紙には、単語や記号や数字、直線や曲線を書きこむことはできますが、グループのメンバーのそれぞれに与えられた情報の文章をそのままに書き写すことは、できません。
 また、模造紙に書きこむための筆記用具は、グループに与えられたマーカーだけです。


あなたが知っている情報

■丸太小屋の家は、この村の最も南側の位置にあり、裏の林では松茸(まつたけ)と蕨(わ らび)がとれます。
■純和風の数寄屋造りの家は、古い民家を移築した家の隣りにあります。
■真田(さなだ)さんは、スポーツカーを運転しています。
薄野さんは、雉(きじ)を飼っています。

情報紙①


グループ実習【伊豆高原の住人】

 伊豆の天城高原村では、現役を退いてリタイアした人たちが悠々自適の晴耕雨読の生活をしています。
この村の人たちは、それぞれ、異なった種類の動物を飼っています。
 あなたは、麓(ふもと)の町の動物病院に勤務する看護師です。
あなたは、院長から、それぞれの住人がどんな動物を飼っているのかを調査するように命じられています。
あなたは、このグループの人たちと協力しあいながら、「誰が、どのような動物を飼っているのか」をつきとめなければなりません。

 あなたのグループの人たちは、お互いの手持ちの情報を交換しあいながら課題解決をするということについて合意しています。
 課題解決のための情報交換の制限時間は、「始め!」の合図があったときから、  分以内です。
グループに与えられた模造紙には、単語や記号や数字、直線や曲線を書きこむことはできますが、グループのメンバーのそれぞれに与えられた情報の文章をそのままに書き写すことは、できません。
 また、模造紙に書きこむための筆記用具は、グループに与えられたマーカーだけです。


あなたが知っている情報

■金(キム)さんは、梨(なし)を栽培しています。
■純和風の数寄屋造り(すきやづくり)の家の車庫には、ランドクルーザーがおかれてい ます。
■真田さんは、薄野(すすきの)さんの隣りに住んでいます。
■丸太小屋の裏庭には、軽トラックがおいてあります。

グループ実習教材の開発

体験学習のためのグループ実習教材の開発  

 
 このために筆者が開発したグループ体験学習の実習教材のうち【職業の社会的威信】【民宿・塩屋を探そう】【人生の転機】【宗教団体の調査】【究極の選択】【Fスケールをやってみよう】は拙著『学生と授業をつくる』(注2)に収録した。その後に開発した【動物図鑑】【志士たちの会議】【すみれ寮の住人】【消防指令室】【面接で求められていることは】【円形テーブルの8人】【社会学教室再訪】【内定者名簿をつくろう】【休暇希望調整会議】【恋仲の二人】【講演会の企画】【海上遭難】【陪審員会議】【捜査官会議】は、拙著『ファシリテーター塩谷の体験学習』(注3)に収録してある。
 その後も筆者は継続的にこの「國士舘大學教養論集」に【野球チームのポジション】(注4)【原文で読む“若い女性と船乗り”】(注5)【営業所長会議】(注6)【新卒採用の重視点】(注7)【出店計画会議】【研修所を探そう】【ルイーザの事例】(注8)【ペンションを探そう】(注9)【動物たちの行進】(注10)【七福神めぐり】(注11)【販売促進会議】と【販売促進会議Part?】(注12)を投稿してきたが、今回は【伊豆高原の住人】である。この作品は筆者の全くのオリジナル教材とは言い難い。The 1981 Annual Handbook for Group Facilitaors の 284.FARMERS:INFORMATION SHARING(注13)を元に改編したものである。



注2『学生と授業をつくる−今、ここでの体験学習−』1998年3月1日(株)プレスタイム
注3『ファシリテーター塩谷の体験学習・実習編』2005年9月30日 (株)プレスタイム
注4「國士舘大學教養論集」No.59 2006年3月30日 pp.53−68.
注5「op.cit.」No.60 2006年10月31日 pp.65−75.
注6「op.cit.」No.61 2007年3月31日 pp.91 −98.
注7「op.cit.」No.62 2007年11月30日 pp.83−94.
注8「op.cit.」No.63 2008年3月31日 pp.65 −101.
注9「op.cit.」No.64 2008年11月30日 pp.53 − 69.
注10「op.cit.」No.65 2009年3月30日 pp.15 − 37.
注11「op.cit.」No.66 2009年11月30日 pp.49 − 64.
注12「op.cit.」No.67 2010年3月31日 pp.39 − 65.
注13 Aharon Kuperman The 1981 Annual Handbook for Group Facilitaors Edited by John    E. Jones & J. William Pfeiffer San Francisco, CA. pp.16 − 23.

グループ実習教材の開発

体験学習のためのグループ実習教材の開発  

 筆者はこれまでに、一般教養科目社会学の授業に取り組んできた。講義形式の授業は、とかく教師から学生への一方的な知識の伝達のみに終始しがちである。この弊を減らして学生参加型の授業にすべくグループ体験学習の手法を取り入れてきた。
 そのネライ(学習目標)は、グループ内コミュニケーションのあり方・ヒューマンリレイションズのスキル・チームワーク・リーダーシップ・グループ内コンセンサスの形成・協働作業のシナジー・価値観の明確化・自己理解etc.について学ぶことにある。
 授業科目名に社会学という看板を掲げれば、その授業で扱い得ることは、日本の社会のなかで起きている出来事のあらゆる事柄に及ぼう。そして、それらの様々な出来事を、社会的行為・役割・集団・組織、そして社会制度に関連づけて論ずれば社会学的視角からの言わばマクロな社会学たり得る。これに対して筆者の場合は、ミクロな視点からの社会学として“この授業の教室のなかで、どんな出来事が起きているのか”について学生たちを着目させ、価値・規範・役割・状況的便益を切り口とする微視的社会学を心掛けてきた。
 グループ・ダイナミックスの創始者クルト・レヴィンは、1939年に「私は社会学において実験を企てることが可能であると信じている。それは物理学や化学の実験と同じように、科学的な実験とよばれるだけの権利をもつものである。」と期待をこめて明言した。(注1)
 筆者としてはこの提案に倣い、授業の教室をラボラトリーに見立てて小集団を構成し、その集団活動のなかに起きる様々な出来事から学ぶグループ体験学習を実践してきたのである。



注1 K.レヴィン 末永俊郎訳『社会的葛藤の解決−グループ・ダイナミックス論文集−』1967年12月30日 東京創元新社 p.94