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赤錆拾い このページをアンテナに追加 RSSフィード

2002/12/24(Tue) vermilion

[]vermilion::text、99階、一号室(フロア99、旅人が最初に入った部屋)、ベータ vermilion::text、99階、一号室(フロア99、旅人が最初に入った部屋)、ベータを含むブックマーク vermilion::text、99階、一号室(フロア99、旅人が最初に入った部屋)、ベータのブックマークコメント

「ようこそ、旅人」

けだるげな様子でその少女は言った。

「どうした、ここが気に入らないのか」

旅人を驚かせたのはその少女の周りに散らばっている変死体と思われる人間たちであった。彼らは半身を開かれて内臓を烏についばまれていたり、尻から口にかけて串刺しにされていたり、身体中の皮膚をすべて剥がれて絶え間なく出血していたりしたが、どれも生きており、その苦痛に絶え間なく小さなうめき声をあげ続けていたのである。そんな、絶え間なく苦痛を与えられながらも生きている存在が、彼女の周りに数十体、いや数十人存在した。

吐き気をこらえながら旅人は少女にたずねた。

「このものたちは」

少女は馬鹿にしたように、眉を少しだけ持ち上げて旅人を見た。

「なんだ、知らないのか」

手の内の扇子をもてあそびながら少女は続けた、

「世界の幸福の量には限りがある」

少女の視線は美しい細工の施された鉄と絹で出来た扇に落とされていた。

「この者たちは世界で誰かが幸福になることと引き換えに、苦痛という形で不幸を背負っている者たちである」

ばしゃり、と意外に乾いた音をたてて扇が開かれ、そしてまた閉じられた。

「彼らが、世界の不幸を担っているのか」

旅人の問いかけに少女はいかにもおかしげに唇を歪めた。

「こんなもので」

少女の手から鉄扇が飛び、床で呻いていた男の眼に突き立った。眼窩に収まることができなくなった男の眼球は破裂しながら男の眼窩を飛び出し、床を何かわけの分からない体液で染め転がった。男は何か叫び声を上げようとしたが、すでにその力すら残っていないようだった。ただ、自身の体液の詰まった鼻をすすろうとしたせいか口の上の辺りが短く震えただけだった。

「こんなもので世界の不幸を担いきれるものか」

少女は鬱陶しそうに左手を旅人に向けて振った。

「去れ、旅人。ここはお前の居るべきところではない」

旅人に残された選択は踵を返し、うめき声を背中に聞きながら来た道を戻ることだけだった。