弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

家庭裁判月報第64巻第4号 アメリカの離婚+子の氏の変更

・「アメリカにおける離婚後の子の監護と面会交流について〜ニューヨーク州を中心に〜」
アメリカでの実務調査の報告です。アメリカでは共同監護で云々…と夢物語のようなことが語られるのに接することがありますが、実際はそうでもないみたいですよ。アメリカでは云々…と語ったことのあるような人には、是非一読してほしいと思います。

母が監護親となる割合は8割を超えているところ、このうち非監護親となる父が共同監護権を有する割合は約2割にとどまり、5割は面会交流権のみ、約3割は共同監護権も面会交流圏もない。(略)アメリカでは、かつては共同監護の名の下、法的監護権及び身上監護権の両面において父母を平等に取り扱い、子に父母の家を行き来させるといった監護態様が重視された時期もあったようであるが、このような監護態様は子にストレスを与え、その心情を不安定にするおそれがあることが理解されてきたことから、現在では多くの場合、離婚以前から子にとって主たる監護者であった父母の一方が子と同居し、他方の親は定期的に面会交流するという監護態様に落ち着くようになったとの指摘に合致すると思われる。

ニューヨーク州における監護権及び面会交流権について説明したブックレットには、「共同監護は、両方の親の仲が良くて一緒に子どもの養育に関する事を決められることを前提として与えられます。両親が養育に関して意見が合わなくて、裁判所に行き、裁判官にどちらの親が養育に関する事を決める管理を持つかはっきりさせることを求めるようでは、裁判官は共同監護の決定をしません。」などと説明されている。

今回の調査を実施するまでは、アメリカでの離婚後の共同監護が、離婚前と同様、父と母が監護権の全部であれ一部であれこれを共同で行使するものだとすれば、意見が一致しないが故に婚姻関係が破綻に至った父と母が離婚後であれば意見が一致するようになるとは思えず、うまくいくのだろうかと疑問に感じていたところがあった。しかし、実際にアメリカで行われている共同監護を見ると、父母の協力が見込まれる事案においては離婚前の共同監護と同様の態様が取られているものもあるが、それよりは、医療や教育などの事項によって権限を父又は母に振り分け、父又は母は振り分けられた権限を各々単独で行使する結果となるものが主流のようであった。このような振分けについての合意すらできず、父母の協力が望めない事案においては、端的に父又は母による単独監護が命じられていることも分かり、疑問が解けた感がある。

このほか、養育費や面会交流の確保のための取組には学ぶべきものが多くあるという指摘もあり、いずれにせよ一読をお勧めします。

札幌高裁平成23年1月28日決定
非嫡出子の氏を認知した父の氏に変更する許可申立を却下した原審判を取り消し、氏の変更を認めた決定です。札幌家裁は氏の変更に厳しい伝統でもあるんでしょうかね???(→参照
札幌家裁に氏の変更を却下されて抗告しないで諦めてしまっている気の毒な当事者がどれだけいるのかと気になります。それにしても家月は、取消例の原審判掲載の際に裁判官名を載せないことにしたのでしょうか…。以前はたしかに載っていたのですが。