第146回芥川賞・直木賞の作品一覧(2012年1月17日発表)

先週、芥川賞直木賞が発表されました。

メモ書き。

第146回。平成23年度(2011年度)下半期。←
第145回。平成23年度(2011年度)上半期。
第144回。平成22年度(2010年度)下半期
第143回。平成22年度(2010年度)上半期
芥川賞直木賞昭和10年(1935年)に制定。

--- 芥川賞

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左(←)「田中慎弥」(39)、 右(→)「円城塔」(39)

写真では左側と右側に並ぶ二人・・・、
でも作品は逆、右側(純文学)と左側(前衛的)です


田中慎弥『共喰い』(すばる10月号)
田中慎弥氏は山口県下関市出身、5回目のノミネートで受賞。
高校卒業後(ニートしつつ)作品を書き溜め、平成17年デビュー
平成20年に、三島由紀夫賞川端康成文学賞をW受賞
強烈な個性、会見が話題にも 「取って当然」
一見子供っぽくも見えるが、人の心に残る話し方はウマい


円城塔『道化師の蝶』(群像07月号)
円城塔氏は札幌市出身の39歳、3度目のノミネートで受賞。
IT関連の会社でエンジニアを勤めながらSF小説などの執筆
平成19年に文學界新人賞を受賞してデビュー
平成23年に第3回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞
優等生な印象
次に直木賞を取るのが命題と言われるくらいプレッシャーのかかる早稲田の奨励賞・・・


芥川賞は新聞・雑誌に発表された純文学短編作品。
芥川賞の両作品の書籍はこれから発売予定。

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『共喰い』の主人公は、地方に暮らす17歳の少年、
父親を嫌悪する少年が性に目覚めるなかで、
父親に似てくる自分への葛藤を描いた、純文学の王道作品
デビューの頃の作品はもっと個性的だったらしい、
審査員に合わせて書いた賞をとるための作品なのかも?

(芥川賞) 共喰い 田中慎弥 (単行本 - 2012/1/27) 1,050円

共喰い

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田中 慎弥
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『道化師の蝶』には、
「多言語を操る作家」や「架空の蝶」(言語?)などが登場
場所・時間・人物が複雑に絡み合いながら物語が進んでいく
テーマは言語
今話してる言葉は、どう伝わっているのか?
どうして外国語は存在するのか?
言葉が分かれたとしたら、どこから分かれたのだろう?
始まったのであれば、どこで始まったのだろう?
着想(アイデア)、または記憶をどう捕まえるか?
どこからか降ってこなければイケない…降ってくる?

(芥川賞) 道化師の蝶 円城塔 (単行本 - 2012/1/27) 1,365円

道化師の蝶

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円城 塔
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--- 直木賞

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葉室麟」(60)

葉室麟蜩ノ記』(ひぐらしのき)(祥伝社※本名は非公表
葉室麟氏は北九州市出身で60歳、5度目のノミネートで受賞。
大学を卒業後、新聞記者を経て、
50歳を過ぎてから本格的に小説を書き始め平成17年にデビュー

受賞作蜩ノ記』は、江戸時代の地方を舞台とした時代小説
テーマは10年の命(限られた命をどう生きるか)
10年後の切腹を命じられた元・郡奉行と、彼を監視する若者
二人の交流を通して描かれる、若侍の成長&秘めた恋物語?
還暦を向かえた作者ならではの作品、人生の残り時間を考えるように・・・
時代小説にもかかわらず、とても読みやすい、会見
も非常にわかりやすい
「読者に想いが伝わってると実感できた作品、これで受賞できて嬉しい」
「地方の方が歴史の断面がよく見える、負けた人の話が多いので」

(芥川賞) 蜩ノ記 葉室麟 (単行本 - 2011/10/26) 1,680円

蜩ノ記

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葉室麟
祥伝社
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10年後の切腹、一見残酷にも見えるが、
いつ死ぬかわからないのも、逆に怖いかも
死について考えてしまいました

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さすが、発表後の売り上げランキングがスゴイ
特に不機嫌会見で話題になってた田中氏のは・・・

受賞会見で田中さんが不機嫌だったのは、前の円城さんの会見で出てたニコニコ記者からの質問が原因か?


第146回芥川賞・直木賞 受賞者記者会見
ニコニコ動画Youtube

芥川賞:石原・東京都知事が選考委員を正式退任毎日新聞 2012年1月21日 東京朝刊

 芥川賞を主催する日本文学振興会は20日、作家で東京都知事石原慎太郎さん(79)が17日選考の第146回を最後に同賞選考委員を退任すると発表した。石原さんは今回の候補作について「駄作のオンパレード」などと発言し、「今回で辞める」と表明していた。石原さんは95年から芥川賞の選考にあたってきた。同賞選考委員は、黒井千次さん(79)が同じく今回で退任、昨年は池澤夏樹さん(66)が退任した。

ありゃ、ほんとに辞めちゃったよ。。。

オツカレサマでした

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芥川賞 :円城塔さんと田中慎弥さん 直木賞は葉室麟さん毎日新聞デジタル版 2012年01月17日

 第146回芥川龍之介賞(以下、芥川賞)と直木三十五賞(以下、直木賞)の選考会が17日あり、芥川賞円城塔(えんじょう・とう)さんの「道化師の蝶」と田中慎弥(たなか・しんや)さんの「共喰い」、直木賞葉室麟(はむろ・りん)さんの「蜩ノ記ひぐらしのき)」に決定した。

 円城さんは1972年札幌市生まれ。東北大学理学部物理学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。「オブ・ザ・ベースボール」で第104回文学界新人賞受賞および第137回芥川賞候補。「烏有此譚」で第32回野間文芸新人賞受賞。2011年第3回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞受賞。「これはペンです」が第145回芥川賞候補。円城さんの作品が候補作に挙がったのは3度目。

 田中さんは1972年、山口県下関市生まれ。91年に山口県立下関中央工業高校を卒業。「冷たい水の羊」(2005年新潮11月号)で第37回で新潮新人賞を受賞。2008年「蛹」で川端康成文学賞を最年少で受賞、同年に「蛹」を収録した作品集「切れた鎖」で三島由紀夫賞受賞。ほかに「神様のいない日本シリーズ」「犬と鴉」「実験」などの著書がある。芥川賞の候補に挙がったのは今回が5度目。

 葉室さんは1951年、北九州市生まれ。76年西南学院大学文学部卒。地方紙記者等を経て05年「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞を受賞し、作家デビュー。07年「銀漢の賦」で松本清張賞を受賞。今作で5回目の候補。(毎日新聞デジタル)

芥川賞、4回目投票で1人に 直木賞、リード保ち決選制す 両賞の選考経過 / msn 産経ニュース 2012.1.22 08:19 (1/3ページ)

 17日に発表された第146回芥川賞直木賞日本文学振興会主催)。芥川賞は前回の「該当作なし」から一転、ともに39歳作家のダブル受賞。直木賞は60歳作家の時代小説が射止めた。東京・築地の料亭「新喜楽」で行われた選考の過程、講評を紹介する。

 ■芥川賞選考委員 石原慎太郎小川洋子川上弘美黒井千次島田雅彦高樹のぶ子宮本輝村上龍(欠席)、山田詠美

 ■直木賞選考委員 浅田次郎阿刀田高伊集院静北方謙三桐野夏生林真理子宮城谷昌光宮部みゆき渡辺淳一 =いずれも五十音順、敬称略

芥川賞
円城塔さん「道化師の蝶」 田中慎弥さん「共喰い」 4回目投票で2人に

 芥川賞の選考は、選考委員の村上龍さん(59)が欠席したため、8人で行われた。約2時間の討議の末、円城塔(えんじょう・とう)さん(39)の『道化師の蝶(ちょう)』(群像7月号)と田中慎弥さん(39)の『共喰(ともぐ)い』(すばる10月号)の2作受賞が決定。会見した選考委員の黒井千次さん(79)は、「現代的で知的な作品と、いささか古めかしい伝統的作品という対照的な2作を受賞作とできたのはいいこと」と祝った。

 計4回の投票が行われ、先に受賞が決まったのは田中作品。「文章の密度が大変に高く、作品世界が人物も含めてきっちりと描き出されている。これだけ力量のある新人はめったにいない」として、大半の委員の支持を得た。5度目の候補での受賞となったが、「過去4作に比べても圧倒的にすぐれている」と、完成度を高く評価された。

 一方、円城作品は「筋があって人物が活躍して、という普通の小説ではない。(小説の中に小説がある)一種のメタ小説でありフィクション論」との難解な内容から票は割れ、4回目の投票で過半数に達した。黒井さんも「部分的に面白いところがあったが、全体としてうまく作品イメージをつかめず、積極的に賛成しなかった」と明かすが、川上弘美さん(53)と島田雅彦さん(50)の2人が強く支持。試みの新しさを評価される形で、受賞が決まった。

 今回で選考委員を勇退する黒井さんは、25年に及ぶ選考参加を振り返り、「候補作を通読したときの感じは、毎回違う。何かしら時代の空気の反映があった」と述懐。報道陣の拍手に包まれて、ほほえみながら会場を去っていった。(磨井慎吾)

直木賞
葉室麟さん「蜩ノ記」 リードを保ち決選制す

 直木賞の選考は1時間40分ほどで終了し、葉室麟(はむろ・りん)さん(60)の『蜩(ひぐらし)ノ記』(祥伝社)に決まった。選考委員の浅田次郎さん(60)は「(5度目の候補で)これまでにない完成度の作品に仕上がっており、安心して読める時代小説だ」と受賞作をたたえた。

 1回目の投票では『蜩ノ記』が頭ひとつ抜け出し、桜木紫乃(しの)さん(46)の『ラブレス』(新潮社)と伊東潤さん(51)の『城を噛(か)ませた男』(光文社)が同点で続いた。

 伊東さんの『城を噛ませた男』には「関東武士というテーマを選んだのはユニークで、果敢に挑戦している」との声もあったものの受賞ラインには届かず、最終的に残った2作での決選投票の結果、『蜩ノ記』が受賞作に決まった。桜木さんの『ラブレス』は「話が非常に面白かったが、面白すぎるがゆえに進行の途中に矛盾のある点などが不利に働いた」という。

 『蜩ノ記』については否定的な意見は出なかったといい、過去の選考では葉室さんの作品に厳しい評価を下していた浅田さんも絶賛。「大変な健筆でありこれからも大活躍なさるはず。将来に期待しております」と太鼓判を押した。(溝上健良)