論文の書き方(1):書く順序

わたしは学生,院生,ポスドク時代でかなり丁寧な論文指導を3人の方から,受けることができました.また,博論にあたってはさらにたくさんの方がいろいろご指導してくださいました.これはとても幸せな例だと思います.ラッキーでした.

いろんな方からご指導いただいたり,自分なりにいろいろ読んだりして,現在行っている書き方をここでまとめてみようと思います.

論文執筆は,だいたい以下の順序で進みます.

  1. 方法,結果,図を作る(英語)
  2. 考察>序論の骨組みを考える(日本語箇条書き)
  3. 考察>序論の内容を書く(日本語メモ)
  4. 序論>考察を書く(英語)
  5. 書き上がったものを何度も,何度も,何度もなおす

だいたい,この順序で進め,疲れたり,はかどらなかったりすると

  • 文献データベースに入力(BibTex
  • 謝辞,アブストラクト,その他を書く
  • スペルチェック,文法チェック

ということをやります.

ではそれぞれ順を追ってもう少し詳しくお話しします.

まずはじめは方法,結果,図を作ります.方法,結果のような具体的なところは実験が終わったらできるだけはやく書いてしまいます.このへんはだいたい決まり文句なので,最初から英語で書きます.

その後,考察の骨組みを考え,それができたら序論の骨組みを考えます.骨組みとは,書く予定のパラグラフの内容を見出しとしてまとめたものです.例えば,考察ですと

  • 統制条件の解釈
  • 新規実験条件の解釈と仮説との対応

なんて感じで,書く予定のことをパラグラフの単位でまとめます.できるだけ短くし,この段階ではあまり詳しく書きません.骨組みは日本語で書きます.どうせメモ程度のものですし,この段階で英語表現を考えても,多くの日本人にとっては時間の無駄だと思います.

わたしは必ず考察から骨組みを考えます.考察で書くべきことを,ひとつずつ序論でも書けば非常にバランスの良い論文になると思います.考察から書くのは,結果から言えることをできるだけバランス良く展開するためには有効です.序論から書くと,必ずしも結果から導けないことを序論で書いてしまい,序論と結果,考察の対応がおかしくなることがあります.

骨組みを考えているとき,分析に足りないところが出たら,結果をもう一度見直します.再分析をかけることもあります.また,骨組みの流れと,結果や方法の記述でうまく対応しない部分があったら,吟味の上きちんと対応がつくようにします.例えば,骨組みでは上の例のように,統制条件>新規実験条件という順序になっているのに,結果で逆の順序で記述されていた場合どちらが分かりやすいか吟味の上どちらか一方にそろえます.どこのセクションでも同じ順序で出てくるのが理想だとわたしは思っています.国語的な作文ですと表現を繰り返すことをよしとしません.しかし,論文ではむしろ,同じ構造を反復することにより,わかりやすさが増すと考えます.文章としての美しさより,わかりやすさが論文では大切です.どうせ美文は英語で書けませんし.

これと共通することは,あるひとつの対象を必ずひとつの用語で統一して呼ぶように心がけることです.例えば,自尊感情得点と方法で読んだものを自尊スコアなどと呼ぶとわかりにくくなります.

バランスの良い骨組みができたら,そこにどんどん肉付けしていきます.この段階でもほぼ日本語でやります.詳しい表現はさておき,おおよそ箇条書きで書くことを,骨組みに付け加えます.例えば,

  • 統制条件の解釈
       
          
    • A条件<B条件
          
    • Xoxoo (1998)を再現
          
    • .....
         
  • 新規実験条件の解釈と仮説との対応
      
          
    • A条件>B条件:新規実験条件が要因αの効果を逆転
          
    • このパタンは予測と.....
         

こんな感じです.この段階で英語表現が浮かんだら,横に付記することもありますが,基本的には日本語のみです.ただし,できるだけ英語に直しやすい日本語にします.細かく書いてみて,段落がつながらないようだったら,骨組みを変更します.なお,それに伴い全体のバランスがどう変わるか常にチェックをします.この段階で論文に書くべきことは全部書き付けます.

できあがったものをチェックし,まあいいだろうと思ったら,それを英語に直します.わたしは英語に直すときは,これまでと違い序論,考察の順序で書いていきます.最初に書くときは,あまり細かいことにこだわらず,ばんばん書いていきます.スペルミスもそれほど気にしません.書いていて,おかしかったら骨組み,内容を修正します.そして,また書き進みます.

とりあえず書き上がったら,今度は細かく見ながら,英語表現を考えていきます.読んではなおし,読んではなおしを何十回と繰り返して,些末なところばかりなおすようになってきたら,共著者に見せたり,英語校閲業者にまわします.

とまあこんな感じで書いてます.で,書き上がったらカバーレターやらをつけて,いざ投稿!となります.わたしは論文を書き上げて,submitする瞬間がいちばん好きです.いやー終わったーって感じでとてもいい.採択よりいつもずっとうれしいですね.採択のときってその論文に対する情熱ってけっこうさめてますから.

今日のお仕事

  • 飛行機関連(終了)
  • PSE論文執筆.序論,定義とレビュー終了.
  • 注意のレビューをさがす,3つ見つけてざっと読む.