Hard rain

Hard Rain (John Rain Thrillers)

Hard Rain (John Rain Thrillers)

日本が舞台の冒険小説,あるいは犯罪小説.主人公はCIAにも関わりがある暗殺者なのでスパイ小説といえるかもしれない.この主人公のJohn Rain は日本とアメリカ人のハーフで東京を拠点とする暗殺者.元アメリカ特殊部隊でベトナム戦争上がり,しかも柔道の達人,日常生活はかなりスノッブシングルモルトやジャズを愛する...

とまあこんだけ書いてくると朝日ソノラマ文庫にでもあるジュニア小説的で少し恥ずかしくなってきました.設定にしろ内容にしろまあそんなものかもしれません.中二的といえば中二的.

しかし,非常に丁寧な描写とリアリティーのおかげ読んでいて楽しめるものになっていました.それがないとこういう小説はやはりしらけてしまいます.007シリーズとおなじですね.主題自体は単純で中二的あっても,舞台装置次第で十二分に楽しめるものになるのです.

著者自身,日本に長い滞在経験もあるようで,地理事情にしろ,流行事情にしろよく調べてあります.犯罪組織やその背後にある政治組織の設定なんかも,まるで日本人が書いているように違和感がない.こういう綿密な舞台設定づくりがやはりエンターテイメントを支える基本なんだと思いました.

舞台設定や背景がとても丁寧なせいか,変なところに違和感を感じました.それは登場人物の会話です.主人公がヤクザの若頭的な人物と会話をするシーンなどがあるんですが,タメ口なんですよね.言葉遣いにしろ,話す内容にしろ完全に対等な目線で会話をするわけです.ここにはものすごく違和感を感じました.

著者の滞在歴を考えると,日本特有の上下関係や敬語の存在を理解していないとは考えにくい.英語圏の人に向けて書くと言うことで,文化的にわかりにくい要素は省いたのだと推測されます.英語だと敬語を使い状況って現代社会だとほとんどないですからね.軍隊くらいじゃないかな.例えば,アメリカやオーストラリアでは,子供も大人にタメ口をききますし,スポーツでも先輩,後輩だからって無条件に敬意を示すことはありません.

こういう細かい発見がおもしろかったです.