インテリジェンス 武器なき戦争
- 作者: 手嶋龍一,佐藤優
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 新書
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もともと社会情勢や政治に特別に興味があるわけでもないですし,種々の事情でその辺の事柄にここのところだいぶ疎くなっておりましたので,大変興味深く読みました.筆者たちの見ているものやものの見方が非常に物珍しく,新鮮にうつりました.収穫です.
素材は「外交」あるいは「国際情勢」というものを扱っています.そこを行きかう情報をいかに解釈し,自身の「インテリジェンス」として昇華するか,それが本書の題材です.ナマの情報はそのままでは役に立たない,それをあらゆる角度から分析し,適切な解釈を行ってはじめて意味を持つということが何度も何度も出てきました.また,情報の収集能力よりそれのらの分析評価能力が重要であることも繰り返し強調されていました.要するに目利きですよね.そこが重要で,しかも,日本が劣っているところなのだそうです.
さて,この目利きの話,科学的な研究ですと,事実と解釈をわけるという文脈で語られる話と近いのかと思いました.解釈に使うツールが必ずしも標準化されていないところが,科学的な研究とは違うところでしょうか.突き詰めると個人の知識とか,経験に依存した解釈しか,外交の土俵では行えないのかなと思いました.まあ,現実世界に再現性だの,事象の統計的分布だの,仮定の単純性だの,説明力だのはさほど役には立たないのでしょうが.
以下,印象に残ったところをメモ.
- 何か起こったあと「そんなことは知っていた」などというあと解釈は役立たない(心理学で言うところのあと知恵バイアスですね).田中角栄と立花隆の例.角栄があんなことをやっているのなんてみんな知っていたなどと言った記者は何となく知ることと裏を取って差を全く理解していない.ナマ情報とインテリジェンスの差がわかっていない.知らないことはきちんと「教えてください」というものである.
- 北朝鮮との交渉において拉致問題はすべてに優先する.国民への人権侵害と国家への国権侵害を回復できない国に国家としての存在意義はない.平壌宣言に出てくるような朝鮮半島へ平和をもたらすというような文句は全く必要ない.それは北朝鮮と韓国の問題である.拉致問題に全く触れていない宣言は非常に問題だ.手段と目的が逆転している.
- 外交には薄っぺらい論理が必要.歴史問題とかを絡めるからややこしくなる.表面的に法律や条約に違反しているからと言うことだけで事を構えるべきである.例えば,中国での大使館襲撃では,大使館を襲撃するのは国際法上悪いことだという一点に絞って中国とやり合うべきだ.
- イラクへの派兵はある程度宗教戦争の意味合いがある.イスラム教とはアメリカ軍の駐留をキリスト教徒からの侵略と見る.実際,湾岸戦争でのサウジへの侵略が9.11への遠因となっている.従って,非イスラム強国である日本の派兵も,宗教的な視点から検討する必要がある.国際協力のつもりが,先方からは異教徒の侵略と取られる可能性もある.
- 秘密情報の98%は公開情報から得られる.しかし,それらを見ても重要性がわからないのではしょうがない.その重要性を判断するには知識が必要である.しかし,知識を得る場がない.まともに本を読む奴らもいない.どの本を読んでいいかもわからない.だからインテリジェンスに対する知識が付かない.
- ロシアではちゃんと愛しているなら週16回は必要である.平日朝夕1回ずつ.土日は昼も入れて3回.タフだなー.
01/12/2007
- 講義の準備.これが今年度最後.ふー.
- 時間論文.レビューワーコメントをしっかり読んで対策をぼんやり考える.だいたいまとまりつつある.
- S誌の査読.もう一回しっかり読む.だいたいの方向性が決まる.来週,引用されている論文を図書館で読んでおこう.あー今混んでんだよなあ.