やっぱりラテンだぜ!(ラテンの秘伝書外伝)by 風樹茂

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  • 2017-12-09 手柄を横取りする悪い奴は今も昔もいるニャン

    []手柄を横取りする悪い奴は今も昔もいるニャン

    (--イラスト BY Sagar Jhiroh)
    f:id:latinos:20171209122516j:image:left

    「考(かん)げえるとつまらねえ。いくら稼いで鼠をとったってえ人間ほどふてえ奴は世の中にいねえぜ。
    人のとった鼠をみんな取り上げやがって交番へ持って行きゃあがる。交番じゃ誰が捕(と)ったか分らねえから
    そのたんびに五銭ずつくれるじゃねえか。うちの亭主なんか己(おれ)の御蔭でもう壱円五十銭くらい儲(もう)けていやがる癖に、
    碌(ろく)なものを食わせた事もありゃしねえ。おい人間てものあ体(てい)の善(い)い泥棒だぜ」
    さすが無学の黒もこのくらいの理窟(りくつ)はわかると見えてすこぶる怒(おこ)った容子(ようす)で背中の毛を逆立(さかだ)てている。
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    先日の夜、酒屋から出てきた若いサラリーマンがぶつぶついいながら、ベンチに座ったニャン。
    「ちぇ、せいせいするぜ」ってネクタイを振りほどいてぶつぶつぶつぶつ。
    「課長のやろう、あれはおれの企画だろう!」
    「ちきしゅう、横取りしやがって!」
    「いつもそうだ、部長の前で、『わたしは便所でいきむときも、風呂で鼻歌うたうときも、立ち食いそばをかけこむ時も、
    ラッシュアワーの電車で痴漢に間違われないように両手を上げている時も、いつだって最高の企画を練ってますから、
    これでライバル社を出しぬけますね』だと、あれはおれのセリフだ! もう、やってられない! 転職サイトに登録してやるぞ、ちきしょう!」


    吾輩は思ったニャン。

    ―まだ若い、他の会社に行っても同じニャン。平社員は係長に、係長は課長に、課長は部長に、部長は本部長に、本部長は専務に、専務は社長に、
    手柄は横取りされるのがサラリーマンの宿命。気を静めたほうがいいニャン

    テレパシーを送ってみたけど、逆上した若者にはまったく通じない。ベンチの下の土を蹴って、いててぇ、って足先を押さえてその剣幕といったら。
    悪いことに、ベンチの下に潜んでいた吾輩を見つけた。
    機嫌の悪い人間ほど怖いものはない。

    そっと逃げようとすると、さっと両手に抱えられて、膝に乗せられた。あー、その顔はバーナー焼き猫の愛好家にそっくり。黒の言葉を思い出した。

    「若いやつで、スーツを着てネクタイを締めてたな、顔はほっぺが膨らんだふうで」

    万事休す! 南無阿弥陀仏

    そう観念したら、思いがけなくも優しく頭を撫でられた。吾輩もほっとしてゴロゴロニャンと喉を鳴らした。

    「おまえだけは信じてくれるよな」って呟く。
    淋しい人間は、いい友達ニャン。

    2017-12-01 俗物根性は度し難いニャン

    []俗物根性は度し難いニャン 

    f:id:latinos:20171116170353j:image

     吾輩はおとなしく三人の話しを順番に聞いていたがおかしくも悲しくもなかった。
    人間というものは時間を潰(つぶ)すために強いて口を運動させて、おかしくもない事を笑ったり、
    面白くもない事を嬉しがったりするほかに能もない者だと思った。吾輩の主人の我儘(わがまま)で
    偏狭(へんきょう)な事は前から承知していたが、平常(ふだん)は言葉数を使わないので何だか
    了解しかねる点があるように思われていた。その了解しかねる点に少しは恐しいと云う感じもあったが、
    今の話を聞いてから急に軽蔑したくなった。
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     飼い猫だったころのことニャン。
     我主人スーツ姿でテレビとかいうものに出ていた。驚いたのはテレビに出たからじゃない。不思議なのは、
    吾輩の隣で風呂から出て赤いガウンを着た主人が自分の姿を見ながらソファにふん反り返って満足気にウィスキー
    を手にしていることニャン。わが主人は二人もいたのか。猫と同様に双子なのだろうか。

    テレビの中では―
    「そうはおっしゃいますが、マクロ経済的には大成功ですよ。株価はあがる、求人倍率も増加、若者も仕事は
    自由に選べるし、派遣万歳、残業代ゼロ万歳。それでこそ人はプロの働き手になれるんです。たとえば私には
    残業代はありませんよ。どうです。あなたは、あなたはもらえますか」
     とかなんとかいって、中年のおばさんやおじさんを制してしゃべりまくり、司会者はうんうん頷いている。

    「ふふふ、へへへ、バカ者どもが、ひひひひ。ほら、漱石ならバカと利口の区別ぐらいつくだろう、ひひひ」
     実に下品に笑って、ウィスキーを飲んでから、何か思いついたように携帯電話をかける。 

    「おい、やあ、やあ君か。あのデブ女が自分の本でおれの政策の悪口を書いているじゃないか。いつものように、
    アマゾンにすぐいって、★ひとつつけて、まったく素人はマクロ経済が分からないとか、素人はだからこまるとか、
    マクロとミクロの違いもわかっていないとか、いつものように書いておけ。うん、そうだ、君にはいい点をつけてやるよ。
    就職先も大丈夫、もちろん、他言は無用だ。ひひひひ」
     吾輩はこの品のない笑いは耐えられないぐらい嫌いで、尻尾が自然と左右に振れちゃう。それを主人は犬と同じく嬉しがっていると勘違いするニャン。バカ!

    「ほら、漱石、さすがに利口だなあ。お主人さまの言うとおりだろう。おまえの大好きな 大福だ、食え、わざわざ谷中までいって買ってきてやった。
    まったく甘いもの好きとは珍しい猫だ。おれはイカの塩辛だが」
     吾輩は漱石DNAのせいか猫のくせに甘いものに目がない。とたんにごろにゃんという声をあげてしまう。それでぴょんと主人の膝にのって、
    掌の上にある大福を半分口に入れた。

     あれ、なんだかもうひとつおいしくない。心が受け付けないみたい。偽善猫になったからニャン。
     
     猫愛好家は見てみてね↓
     PECO
     ペトこと
     ねこちゃんホンポ
     
     

    2017-11-21 アメリカ人の虎のを借りる日本人をえらいと思うのはバカにゃん

    []アメリカ人の虎のを借りる日本人をえらいと思うのはバカにゃん

    f:id:latinos:20171116170123j:image

     それほど裸体がいいものなら娘を裸体にして、ついでに自分も裸になって上野公園を散歩でもするがいい、できない?
    出来ないのではない、西洋人がやらないから、自分もやらないのだろう。現にこの不合理極まる礼服を着て威張って
    帝国ホテルなどへ出懸(でか)けるではないか。その因縁(いんねん)を尋ねると何にもない。ただ西洋人がきるから、
    着ると云うまでの事だろう。西洋人は強いから無理でも馬鹿気ていても真似なければやり切れないのだろう。

     長いものには捲(ま)かれろ、強いものには折れろ、重いものには圧されろと、そうれろ尽しでは気が利(き)
    かんではないか。気が利かんでも仕方がないと云うなら勘弁するから、あまり日本人をえらい者と思ってはいけない。
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     吾輩を拾ってくれた美禰子の兄貴の翔太は金髪だった。混血かと思ったけど、母親の富子は背が低いし、鼻も低い、見るからに日本人。
    翔太も背は高いけど、鼻は低いし、話すのは日本語だし、その身のこなしも、決して外国産ではない。でも街に出てみると驚いたニャン。 
     金髪日本人がたくさんいる。不思議だ?!

     そこで或る夜、吾輩は探偵のように抜き足差し足で、家の中で翔太のあとをひっそりとつけてみた。すると、キッチンの横を通って、
    洗面所へ行った翔太が、鏡を見てにやにや笑い、上着を脱ぐと、頭髪に金色の液体をかけていた。染めているニャン。
     歌舞伎役者なら化けるのも分かる。我が同族にも化け猫属がいる。でも、黒が白に、キジがミケになったとは、聞いたことがない。

     イケメンになりたいと思っても整形したり、自分の毛の色を変えるネコはいない。我が猫属は諦めているニャン、いや、いや自分の
    姿に誇りを持っているニャン。明治時代はさすがに恥の感覚がまだ残っていたから、金髪に染める日本人はいなかった。
    でも、今は違う。それというのもやっぱりアメリカの影響ニャン。

     ほら、今も公園で、小学生どもが、「ハロー」といって金髪の外人カップルに手を振っている。振られたほうは、手を振り返したが苦笑いだ。
    吾輩はイギリスにいたので英語ぐらいはわかる。そのカップルが話していたのは断じて英語じゃない。フランス語ロシア語ルーマニア語か、なにかだ。
    アジア人以外の外人はみんなアメリカ人と思うのが、日本人だ。

     それもしかたないと思う。上からしてそうなのだから、若者は影響される。先日も例のベンチで学生らしき二人がこんな話をしていた。 

    「あのごてごての金髪かっこういいな」
    「ゴルフもうまいし」
    「うちのおえらいさんはいっしょにゴルフやってバンカーでころんじゃった」
    「構わずにニヒルに打ち捨てて次のホールに歩いて行くのがかっこういい」
    「待ってくだんせい、親分、ごてごての金髪が風に揺らいでますぜ!」
    「そういったのに知らんぷり」
    「でも、転んでも起き上がって、すがりついていくのだから、そのほうが偉い。恥も外聞も捨てて生きる! 選挙には勝つ! 3浪のおれも見習わなきゃな
     Never give up!」
    「おつ、かっこいい、どうせなら、おれもあの国で生まれたかった」 
     
     中身があろうがなかろうが、アメリカ万歳! 

      吾輩は新潮45「いつまで続く猫ブーム」12月号でデビューしたニャン。読んでみて。
      WEDGEInfinityカタールに出稼ぎに行ってみたが、まさかの派遣切りに もよろしく。

    2017-11-16 西洋人より昔の日本人のほうがよほどえらいニャン

    []西洋人より昔の日本人のほうがよほどえらいニャン

    f:id:latinos:20171116170331j:image

     西洋人より昔(むか)しの日本人の方がよほどえらいと思う。西洋人のやり方は積極的積極的と云って近頃大分(だいぶ)流行(はや)るが、
    あれは大(だい)なる欠点を持っているよ。第一積極的と云ったって際限がない話しだ(中略)。
     ナポレオンでも、アレキサンダーでも勝って満足したものは一人もないんだよ。人が気に喰わん、喧嘩をする、先方が閉口しない、
    法庭(ほうてい)へ訴える、法庭で勝つ、それで落着と思うのは間違さ。
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     100年振りに蘇ってみれば、明治時代の日本人のほうがまだましだったかもしれないと思う常日頃だ。
    現代の日本はヨーロッパではなく、なにがなんでもアメリカの真似だ。アメリカの言うとおりだ。
    吾輩がいないうちにアメリカと戦争までして負けた影響か。もともと「長いものには巻かれろ」、
    「寄らば大樹の陰」という諺がある弱小の島国だからか。

     吾輩は生きていたころの強国はイギリスだった。だから吾輩もイギリスに留学した。けれども、吾輩はイギリスかぶれになら
    なかった。吾輩は留学中にイギリスの失敗を見て日本の将来を危惧して手紙を書いた。

    欧州今日文明の失敗は、明らかに貧富の懸隔甚だしきに基因致候、この不平均は幾多有為の人材を年々餓死せしめ、
    凍死せしめ、若しくは無教育に終らしめ、却って平凡なる金持ちをして愚なる主張を実行せしめる傾なくやと存候。
    日本にて之と同様の境遇に向かい候は(現に向いつつあると存候)、かの土方人足の智識文字の発達する未来に於いて
    は由々しき大事と存候(1902年3月15日付中根重一宛)

    f:id:latinos:20171116171416j:image:left
     それが今は学者も政治家アメリカに留学してアメリカかぶれ。吾輩の主人もその最たるものだったニャン。
    「おれはハーバード大を出て、ウォール街はみんな知り合いだ」といって威張っていた。
     テレビでも「痛みに耐えて構造改革!」「聖域なき構造改革!」「痛みのあとは楽しい極楽」とかいって宣伝した。

     なんのことはない。吾輩は冥土から見下ろしていたけど、あの時代の日本は、みんな痛いだけで、毎年3万人も自殺して、
    1998年〜2011年まで14年間で40万人以上の人が自ら極楽に行ってしまったニャン。

     それもこれも財界も新聞社もアメリカかぶれで、ミルトンなんとやらの理論が素晴らしいと喧伝して、みんな騙された。
    痛いだけだったニャン。この世で極楽に行けたのは一部のお金持ちニャン。

     その証拠がこの公園。
     最近、捨猫ならぬ、若い世捨てられ人が新たに公園に住みはじめたニャン。

     アメリカはあのとき、キューバに侵攻していたら、全軍全滅したニャン。ちょっと固いお話だけど、歴史の智識は大切なので
    読んでみて。

    2017-11-12 もてる男は天性のもん、背伸びしてもだめニャン

    []もてる男は天性のもん、背伸びしてもだめニャン

    f:id:latinos:20171103103046j:imageイラスト BY Sagar Jhiroh

     元来放蕩家を悪くいう人の大部分は放蕩をする資格のないものが多い。また放蕩家をもって自任する連中のうちにも、放蕩する資格のないものが多い。
     これらは余儀なくされないのに無理に進んでやるのである。あたかも吾輩の水彩画に於けるがごときもので到底卒業する気づかいはない。
     しかるにも関せず、自分だけは通人だと思って済(すま)している。料理屋の酒を飲んだり待合へ這入(はい)るから通人となり得るという論が立つなら、吾輩も一廉(ひとかど)の水彩画家になり得る理窟(りくつ)だ。
     吾輩の水彩画のごときはかかない方がましであると同じように、愚昧(ぐまい)なる通人よりも山出しの大野暮(おおやぼ)の方が遥(はる)かに上等だ。
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     吾輩が書いた「坊ちゃん」は江戸子だ。でも、吾輩は新宿牛込の生まれ。厳密には江戸っ子じゃない。3代続いて神田浅草下谷深川で生まれで、人気の待合などの粋を知った放蕩者。
     それが江戸子の条件。今でいえば、流行りのレストラン、料亭、スナック、メイドカフェを知らなきゃ江戸子じゃない。女にもてなきゃ江戸子じゃない。てやんでぃ。バカ者の言い草ニャン。

     吾輩漱石明治時代あれこれ人気の待合やリストランを苦労して調べて、その知識を三毛子や美穪子にひけらかしてみたてけど、まったくもてなかった。
     だから、吾輩の書くのは悲恋ばかし。女との間合い、肌の触れかた、しゃべり方もついにはわからなかった。一人の女がすく男は、多くの女がすく。それを羨んでもしようもない。天性のものだ。天性の歌手や絵描きと同じだ。

     この公園にだって、もてもての猫はいる。玉三郎だ。丸顔で、目がくりっとして高貴な血が流れている雰囲気がある。三毛子や他の雌猫の白も時々ぼうっと見つめている。黒が無理にちょっかいだしても、さっさと逃げて玉三郎の元へ走っていく。ボッチなど嫉妬から玉三郎にからんでいたところ、白に猫パンチを食らわせられていた。

     猫も人も同じニャン。
     先日公園でOLが話しているのを耳にした。
    「街こん最悪。話しかけてきた男がさ、背伸びしちゃって。フランス料理六本木のどことか、イタリア料理麻生のどことか、赤ワインメルローじゃなきゃとか、そんな講釈ばかりいって、そのくせ着ているものったらすごいダサいの。それに忖度って言葉の意味さえ知らないのよ」
    「気軽に谷中おでんでも食べるほうがましね」
     お里は自然と知れちゃうニャン。

     吾輩も地球の裏側のアマゾンに行けば、もてるかもしれないニャン 読んでね。