北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

時事ネタがらみ その2

次は、高倉健の逝去について。
高倉健は80年代に大陸で一世を風靡した俳優だから、
これは中国ではかなり大きなニュースだ。

だから、異例にも外交部の人が哀悼の辞を述べたり、
写真が週刊新聞『南方週末』の一面をデカデカと飾ったりした。

CCTVのニュースチャンネルでも延々と紹介され、
日本通のキャスター、白岩松さんや、勇気ある若い女性キャスターが、彼らの立場でできる、ぎりぎりの範囲内で、上手に高倉健が人気を呼んだ時代背景を紹介していた。

「あの頃は、文化を通じてあんなに友好関係ができていたのに、今はなぜこんな風になってしまっているのか。これは誰のせいか?」と。

日本の芸能人がいかに高倉健氏を高く評価しているか、なども加藤登紀子さんなどのインタビュー入りで紹介していた。

一方、ラジオでも、『単騎、千里を走る』のロケの際、出番が終わったあともずっと帰らず、立ったままロケ終了まで撮影をそっと見守っていたという、高倉氏をめぐる「美談」が語られていた。

まあ、ラジオはもともとちょっとマイペースでいられるところがあって、このご時世でも日本旅行をどう楽しむかっていうような特集を組んでいたりするけれど、そこで日本人をめぐる「美談」が語られることは、さすがにほとんどないから、これは貴重だ。

あとは、追悼特集とでも銘打って、映画チャンネルで高倉健主演映画が何本か流れるといいんだけど。
『君よ憤怒の河を渉れ』、『幸福の黄色いハンカチ』、『遙かなる山の呼び声』
の三本だけでもいいから。
きっと視聴率奪還のためには、テレビ局側もそうしたいだろう。
CCTVの外国映画枠で、久しく日本映画を目にしていないし。

でもまあ、そこまではまだ無理なのかな。
とりあえずは、昨晩『インセプション』が流れ、
大企業のダーティな黒幕、「サイトー」こと渡辺謙さんが拝めたことで、
我慢するとします。

追記:その後、『君よ憤怒の河を渉れ』と『遙かなる山の呼び声』は、本当にCCTVの映画チャンネルで放映された。しかも前者は日曜の晩だ。さすが高倉健!