北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

ラジオ中国語テキストで古鎮シリーズがスタート

昨晩、ひょんなご縁から、
普段はめったに接することのない、日本の大学2年生の方たちと
食事の席を共にする機会に恵まれ、
感慨深いものがあった。

なぜなら、私が最初に北京に来たのも大学2年生の夏、
気ままなバックパッカーとしてだったからだ。

あの頃は身の程を知らぬ野心家だった。
その最大の証しが、無謀としか言いようのない外国語熱。
新しい授業が始まる4月や9月になると、いろんな語学に手を出し、連戦連敗していた。
3日坊主、またはそれに限りなく近い形で終わったのは、トルコ語、ペルシア語、ヒンドゥー語、チベット語、フランス語、ドイツ語。
韓国語やモンゴル語は文字をちゃんと覚える前に、アラビア語は一度か二度授業に出ただけで諦めたので、3日坊主ですらない。

「数打ちゃ当たる」で、中国語とロシア語だけは「執念」で続けたけれど、
その他は結局「あれは何だったんだ?」という結末。
今になって思えば、世界征服を夢見たわけでもなし、何をとち狂ったのだろうか。
高校時代は、外国語を学ぶのが苦手だからと、外大の志願を避けたくらいなのに。

時間の無駄だったと言ってしまえば元も子もないけれど、
でも、新しい語学を始める時のウキウキ感は、今でもよく覚えている。
何だか世界がふわっと広がり、自分が生まれ変わるような気がしたもの。

これは私が前世で話していた言葉じゃないか、
と思うくらいデジャブ感を覚える言語もあったりして。
(いや、それはただの錯覚!)

当時、そんな無謀なチャレンジのいくつかをペースメーカーとして応援してくれたのが、NHKラジオの語学テキスト。
だから、今年もその一つ「まいにち中国語」の口絵と巻末エッセイを相棒とともに担当させていただけることになったのは、とても嬉しい。
私自身は「まいにち」語学を勉強するほどまめな人間ではなかったので、汗顔しきりだけれど、
「まいにち」やろうという野望は一応(?)あったので許してください。

本年度は古鎮特集。中国国内の、漢語が主に話されている地域の古鎮をめぐります。
初回の4月は「紹興」です。
https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=09101042015
冒頭の口絵の部分は試し読みができます。