『トウガラシの文化誌』

アマール・ナージ[林真理・奥田祐子・山本紀夫訳]

(1997年12月30日刊行,晶文社, 東京, 311+ x pp., 本体価格2,800円, ISBN:4794963319

【書評】
※Copyright 2005 by MINAKA Nobuhiro. All rights reserved

寒中にとてもホットなペパー本を読む.南米原産のトウガラシがどのようにして世界中に伝搬していったか.第4章「起源と祖先」では,トウガラシ類の系統推定と祖先探索(プラント・ハンティング)の話題が述べられている.ジャガイモの祖先と同一の地域が center of origin だそうな.著者は植物学者に同行して南米アンデスを駆け回る.中ほどの章では,北米ルイジアナ発祥のタバスコ・ソースをめぐる熾烈な争いに著者は注目する.とりわけ“タバスコ”という商標をめぐる「マキルヘニー」社の商売敵に対する半世紀にわたる法廷闘争がすさまじい.商業作物としてのトウガラシは,その一方で,熱狂的トウガラシ・マニアを数多く生み出した.指揮者ズビン・メータはとんでもないトウガラシ狂いで,どんな高級レストランに行くときも自前のトウガラシを持参するのだそうな.そういえば,麺類と言えば液面が真っ赤になるほど七味をかけてしまう御方がわが業界にもどこぞにいらっしゃったよーな…….本書全体を通して,よく調べあげ,よくまとめられたトウガラシ通史だと感じた.ああ,タバスコ辛い辛い.ハバネーロおそろし(一時的難聴になるそうだ).芥子色のダストジャケットが心憎い.

三中信宏(14/February/2005)

【目次】
はじめに トウガラシに魅せられて 9
1 トウガラシとは? 20
2 辛さの測定 46
3 完璧な品種 72
4 起源と祖先 104
5 薬としての利用法 149
6 タバスコ誕生物語 178
7 タバスコ戦争 212
8 世界一の辛さ:マヤ人のハバネーロ 244
9 快楽の逆転 277
訳者あとがき 307
索引 [i-x]

『Genes, Development, and Cancer: The Life and Work of Edward B. Lewis』H.D. Lipshitz

(2004年1月31日刊行,Kluwer Academic,ISBN:140207591X



ショウジョウバエの〈bithorax〉変異体の発見者 Edward B. Lewis の伝記.雑誌掲載の伝記記事としては下記のものあり:J.F. Crow & W. Bender「Edward B. Lewis, 1918-2004」Genetics, 168(4): 1773-1783, December 2004;H.D. Lipshitz「From fruit flies to fallout: Ed Lewis and his science」Journal of Genetics, 83: 199-216, 2004.