『日本の食と酒』

吉田元

(2014年1月10日刊行,講談社講談社学術文庫・2216],東京,282 pp., 本体価格960円, ISBN:978-4-06-292216-6版元ページ

読了.前半3章は15〜17世紀の京都山科が舞台だったが,続く第4章は同時代の奈良興福寺での食生活を論じる.さらに第5〜6章は江戸時代初期の日本酒づくりを取り上げ,とくに「火入れ」技術の進展を詳しく論じている.河内長野の〈天野酒〉とか奈良の〈菩提酛〉という名前が登場する.最後の第7章「大豆発酵食品」は,味噌・醤油・納豆・酢などの伝統的製法を取り上げている.



著者・吉田元氏は京大農学部水産学科の出身.学部時代は舞鶴で過ごしたとあとがきに書いている.「大学院を出てからも長い間就職口はなく,私は疲れ切っていた.教授の喜源の良し悪しに毎日一喜一憂するような無給研究員の境遇はみじめなものだ」(p. 259).さらに続く回顧話:「私がいた実験化学者の世界では,四〇歳までに自分の研究チームを持てないようでは,将来の見込みはまずない.周囲の人は「あいつの研究者人生は終わったね」と思っていたことだろう」(pp. 259-260).



さて,次は同じ著者の日本酒本:吉田元『近代日本の酒づくり:美酒探求の技術史』(2013年12月13日刊行,岩波書店,東京,xii+261+5 pp., 本体価格2,800円, ISBN:978-4-00-025934-7版元ページ)に移ろう.