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2007-10-12

[]池上高志「動きが生命をつくる」

池上高志を知ったのは茂木健一郎による芸大授業のmp3だった。複雑系の専門家でありながらアートにも造形が深くて、ただの学者ではない、一筋縄ではいかない印象を持っていた。

主著があったら読みたいなと思っていたんだけれども、ついに単著が出たということで手に取った次第。

自律したシステムをいかにして構成してゆくかをテーマにしていて、その手探りをしている感じが、非常によく現れている。

計算能力の向上によりコンピュータシミュレーションの精度は飛躍的に向上した。そのなかでカオスや複雑系のシミュレートが盛んに研究されている。そんな背景を確認しながら、人工生命の基礎とも言えるライフゲームについて語っている。また機械的なミニマムモデルを発展させていって生命へと近づけようとするブライデンベルグの研究を紹介し、そこから生命とは何かを探ってゆく。

このあたりは、さながらマーヴィン・ミンスキーの「心の社会」を思わせる。

また脳科学の問題領域や、心の理論などをとりあげて、人工知能との共通点や可能性を探ってみたりもする。

色々な概念や成果を整理して、なんとか先へ進もうという著者の意志を感じるし、これらの問題が互いに濃密な関係を持っていて同時に解かれなければならないというメッセージにもなっている。

極めて学術的なスタイルをとりながらも、イーガンやマトリックスに真剣に言及したりする身軽さも新鮮だ。

それでも7章までははいわゆる科学書という感じの構成なのだが、最後の章はなんとアートについて書かれている。

池上高志が渋谷慶一郎と共同で第三項音楽という実験的アートをやっているのは知っていたし、本書の中で登場するテイラークェット装置の音楽も聴いたことはあるんだけど、まさか本当に科学と地続きの文脈で語られるとは思わなかった。

この章では科学的な理論を応用したアート作品が紹介されている。クセナキスも似たようなことをやっているけれども、本業の二人が組んでいるのだからその精密さは上なのかも知れない。ただし、実際に聞いた感想を素直に述べるなら、こういった実験音楽は単純に聞いてしまうと、いわゆるノイズ的なものとほとんど区別がつかないと言わざるをえない。丁度、実験文学が分裂病的な文章と区別が付かなくなってしまったり、意味を込めすぎた文章が逆に無意味に見える(フィネガンズ・ウェイクのように)現象と同じようにだ。

確かに説明されてみれば、なるほどと思うところはある。だが、まったくコンテクストがない状況で、この音楽が成立するのかというと微妙なところだろう。というよりはその微妙さ、淵にいる感じが重要なんだろうけれども。

この章で面白かった指摘が、いわゆるピタゴラスイッチ的な装置の意味だ。そのような装置は一見AならばBという動作を繰り返しているだけのように思えるが、現実にはそうではない。実際にはまずもって成功しないからだ。我々がフィルムとして眼にするものは、何度も失敗を繰り返して、たまたま上手くいった一回にすぎない。この現象をどう考えればよいのか?

それを確率論で片付けるのはたやすい。しかし、そこにある伝達させるという意思、そのアフォーダンスが知覚の本質ではないか? という問いかけにはハッとさせられた。

さて本書で語られているように、現代アートにおいてとりあげられてきたテーマを使ったアナロジーが、これからの科学の発展にとって有効なのかどうかは、ちょっとわからない。そう言う意味で、非常にあやうい所を漂っているなあというのが正直な感想だ。それは著者自身が一番わかっていることだろう。

それだけに著者の真剣さがうかがえるというもの。さらなる真剣勝負の成果が、良い方向にでてくることを期待したい。

余談

装幀も著者自身という力の入れよう。

この紋様がなんなのかは、読めば分かります。

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