これまで読んだのをまとめだし part3

ティエリ・グルンステン「線が顔になるとき」

西洋圏の人文科学を使ったマンガ研究。顔が主なテーマになっているのだが、マンガにおいては顔を描き込むほど生の表現から遠ざかるというパラドックスの指摘が興味深い。このあたりは顔の認識とも関わっていそうだ。
またグルンステンが来日した明治大学のシンポジウムを見て再確認したことだが、日本のマンガ、バンドデシネグラフィックノベルの隔たりはまだまだありそうだ。

アラン・ムーアフロム・ヘル

現存する切り裂きジャックの資料に矛盾しないかたちで描かれた超絶技巧のストーリー。びっしりと描き込まれた台詞と、注釈は、コミックというより文学的快楽をもたらしてくれる。
エレファント・マンアレイスター・クロウリーオスカー・ワイルド等々のカメオ出演にも思わずニヤリ。

円城塔烏有此譚

烏有=不在=穴をテーマにした不思議な味わいの小説。本文以上に論理哲学論考方式の注釈が面白すぎるのがズルイ!
読み終わり、本をケースに戻した瞬間、またひとつの穴が消滅する。

円城塔「後藤さんのこと」

色によって同名の登場人物をかきわけたり、抽象構造を小説のかたちに変換したような極めて実験的な作品ばかりの短編集。なんと帯にまで小説が書かれている!
しかし、このクオリティのものを次々と書いているのは凄い。