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双風亭日乗はてな出張所 このページをアンテナに追加 RSSフィード

     編集屋の戯れ言

2007-04-12

lelele2007-04-12

「生きさせろ」という声を、誰に届けるか 01:58


雨宮処凛著『生きさせろ!』(太田出版)を読みました。

私たちは、暴走する資本主義に対し、もはや黙って追従することはできないという雨宮さんの気持ちが、ずっしりと伝わってきました。


構成は、シンプルです。雨宮さん自身がプレカリアート(「不安定さを強いられた人々」)という言葉と出会ったエピソードからはじまり、それが契機となって理不尽な労働環境で働く当事者の話を聞いてまわり、最後に専門家や運動の最前線にいる人から話を聞く、というものです。

花沢健吾さんのイラスト、いいっすね〜。本田透著『電波男』(三才ブックス)のイラストもよかったけど、同書のも最高です!


当事者の話とそれに対する雨宮さんの感想を記したルポルタージュの部分までは、一気に読めました。専門家らの話に入ると、ちょっと読むスピードがダウンしてしまいました。まあ、すでに得ている情報が多かったのが理由かもしれませんが。

ワーキングプアや生存権の問題にはじめて触れる人には、専門家らの話があったほうがいいのかもしれません。私としては、力強いルポルタージュの部分だけでも十分に読みごたえがあったし、もうすこしルポが多くてもよいかと思ったりしました。


さて、同書で雨宮さんがあげた「生きさせろ!」という声。同書を読了して、私はまっさきに、「この声は、どこに届けばいいんだろう」と思いました。

当事者なのか。資本家なのか。為政者なのか。傍観者なのか。


とにかく、当事者には届いてほしいですね。

生存権があったり、労働基準法があったりして、自分らはある程度、法によって守られている存在なんだということに気づかず、みずからがおかれたワーキングプア的な状況をあきらめて受け入れてしまっている人が、おそらくたくさんいるんでしょう。

同書が、そういう人たちに気づいてもらうための契機となり、声をあげてもらうための契機となってほしい。飯場に集まる日雇い労働者やホームレスの人たち、そしてマンガ喫茶で暮らす人たちのなかで、みずからがおかれた環境に理不尽さを感じていたり、きっかけがあれば生活を変えたいと思っている人に、雨宮さんの声が届いたらいいですね。


でも、そういう人たちの手に、本というモノ自体が届きにくいという問題があります。本の存在を知らなかったり、知っていても買うお金がなかったり。大金持ちでこの問題に関心のある人が、大量にこの本を買って、飯場やマンガ喫茶でばらまいたりしたらいいのかもしれませんが(これが本来の意味でのボランティアだと私は思います)、そんな可能性は低いですよね。

そうなると、そこまでは生存がおびやかされていないが、その予備軍となりそうな不安を抱える人で、本を買えるような層の人たちが同書を買い、読み、声をあげる。そして、すでに生存をおびやかされている人たちの声をすくいあげたり、仲間として共闘したりするのが現実的なんでしょうか。


どうせ資本家や為政者は雨宮さんの声をスルーするでしょう。また、傍観者としての評論家や研究者、その他の一般読者だって、同書を読んで「重要な問題だ」とか「かわいそう」、「どうにかしなきゃ」と思ったり言ったりしながらも、具体的なアクションは起こさないんでしょう。これは悪気があって書いているのではありません。こういったらお終いかもしれませんが、生死に関わるような問題に直面する人たちのことを、安定した生活をしている人にわかれといってもわからないし、日々、いっぱいいっぱいで忙しく生活している人に反応を求めても、応答する余力が残っていないのではないでしょうか。


ならば、当事者が声をあげるしかないし、多くの当事者が大きな声をあげ、アクションを起こすしかないのではないか、と私は思っています。そして、生存権を脅かされる予備軍グループの一員として、私もできることはやろうと思っています。


雨宮さんの問題意識は、月刊誌『論座』(朝日新聞社)に「丸山眞男をひっぱたきたい」というエッセイを書いた赤木智弘さんのそれと相通じる部分があります。そして、そういう問題意識を、ある一定の年齢層(まだよくわかりませんが、ざっくりといえば20歳代から30歳代の「若者」)の多くが共有しているのは、おそらく確実なことだと思っています。

生存権をおびやかす状況を変えようというムーブメントの担い手は、まさにそのへんの年齢層の人たちになるでしょう。さらにいえば、そのムーブメントは、みずからがおかれた理不尽な状況を「あきらめなくっていいんだ!」と、当事者が気づくことからはじまるような気がするのです。本を読む、人から聞く、テレビを見る、新聞を読む……。気づきのきっかけは何でもいいんです。私はたまたま出版を生業にしています。だから、それを活かしたかたちで、気づきのきっかけとしての何か(やっぱ本なのかなぁ)をつくれればと思っています。


この手の問題を語ると、どうしてもイデオロギッシュになってしまいがちだし、啓蒙的になってしまいがちになります。しかし、もはやそんなことに四の五のいっている場合ではないんですね。そんな些末なことは気にせず、声をあげ、アクションを起こし、ムーブメントをつくることが重要なんだとつくづく思います。

生きさせろ! 難民化する若者たち

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