日本映画界の貧困


河瀬直美監督の「殯(もがり)の森」が、第60回カンヌ国際映画祭で審査員特別大賞「グランプリ」を受賞しました。最高賞「パルムドール」に次ぐ賞ですね。素直に、すごいと思います。
この映画、知人の師匠が撮影を担当していたので、奈良での制作の様子などがちょこちょこ耳に入っていました。


北野武監督やら松本人志「監督」の作品が、テレビを中心とするメディアで洪水のごとくパブリシティーを展開するなかで、試写をやったあとの河瀬作品の感想や評価は皆無に近かったことが、以下の松江哲明さんの日記に書かれています。

http://d.hatena.ne.jp/matsue/20070528


賞を受賞した「瞬間」から、手の平を返したようにニュースで取り上げるマスコミ。おそらく、今後は手の平を返したように河瀬作品を評価する映画評論家のみなさん。上映する気がなかったのに、手の平を返したように上映を決定する映画館……。


受賞前。「殯の森」は、6月23日から東京・渋谷シネマアンジェリカ、7月7日から大阪・九条シネヌーヴォで上映されることになっていました。つまり、単館上映なのです。では、受賞後にどれだけ多くの映画館で公開されるのか。映画館の豹変ぶりが、楽しみですね。


ほんものの作り手が集まり、ほんものの映画をつくると、ほんものの映画界はきちんと評価する。カンヌで河瀬作品が評価されたことの意味することは、ただシンプルに、そういうことなんだと思います。ということは、日本の映画界(とくに評論家)は、ほんものの作り手が集まって作られたほんものの映画を、事前にほんものだと評価できなかったんですね。ただただ有名人監督の映画のパブにいそしんでいたというその貧困さは、覚えておいてもよいかと思います。


じつはこの「殯の森」、本日、NHKのBSハイビジョンで放映されます。ハイビジョンを受信している(数少ない)方は、ぜひご覧になってください。受信していない方は、映画館に足を運んでみてください。


殯の森」公式HP→ http://www.mogarinomori.com/index.html