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2009-01-28

ホメオパシーは「効果が確かめられていない」方法ですらない

ホメオパシーの宣伝で典型的なものは「科学的根拠は不明だが、確かに効くのだ」といったような話です。それに対して「効果があることは確かめられていない」という批判がつくことも良くあります。もちろん、この批判は間違っていませんが、「効果がないことは確かめられている」という方がより適切ではないでしょうか。


確かめられているかいないか

よくあるニセ科学的健康法や代替医療では、効果がまともに調べられていないものや、怪しい体験談を根拠に「効くのだ」という主張が行われる場合が多いようです。この場合には、「効果があることは確かめられていない」というのは正確な表現です。まともに調べられていないのですから、効果があるかないかは不明ですよね*1

ホメオパシーの場合は、このような健康法や代替医療とは事情が違います。ホメオパシーについては何度も科学的な研究が行われており、その結果として「効果はみられなかった」という結論が得られた状況です。科学的な謙虚さで言えば「効果は確かめられていない」ですが、一般人の感覚で言えば「効果がないことは確かめられている」となります。


なぜ効果がないことは確かめられているといえるか

あなたが単純にある治療法に効果があるのかないのか、メカニズムなんてどうでもいいから確かめたいという欲求を持った場合、どうすればいいでしょうか*2

  • アイデア1:治療を行ってみて、治ったら効果があると判断する*3

→ 治療を行わなくても治ったかもしれませんよね。大抵の病気には自然治癒の可能性があるものです。

  • アイデア2:ふたりの人を用意して片方に治療を行う。治療した人が治って、治療しない人が治らなかったら効果があると判断する。

→ もしかしたら、治療した人が偶然自然治癒したのかもしれません。

  • アイデア3:多くの人を用意して二つのグループにわけ、片方のグループには治療を行い、片方には治療を行わない。治療を行ったグループの方が治った人が多ければ、効果があると判断する。

→ 入院とか、監視とか、治療を行うグループの環境が、治療を行わないグループの環境と違う場合、その環境の影響で治りやすかったのかもしれません。それから、「プラセボ効果プラシーボ効果)」なんかもあるらしいですよ。

  • アイデア4:多くの人を用意して二つのグループにわけ、片方のグループには治療を行い、片方には治療を行ったふりをする。その他の条件はふたつのグループ共に同じになるように注意する。治療を行ったグループの方が治った人が多ければ、効果があると判断する*4

→ 実は、「治った」と判定する人が、「この人は治療を受けた人」「この人は治療を受けたふりをされたひと」ということを知っていると、判定に影響が出る場合があることが知られています。

  • アイデア5:アイデア4に付け足して、判定する際は、どちらのグループの人かわからないように気をつける*5

→ ところで、もともとのグループ分けって本当に公平に行ったんですか?

  • アイデア6:アイデア5に付け足して、グループを決める際に主観的な要素が入らないように気をつける*6

これで無作為抽出二重盲検法無作為二重盲検(randomized double-blind)になりました。このレベルだと科学的な論文として認められます。通常、ここまでくると堂々と「エビデンス」と呼ぶことができます。よくみると気付くと思いますが、治療が効くメカニズムが分かっている必要はありません。「効くことさえわかればよい」レベルの実験になります。条件がどんどん追加されていったのは、間違って「効いた」と判定してしまうことを避けるためでした。効くか効かないかを突き詰めた実験方法ですね。

ホメオパシーはこのような手法で効果を調べた上で、効果は確認されていないわけですから、普通の意味では「効果がないことは確かめられている」と言えるわけです*7


たまたまその実験では検出できなかっただけじゃないの

確かにホメオパシー論文は多数出ており、一部では効果ありとする論文もあります。こういった場合の解決法としては、メタ分析という手法があります。論文の結果を集めて、それを細かく分析することによって、最終的な結論を導く方法です。

2005 年のLancetには110報のホメオパシーに関する論文(と110報の一般医療)をメタ分析した結果が報告されていますが、結論は「ホメオパシープラセボ効果であるという見解と矛盾しない」というものでした。科学論文らしいもってまわった言い方ですが、普通の人は「ホメオパシープラセボ効果だよ *8」と捉えて問題ありません。


提案

というわけで、ホメオパシーに効果がないという指摘を行う人は、「効果が確かめられていない」ではなく、「効果がないことは確かめられている」と指摘したほうが良いのではないか?と提案いたします。


参考


追記(2009-01-29)

プラセボ効果だとしても効果はあるんだろ」という意見と、「信じていないとプラセボ効果は起こらない」という意見が見られるようです。「なぜ効果がないことは確かめられているといえるか」をもう一度読み返して「プラセボ効果がある(治療を受けてないグループが治った)」ということの意味を考えてみて下さい。

それから、プラセボ効果については「誤用される「プラセボ効果」 - Skepticism is beautiful」も読んでいただければと思います。記事ではプラセボ効果メカニズム候補として、「条件付け」もあげています。もし、条件付けでプラセボ効果が起こっている場合、「効かない治療」によって条件付けが上書きされることによって、今まで働いていたプラセボ効果が消える可能性もあります。「プラセボ効果を発揮させるために、よく効く薬だと嘘をつくことが有効である」という意見は、まだ実証されているレベルではないと思われます。

*1:もちろん、そんな不明なものを効果があると思わせて商売にするなどというのは言語道断です。(法律的な意味ではなく)一般的な意味で詐欺です。通常、効果(作用)には副作用が伴うものですが、効果がまともに調査されていないのに、副作用がまともに調査されているわけはありません。効かないかもしれないというだけでなく、どんな害があるかも不明だということは重要です。

*2二重盲検法については、「ホメオパシーFAQ - Skepticism is beautiful」にも書きましたが、もう一度説明してみるのもいいかもしれません。

*3:典型的なので「3た論法」という名前がついています。「使った、治った、効いた」という論法です

*4:盲検法になりました

*5二重盲検法になりました

*6:無作為二重盲検法になりました

*7:科学では、どんなに厳密な実験を行ったとしても、その結果が絶対に正しいことを前提にしないため、回りくどい歯切れの悪い結論しか言いません。

*8プラセボ効果と見分けがつかない

TAKESANTAKESAN 2009/01/28 19:10 今晩は。

文脈を捉え損なっているかも知れませんが…。

グループ分けの所は、標本「抽出」(sampling)では無くて、割付(allocation)の話なのではないかな、と思いました。

ご存知かも知れませんけれど、こちら辺りは参考になるかも知れません⇒http://staff.miyakyo-u.ac.jp/~m-taira/Lecture/simple-but-important.html

後、「無作為抽出二重盲検法」という言い方は、一般的にはされない気も。

ここら辺は実験計画の文脈だと思いますが、詳しい人からすると、(私のコメントもそうでしょうけれど)用語の用い方等に修正の余地があるような気がしたので、書きました。

lets_skepticlets_skeptic 2009/01/28 23:10  抽出は不自然ですね。なぜこう書いたのか自分でも不明(random samplingとの混同かも)。ほとんど無意識でした。
 無作為二重盲検(randomized double-blind)の無作為については、グループ分けの無作為化という記述もあるようで、よく理解していないことに気づきました。ひとまず、更なる指摘を期待して待ちます。

匿名匿名 2009/01/29 07:58 薬の話をしていて効果があるといったら、当然、それは薬としての効果のことで、薬以外にも普遍的に認められるプラセボ効果より効果があることをもって、薬としての効果があるとする……というのは、当然の前提なのですが、たまに理解できないで「プラセボ効果があるじゃないか」とか、とんちんかんな話をする人がいるので、念のため書いておいたほうが良いかもしれません。

TAKESANTAKESAN 2009/01/29 11:00 今日は。

匿名さんの仰る事、ブクマコメントでも散見されますね。やはり補足として、前書かれた、プラセボに関するエントリーを紹介なさるのも良いのでしょうね(もちろん、続きとして、色々予定しておられるはずだろうと思いますが、敢えて)。

議論がこういう風に進むと、概念が専門的にどう考えられているか、というのを見るのが重要になってくるんですよね。プラセボ効果関連のエントリーも、実はそこら辺を狙って書かれた事と思います。

lets_skepticlets_skeptic 2009/01/29 11:12 どう書いたら伝わるのか悩みまくりです。ひとまず、簡単な誘導だけにします。

lets_skepticlets_skeptic 2009/01/29 13:03 素人には荷が重い気もしているので、そろそろ専門家がガッツリ正しい見解を出してくれる(又は、専門的に見た際の間違い・不正確な点を指摘してくれる)ことを期待しています。

att460att460 2009/01/29 20:32 横から、お邪魔します。

(少しでも正確かつ、わかりやすいように)「偽薬(プラシーボ)並みの有効性しか示すことができない治療法」という表現を考えましたが、素人に説明するには、やはり、はっきりと「効果がないことは確かめられている」と話したほうが、わかりやすいでしょう。

#科学的厳密性に拘ると、話がわかり難くなることは、
#よくある話ですね...

UPJOHNUPJOHN 2009/01/29 23:22 リーマン予想は反証されていないというのは、「反証が確かめられていない」ではなく、「反証がないことは確かめられている」と指摘した方がいいってことですよね。失礼ながら、これは単純に間違いのように思えます。

sunagimo2sunagimo2 2009/01/30 04:07 確かにそれは単純に間違いだと思います。

リーマン予想は反証されていません。
この予想の反例を一つでも見つけられれば反証されますが、今のところ見つかっていません。反例がないことが確かめられたと言うには、予想が正しいことを証明すればいいのですが、今のところ証明にも至っていません。
つまり、まだ証明も反証もされていないわけです。

これは、ある治療法の効果のあるなしで言えば、「効果が測定できていないので、効果があるかないかはまだわからない」という状態です。
一方このエントリにある「効果が確かめられていない」というのは効果を測定した結果として、「効果が確かめられなかった」ということなわけです。
どちらも「効果が確かめられていない」とは言えますが、「効果がないことが確かめられている」と言えるのは後者だけです。

lets_skepticlets_skeptic 2009/01/30 14:00 > att460さん
> #科学的厳密性に拘ると、話がわかり難くなることは、よくある話ですね...

 そうですよね。きっぱり言っていいかどうかはいつも悩むところです。最終的には状況次第なんでしょうけれど。

> UPJOHNさん
 演繹体系(数学)と帰納体系(科学)をごっちゃにするとわかりにくいと思いますが、ホメオパシーは反証されているということです。

> sunagimo2さん
 フォローありがとうございます。

通りすがり通りすがり 2009/01/30 20:11 通りすがりで申し上げるのも失礼なんですが、こんな表現はいかがでしょう。
「ある病気Xに罹った人を10人集めて、薬と偽った飴玉をなめさせたら3人調子が良くなりました。同じ病気Xの人を10人集めて、ホメオパシーのレメディを使わせたら、3人調子が良くなりました。これって、(薬としては)効いてないよね?(飴玉としては効いているけど)」

kokorohamoekokorohamoe 2009/02/03 01:33 というより、今、提示されている論文の最初の方の最初の例を見たのですが。不十分な衛生管理による害が出ているような気がしました。
であるならば、効かない・効果がないというより、マイナスになっている症例がある。という事かと思います。もちろん、これも特異例かもしれませんが。

全般的にホメオパシーがある・無い。という決着に時間がかかる方法よりも。とりあえず、危険性のあるホメオパシー『も』ある。効く効かないを判断するのは個人の自由としても、ホメオパシー自体はリスク薬物であるので(一部の通販薬物もそうですが!)、信じるにしても、十分な衛生管理をされた、リスクのない、せめて、あめ玉程度に効果がある。物を使うように並記する方が急がれるのかなぁと思いました。

lets_skepticlets_skeptic 2009/02/03 11:50 > kokorohamoeさん
 ホメオパシーで害が出ているというのは確かです。以前FAQに書いたので、今回は提案の件のみに絞ったという感じで。

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