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Skepticism is beautiful このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-07-20

医療ネグレクトの通報を行って考えたこと

反省会 - 地下生活者の手遊びid:tikani_nemuru_Mさんが反省会をしていた。私も通報者*1のひとりとして、似たような座りの悪さを感じていたので、遅くはなったけれど自分なりの反省会をしたいと思う。

私は、今回の行動を起こすこと(起こしたこと)については、行動以前も今も問題を感じていない。しかし、行動したと公表すること(公表したこと)については、座りの悪い思いをしている。


意外だったこと

公表すると決めたとき、まずはじめに手厳しい批判があるだろうことを覚悟した。「注目を集めて目立ちたいだけではないか」とか、「深刻な事態をニセ科学批判のネタにしている」とか、そういう類の批判があるのではないかと思ったのだった。それから、tikani_nemuru_Mさんの思いのように、チェーンメール化の問題もあるだろうと考えた。

ちょっと悩みはしたものの、もっと関係機関にパイプの太い人が動いて欲しいという気持ちもあり、公表することに決めた。投稿では通報や連絡を呼び掛けないよう意識して書いたが、チェーンメール化の意識をもっていたのは間違いない。そんなわけで、私のエントリに対して好意的な内容のコメント・ブックマークが殆どだったのは意外だった。


怖いと思ったこと

今回の件では、私が想像しなかったような量の通報が行われた。これは、ビタミンK問題*2の件の記憶も生々しい時期だったためだろう。自分も児童相談所に連絡しておいてなんなのだが、正直、多くの通報があったことは「怖い」と思った。

何が「怖い」のか、自分でも良く分からない。もしかしたら、2ちゃんねるで行われているような集団通報を伴う「祭り」と似たように感じたからかもしれない。もちろん、2ちゃんねるの方は私刑と呼んでいいものだし、今回の件がそれとは違うことは間違いない。それでも、多くの通報が行われるような状況は「怖い」し「望ましくない」と感じてしまう。できることなら「避けるべきこと」とも感じる。


やれることをやったが…

今回の件では警察の介入によって個人の特定ができ、一刻を争う事態ではないことが判明した。しかし、問題を解決の方向に向けることができたかといえば怪しいとも思う。子供の状況は投稿内容ほどひどいものではなかったということだが、根も葉もない作り話というわけでもないだろう。子供の健康は危険にさらされたままだ。母親がホメオパシーから離れたかといえば、それもまたなさそうだ。ホメオパシーを信じることで子供の健康を害するという構図は全く変わっていないように思える。

しかし、私たちがこれ以上介入する道はないだろうし、やるべきもないと思う*3


子供にとっての幸せってなんだろうということ

行政やらなにやらが、今回の家庭に介入して、子供がまともな医療を受けられるようにすることは可能だろう。しかし、そういった方法で母親が考えを改める可能性はそれほど高くないとも思う。

そして、外部からの介入によって母親を否定された子供は幸せだろうか。私にはそうは思えない。極端な話、母親の真摯な愛情を受けながら、ニセ医療で死んでいくことの方が幸せだということがありえるのではないかとも思う。しかし、そんな状況は想像もしたくないほど悲惨だ。母親が最初から騙されなければ…周りに説得できる人がいれば…なかなかそううまくはいかない。


やれることをやるだけ

目の前の問題を解決に導くことはできないかもしれない。でも、ニセ科学、ニセ医療を批判していくことは間接的にこのような不幸を減らす力になると信じている。


最後に

今回行動された方や、エントリ内容に賛同していただいた方に対して、ずいぶん失礼なことを書いたと思うので、以下のtikani_nemuru_Mさんの気持ちと同じものを持っていることを表明して言い訳の替わりとします。

昨日のエントリに賛同して行動していただいた方々は、これを読んで不快に感じているかもしれにゃー。みにゃさまには感謝しているし、その行動をおとしめるつもりは微塵もにゃーのです。

ただ、昨日のエントリを書いているその時からひっかかっているものがあり、それがイボジとなって刻々と大きくなっており、このままでは僕のケツが持たにゃーんです。とっちらかってまとまってにゃーものを、あえてそのままあげておこうかと考える次第ですにゃ。

反省会 - 地下生活者の手遊び

*1:前回のエントリを参照のこと → 医療ネグレクトと思われる例があるということで通報した - Skepticism is beautiful

*2ビタミンK欠乏症問題 - Skepticism is beautiful

*3:最優先を子供の健康と考えると「やるべきではない」という結論に落ち着くのが妥当なのかどうかわからなくなってくるけれど。

2010-07-15

医療ネグレクトと思われる例があるということで通報した

医療ネグレクトの事例

ビタミンKの問題でも話題になったホメオパシー・ジャパン系のロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシーのページで、医療ネグレクトと思われる事例が公開されていた。母親の投稿内容を引用する。

現在、子供が健康相談にかかりお世話になっております。

主訴は腎臓です。2歳で発病し、2年ほど入院し、今は通院しています。10歳になりました。

病院では、免疫抑制剤がだされ、毎日飲まなくてはならず、とても疑問を感じていたところに、ホメオパシーに出会い、やってみたいと強く思い、相談会を申し込みました。3回めの相談を受けたところです。

今は病院の薬は飲ませていません。

(中略)

ただ、やはり毒だしのレメディ(抗生剤全身麻酔、胸腺の毒だし)をとると、すごい好転反応がでてしまいます。わかってはいますが、ちょっと続けられないくらい、顔、特に目がはれてパンパン、足もむくみ、蛋白尿がでて、みているのが辛くて断念してしまいます。

ホメオパシー 体験談紹介*1

母親は本当に困っている。そして、ホメオパシーを頼みのつなと思っているだろう。結果的には医療ネグレクトだが、私は親の子供に対する真剣さについて疑いをはさむつもりはない。


通報というか連絡

この事例は、はてなブックマーク経由で知ったのだが、感情が高ぶったので愛媛県中央児童相談所にメール及び電話をした。担当者の方には丁寧に対応していただいた。

インターネット上の話だし、母親が特定されているわけでもないので、愛媛県中央児童相談所にできることはないのかもしれない。客観的に考えれば、今回の連絡が単なる自己満足にしかならないだろうとも思ったのだが、論理よりも感情で動いた。


児童相談所はどう考えるのか

以前、地元の児童相談所に「親が代替医療を信じることで結果的に医療ネグレクトとなっている例があるが、児童相談所ではどうとらえるのか?」と話を聞いてみたことがある。担当者は「難しい事例だから、この返答は私個人の意見として聞いて欲しい」という前置きをして次のような説明をしてくれた。

  • 虐待としては扱えないかも
    • 前例を聞いたことがない
    • 親に悪意がない*2
  • 家庭が特定されていれば職員が調査に行くことは可能
  • 家族・親戚からの連絡であれば介入もできるだろう
  • 訴えの件数が増えれば状況は変わるかもしれない

正直な話として、個人的には不満だが、実務を行う人のことを考えると仕方ないようにも思える。


連絡先としてはどこが適切なのか

このような事例があった場合、最も適切な連絡先がどこなのか、知っている方は教えてください。

2010-07-09

ビタミンK欠乏症問題

ビタミンK問題が話題になっているので、私も書かずにはいられなかった。

ビタミンK欠乏症

新生児は、ビタミンK欠乏になりやすい。ビタミンK欠乏状態になると、出血が止まらないような症状になる。脳内出血が起こった場合等は、死亡したり、重大な障害が残ったりする場合もある。通常、新生児にはK2シロップと呼ばれるビタミン剤を投与することで、ビタミンK欠乏を抑制している。


自然信仰と母乳育児の推進

粉ミルクに比べて母乳の方がよいという話は、医療の現場でも言われていることのようだ。国際機関や政府機関は積極的に母乳育児を勧めている。しかし、ビタミンKの問題については、粉ミルクの方が望ましい。人工的だとしてK2シロップを拒否する行動と、自然だとして母乳育児にこだわる行動が重なると、ビタミンK欠乏症の危険性は増す。


ビタミンK問題

「ビタミンK与えず乳児死亡」母親が助産師提訴」というニュースが 2010年7月9日 読売新聞から配信された。以下に内容を一部引用する。

生後2か月の女児が死亡したのは、出生後の投与が常識になっているビタミンKを与えなかったためビタミンK欠乏性出血症になったことが原因として、母親 (33)が山口市の助産師(43)を相手取り、損害賠償請求訴訟を山口地裁に起こしていることがわかった。

助産師は、ビタミンKの代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与えていた。錠剤は、助産師が所属する自然療法普及の団体が推奨するものだった。

この事例は、ホメオパシー問題を追っている人の間では広く知られている。「助産院は安全?」というブログの功績である。


ホメオパス*1の認識

ニュースの配信をきっかけに、菊池誠さんのブログの記事「kikulog」のコメント欄に情報が寄せられている。現時点で重要だと思われる内容を引用する。

生まれた翌日、退院の日、1ヶ月検診、この3回、赤ちゃんにK2シロップを飲ませていますよね。これは、頭蓋内出血とか、出血傾向の予防のためなのです。 それで、ビタミン剤の実物の投与があまりよくないと思うので、私はレメディーにして使っています。

うさぎ林檎さんの投稿:(由井寅子のホメオパシーガイドブック?)からの引用

ビタミン剤の実物投与があまりよくないと思う」という自然信仰丸出しの思い込みからホメオパシーのレメディを用いているという話のようだ*2。この発言をしたという鴨原鴫原助産師は、善意からこういった行動をとったのだろう。しかし、善意だからといって許される行動ではない。

また、Takuさんによれば、今回の問題が明るみに出た後、ホメオパシー医学協会の雑誌では、以下のような弁解(?)が書かれているという。とにかくこれはひどい。

Vit- K30Cには現物質はなく、パターンしか含まれておらず、血管壁を壊すことはありえないこと、(逆にK2シロップの過剰投与は血管壁をもろくする可能性あり)、今回の原因推定としては、様々な問題が考えられること、また、両親のミネラル不足やマヤズム的問題、医原病が胎児に受け継ぐ事などもあること。

Takuさんの投稿:(日本ホメオパシー医学協会の会員向けの雑誌)からの引用

レメディのせいではなく*3、両親の健康状態が悪かった、過去生のカルマのようなものだ、両親の受けた現代医療が子供に悪い影響を与えた…という主張をしているようだ。つまりは、親が悪い、(マヤズムによれば)もともと死ぬ運命だった…とかいう話を分かりにくく表現しているだけである。

どこまで厚顔無恥なのだろうか。


その他参照して欲しい先

とらねこ日誌

メモ:ホメオパシーとK2シロップ - Interdisciplinary

404 Error - FC2ブログ

kikulog

*1ホメオパシージャパン系列の…と言えるだろう

*2:ちなみに、これはホメオパシーのレメディの考えからはずれている。本来ならば、ビタミンK欠乏症と同じ症状を起こす物質を希釈する必要があるはずだ。

*3:もちろんレメディのせいではない。K2シロップを与えなかったのが悪いのだ。

2009-05-11

感染パーティーは対岸の火事ではない

ちょっと忙しいので、あまりちゃんと書けないのだが、簡単にエントリを上げておくことにする。

no title』という記事がMSN産経ニュースで取り上げられた。

 新型インフルエンザの感染が拡大している米国で、わざと感染して免疫をつけようという「感染パーティー」が話題になり、米保健当局が20日までに「本人と周りの子供らを危険にさらす」と警告する事態になった。

で、これについたブックマークを見ると、「米国は酷い」という趣旨のコメントがいくつか見られる。ところが、これは何も米国に限った話ではなく、日本でも行われていることである。

今回紹介するのは、事前企画されたパーティではないものの、全く同じ考え方であることがわかると思う。

昨日のホメオパシー勉強会を迎えました

ちょうど水疱瘡の話をしているときにCさん登場!!

きれいに水疱瘡にかかった子供も一緒にね!

(私には水疱瘡がきれいに咲いた花のように見えるんですサクラ)

すると先週からホメオパシー勉強会に参加されているお母さんがこう言ってくれたんです

「私の子供にも水疱瘡ちょうだ〜い!」

わ〜いニコニコ水疱瘡パーティーの始まりで〜す!


no title

ホメオパシー(特にトラコパシーとも呼ばれる由井寅子氏が率いる「日本ホメオパシー医学協会」)は、予防接種否定論を主張しており、こういった免疫パーティとも親和性が高いようだ。


追記(2009-05-12)

こういった問題もはらんでいるホメオパシーを、「助産師会」が肯定的に取り上げていることは忘れないで欲しいと思う。既に「おかしな親」の問題ではないのだから。

参考:「助産師会はあんまり大丈夫じゃないかも - Skepticism is beautiful

2009-02-02

助産師会はあんまり大丈夫じゃないかも

助産師会、大丈夫か | 医療報道を斬る - 楽天ブログ」という記事を読んだ。「千葉市の助産師会がホメオパシーの専門家を呼んで研修会をした」ということに触れられている。

たぶん、「これはひどい」と思う人も多いだろうし、私もそう思うんだけど、これが氷山の一角に過ぎないのも事実。

例えば、神奈川助産師会のWebページの「神奈川県助産師会 | トップ」というページを見てもらいたい。今までの研修会一覧を見ることができる。

ここからは研修の詳細は分からないけれど、「ハローベビーかながわ」主催のものを見ると、この方面に詳しい人なら危うい雰囲気を存分に感じてもらえるものと思う。

元記事は千葉だし、上でリンクしたのは神奈川ということで、首都圏の話になるけど、地方でも助産師がニセ科学や自然信仰をどんどん導入している話を聞くことができる。

神奈川助産師会の件については、日本助産師会に意見を送ったのだけど、今のところ全く返信なし。ひとまず、助産師がこういうニセ科学や自然信仰的な話題に触れていても、その助産師個人の問題ではない可能性が十分あるということは知っておいてもらいたい。

妊娠、出産、子育てというストレスフルな状況で、親は常に不安にさらされている。たぶん、ちょっとした誘導さえすれば「幸せになる壷」を売りつけることだって難しくない。普段は頼りになる専門家、助産師さんならなおのこと。

だからこそ、この状況は非常にまずい。


これは助産師会の話ではないけれど、最近、助産師の問題が色々なところで取り上げられている*1。真面目な助産師は内部から警告の声を上げてほしい。

*1:例えば、「2009-01-30