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Skepticism is beautiful このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-01-26

余は「報道STATION」君の非を諭す

テレビ朝日系「報道STATION」で「見放された患者と共に闘う"がん難民コーディネーター"」でホメオパシーが肯定的に扱われたという話が話題になった。一般人向けとして「ホメオパシーFAQ - Skepticism is beautiful」を書いた者としては、何かエントリをあげようと思いつつも完全に乗り遅れた。

早速、参考文献としてとても役立つ「ホメオパシー - Skeptic’s Wiki」の方も更新されているので、詳しい話はそちらも参照のこと。


サトルエネルギー学会

番組に出ていた帯津良一氏は、サトルエネルギー学会の会長。学会の挨拶を読むとわかるように*1、この学会は「根拠はないけど効くんだよ(あるんだよ)」というものを扱う学会です。簡単に言えば、スピリチュアルとかニューサイエンスとか、ニューエイジムーブメントとか、そういうのを扱っているところです。

学会誌には、サイエンス・エンターテイナー飛鳥昭雄氏*2とか、『水からの伝言』の江本勝氏、マイナスイオン三大権威の山野井昇氏、外気功の研究で知られる山本幹男氏、「サムシング・グレート」の村上和雄氏などなどなどなど…様々な人が寄稿しています。ここら辺から雰囲気を感じていただければ。


番組での説明ポイント

(引用注:ホメオパシーの)科学的な理論は実証されていないが、効果が認められており、世界的に普及している。

ポイントは、ホメオパシーについて「きちんとした根拠はないが効果はあるのだ」「世界的に普及している」というように視聴者に伝えたことでしょう。

ホメオパシーFAQ - Skepticism is beautiful」の「Q3. 別に科学的根拠がなくても治ればいいのでは?」でも書きましたが、ホメオパシーの効果は確認されていません。また、「きちんとした根拠はない」というのも間違いです。通常の科学の手続きで言えば「ホメオパシーに効果が認められないことは何度も確認されている」のです。言い方を変えれば「現時点で効かないとする根拠は十分ある」と言える状態です。

「世界的に普及している」というのはその通りです。但し、「Q1. 海外では保険の対象になっているというし、国がホメオパシーの効果を認めているのでは?」で書いたとおり、効果が認められているわけではありません。「現時点で効かないとする根拠は十分ある」と言える状態なのですから順当ですね。


結果は卑劣

結果として、「がん難民」という難しく悩ましい問題の解消法のひとつとして嘘の情報を提示したというのが、「報道STATION」の行ったことです。「報道STATION」により「がん難民」に問題意識をもった視聴者の善意はもてあそばれていないでしょうか?「報道STATION」は、その意味を良く考えなければいけない。


追記(2009-01-27)

以下のページで「見放された患者と共に闘う"がん難民コーディネーター"」の動画を見ることができます。是非、その目でどういう「報道」だったのかを確認していただきたいと思います。

http://www.tv-asahi.co.jp/hst/contents/movie/090122/index.html

*1http://www.subtle-eng.com/annai.html

*2モルモン教(どうやらモルモン教からも疎まれているという話がありますが)と超常現象を組み合わせて漫画とか記事とか書いてる人です。→飛鳥昭雄の大真実!? PART2

2008-10-07

地球温暖化問題の結論だけを3行で説明してみた

正直、地球温暖化問題は議論が多すぎてわかりにくい。というわけで、今のところ私が結論と思うところだけを書いてみた。

  1. 地球温暖化してるけどアル・ゴアがいうような激しいことは起こらない
  2. 京都議定書以上のことをしても金ばっかりかかって効果は殆どない
  3. よりよい未来を作るためにもっと適切な方法があるんじゃないの

1. 地球温暖化してるけどアル・ゴアがいうような激しいことは起こらない

地球温暖化しているし、海面上昇もしている。そして、それは今の時点では工業化で化石燃料を大量に消費したという人為的な影響も無視できないぐらい大きいといえる。そして温暖化による被害はある。

でも、アル・ゴアが言うように温暖化が原因で海面が6mも7mも上昇して平地が無くなり未曾有の洪水が起こるなんていうことはまずあり得ないし、巨大ハリケーンのような自然災害が強力になりバンバン起こるという根拠もない。

私たちは、既に何度かの温度上昇を経験しているし、何十センチもの海面上昇を経験している。でもそれなりに対処できている。

これは何も温暖化対策を取らなくてもいいと言う意味ではない。でも、終末のビジョンにおびえてヒステリーを起こすのはおかしい。


2. 京都議定書以上のことをしても金ばっかりかかって効果は殆どない

仮に京都議定書の要求を完璧に実現できたとしても2100年までに温暖化を0.15℃改善したり、海面上昇を2.5cm改善するぐらいと考えられている*1。これは温暖化を10年も遅らせることができないことを意味している。

それでも、殆どお金がかからずできるなら、いいのかもしれない。

ところが実際はかなりの経済損失を伴う。さらに言えば京都議定書は実際のところ全く実現されていないわけで、日本だけでも排出権の買い取りで数兆円はかかるのではないかと言われている。環境は悪化してるのに?どうも京都議定書の要求は非現実的なようだ。


3. よりよい未来を作るためにもっと適切な方法があるんじゃないの

リソースは有限なんだから、賢く使う必要がある。

温暖化対策って目的じゃなくて手段のはず。基本に立ち戻って「何を実現するために」温暖化を防ぐ必要があるのか?を考え直し、実現したい目的のための様々な対策案が、それぞれどれぐらい効果的かという費用対効果の計算をする必要がある。

もちろん、それぞれの対策にはそれぞれのメリットとデメリット(副作用)がある*2。どこまでも複雑で面倒だけど、取捨選択はしなければいけない。

必要なのは「CO2は悪」という「予防原則」ではなく、「リスク管理」だ。


どうすればいいのかはわからないけど

今の温暖化対策って、長期的にものを見ているようなふりをしながら、実際のところ短期的すぎるんじゃないだろうか?

ドーキンスの『神は妄想である』で引用されていた話に、私たちが生得的に持っていると思われるような「倫理観」があって、どうもそれは宗教や文化の違いに影響されず、多くの人の間で共有されているようだというものがある。地球温暖化を防がなければならないという気持ちは、この倫理観と同じものに強く影響を受けているような気がする。

路面電車が暴走していて、本線の先の線路の上で 5 人の人間が動けなくなっている。しかし、たまたまあなたが線路の切り替えポイントの所に立っていて、電車の行く先を本線から待避線に切り変えて、この 5 人の命を救うことができるとせよ。ところが間の悪いことに待避線の方にも、一人の人間が線路の上で動けなくなっているのだ。あなたは行く先を切り替えて 5 人の命を救うために一人を犠牲にできるか?


第二問。再び、路面電車が暴走していて、本線の先には 5 人の人間が動けなくなっている。しかし今回のあなたは切り替えポイントではなくて、線路にかかった小さな橋の上にいて、その橋の欄干に大変太った男が座っている。電車が通るタイミングでこの男を下に突き落とせば電車を止められる。あなたはこの男を突き落とせるか?


第三問。またまた、電車が暴走していて、本線の先では 5 人が動けなくなっている。あなたは行く先を切り替えるポイントの側に立っているが、今度の待避線はループになっていて、 5 人の犠牲予定者の直前でまた本線に合流してしまう。よって、普通なら待避線に切り替えても意味がない。しかし、たまたまその待避線の途中で大変に太った男が動けなくなっていて、この男の重量で電車が止まることは間違いない。あなたはこの電車の行き先を切り替えられるか?


第四問。前問と同じ設定だが、今回はループ待避線の方に太った男ではなくて、大きな砂山があるので安全に電車は停止する。ところが間の悪いことに、丁度電車とぶつかるタイミングで、歩行者がその砂山の少し手前で線路を横断しようとしているのだ。あなたはこの電車の行き先を切り替えられるか?


Silent Life of Dr. Hara: 究極の選択

「環境を今のままに保つ」ことで失う命は許容できるが、「浪費によって変化した環境」によって失う命は許容できない。たとえ、「浪費によって変化した環境」によって救われる命の方が多かったとしても。

そんな倫理観がありそうだ。これはニセ科学でよくみる自然信仰にもつながりそう。

*1京都議定書 - Wikipedia

*2:もちろん温暖化を防ぐことにも副作用はある

2007-11-21

医療崩壊

医療崩壊に関する議論は稀に見る質の高さ

医療崩壊関連問題のインターネット上の議論を見ていると、医師の医療崩壊に対する危機感がかなり感じられる。コメントも脊髄反射的なものは少なく、コメントの質と量が比較的高いレベルで維持されている。この労力は並大抵のものではないと思われる。

コメントスクラム

医療崩壊を押し進めるような、患者の身勝手な要求をブログで展開した際に、複数の現役医師からの厳しいツッコミが入ることがある。このようなとき、医師のコメントについて「コメントスクラム」という表現が使われる場合がある。これは、医師の医療崩壊を止めようとする情熱が、カルト的な印象を与えてしまっているためではないかと思われる*1

医療の現場の知識もない素人にとっては、圧倒的な情報の洪水に恐怖を抱く可能性がある。

医師と患者の間の溝

個人的に一番問題だと思うのは、そのような危機感をもって実際に議論をしている人の多くが「医師」又は「医療関係者」であることではないかと思う。

一般市民の間では相変わらず、「医師は頭が良くて高給取りで偉い(または偉そう)」というステレオタイプが存在する。そういったステレオタイプをもった庶民が医師から反論されたら、ドン引きするか、猛烈な反発心を抱いても不思議ではない。陰謀論すらまことしやかに語られるようになる。

医療に関する知識は、他の分野と比べても素人と専門家の間の知識の壁が厚い。そのため、問題点を的確に指摘できるのは、医療関係者になってしまいがちだという現実があるとも考えられる。そういった理由から、私は医師が間違った方法をとっているとは思わないが、戦略的にはあまり成功しない方法をとっているとは思う*2

行動すべきは私達

私は、間違った医師批判などに反論すべきなのは、私たちのような第三者の庶民であって、専門家ではないと思う*3

医療の問題は、私たち、そして私たちの愛する人の命が“直接”関わっているのだから、全く他人事ではない。私は自分の大事な人が医者にかかることもできずに死んでいく様は見たくない。

もし、あなたもそう考えるのならば、難しくても面白くなくても、医療崩壊の問題を知るべきだし考えるべきである。もし、そう思うのなら。

無知の生む悲劇が進んでいる

医療に関するおかしな批判の殆どは「無知」から来ていると思う。と、偉そうな事を言っている私も、医療現場についても構造的な問題についても、知っている人から見れば「オツムが弱い」と言いたくなるほどのレベルで無知だった。

醜い自己弁護するとすれば、そもそも知る機会が無かったのだ。このような知識については新聞を読んでも無駄なようだし*4、ある意味知らなくて当然ではないかとも思う。その現状はどうにかして改善すべき点だと思う。

医師には正しい情報を淡々と語り続けて欲しい。そして、医師がそういう行動を取れるだけの余裕を、我々庶民が用意する必要がある。

*1:「ニセ科学批判」批判でも、全く同じような現場を見ることができる

*2:しかし、それ以外に医師が取れる方法があるかといえば、そんなに無いような気もするので、批判する気は全く起きない

*3:月着陸捏造論を否定するのがNASAの職員だけだったら、逆に変な説得力すら持ってしまうだろう

*4:より酷い理解へと誘導される場合すらある