「ビリー・エリオット ミュージカルライブ リトル・ダンサー」


出典:ビリー・エリオット日本公式twitterより

いやもう、本当に素晴らしかった。期待以上でした。イギリスで舞台を見てきた方がみんな良かった良かったというのでそれなりに期待値を上げて観に行ったのですが、それを簡単に上回る感動でしたね。見終えた瞬間に「もう一回……!」と思いましたし、これが来日公演だったらマチネ見終えたその足でフラフラとソワレの当日券売場に並んでるところだったと。素晴らしい作品を観た後はしばらく幸福な気持になりますが、ずいぶん長いことその気持が持続しています。ああ、幸せ。
本編が始まる前に主演のエリオット・ハンナ君が舞台裏を案内してくれる映像や監督のスティーブン・ダルドリーのご挨拶なんかもあったりして、気分はすっかりヴィクトリアパレス劇場に。まあしかしこのエリオット・ハンナ君が顔の整ったなんとも美しい子で、「わー!この子がビリーやるんだ!」ともうそれだけでテンション上がりましたよね。ポスターや宣伝写真に使われていたのはもう少し幼い雰囲気の金髪の子だったと思うのだけど、ハンナ君はキレイだけどちょっと影もあり生意気な感じ。しかもまあこの子が長い足でくるくるとよく踊ること! カーテンコールに出てきた他の3人のビリーや、YouTubeに上がってる過去のビリーの映像見ても、「あーやっぱりハンナくんのほうが上手いな!」と思いました。この子ありきの映像ソフト化だったんじゃないかとすら。

映画「リトル・ダンサー」を観たのももう10年以上前ですが、大筋のストーリーは概ね同じだったと思います。ただミュージカルらしいにぎやかな演出になっているので、コミカルな笑いも、歌で一気に泣かす場面も多数。炭鉱ストの様子と少女たちのバレエ教室の様子が同時に展開するあたりの演出なんて舞台ならではでうまいなーと感心させられたし、そのラストでビリーがついにくるくると踊りはじめた瞬間なんかもうそれだけで涙腺ぶち抜かれました。そしてビリーの友人マイケルが女装好きで、ふたりで女装してタップ踊る場面の楽しくて可愛らしいこと。もう本当に笑ったり泣いたりで忙しかったです。

後半、ビリーがひとりで踊りだすと「成長したビリー」が現れてふたりで踊る……という場面があるのだけど、この成長したビリーというのがなんと初演オリジナルキャストのビリー、リアム・ムーア*1だそうで。この方、実際にロイヤル・バレエ学校に入学して、マシュー・ボーンのSWAN LAKEで王子役踊ったりしてるバリバリのダンサーなんですよね。ちょうどこの場面の音楽も「白鳥の湖」で、なんかもう映画版リトル・ダンサーのラストシーン(アダム・クーパー出演のあそこ)を思い出したり、ふたりのダンスがあまりにも美しくて幻想的だったりで、メタとドラマがあいまって「美しすぎる……」と涙しました。子ビリーを吊るワイヤーの使い方もきれいだったし。はあ、思い出すだけでため息が。

ラストシーン、バレエ学校に合格して家を出て旅立つビリーと、炭鉱ストの炭鉱夫たちの対比がまたすごい。未来への明るい希望と、沈みゆく世界の絶望が対照的で、光がより明るく、闇がより暗いというこのコントラスト。脳天気なハッピーエンドじゃないほろ苦さが素晴らしい。旅立つビリーを見送りに来たマイケルの頬に、ビリーがそっとキスして去っていくのもすごく優しいシーンで泣けました。

他にも、お祖母ちゃんが夫を思い出して歌うダンスシーン、ビリーがウィルキンソン先生に抱きつく場面、ビリーのアングリーダンス、ビリーのお母さんの手紙、お父さんがビリーのためにスト破りする場面、ビリーがバレエ学校からの合格通知を開ける場面など、好きなシーンをひとつひとつ挙げていったらキリがないくらい、素敵なシーンだらけのミュージカルでしたねえ。ああ、思い出すだけでもう一回みたい気持ちがふつふつと。

もうこの本編だけで満腹だったのに、カーテンコールでは男性陣やお祖母ちゃんもチュチュを着て登場するというサービス精神。お祖母ちゃんなんか本編では歩くのもしんどそうな雰囲気だったのに意外にも美脚で踊りだすからびっくり。さらにスペシャルカーテンコールとして過去の歴代ビリー27人がずらりと登場して踊りだすものだから、もう、うわー!うわー!と口あけて拍手喝采でしたよね。さっきのリアム・ムーアみたいにバリバリのバレエダンサーになったビリーもいれば、腕じゅうにタトゥーいれて別ジャンルのダンサーになっちゃったビリーもいたり。まあしかしさすがにみんなキレッキレに踊っててすごいなーと感心しました。

やーしかしイギリスでオープン以来9年間ロングランというのがわかる傑作でした。むしろブロードウェイでなんでクローズしちゃったのかと疑問に思うくらい。公式twitterによると全国上映の後でBlu-ray発売予定とのことなので、楽しみに待ちたいと思います。


ビリー・エリオット ミュージカルライブ リトル・ダンサー
http://littledancer-m.com/

【キャスト】
ビリー・エリオット  :エリオット・ハンナ
ウィルキンソン先生  :ルーシー・ヘンシャル
ビリーの父      :デカ・ウォームズリー
大人のビリー     :リアム・ムーア
ビリーの祖母     :アン・エメリー
ビリーの兄      :クリス・グラハムソン
ボクシングの先生   :ハワード・クロスリー
バレエ教室のピアニスト:デヴィッド・マスカット
ビリーの母      :クラウディア・ブラッドリー
マイケル(ビリーの友):ザック・アトキンソン
ウィルキンソンの娘  :デミー・リー

【スタッフ】
音楽監督エルトン・ジョン
脚本:リー・ホール
監督:スティーブン・ダルドリー

*1:Liam Mower=リアム・モワーのほうが検索にはひっかかりやすい