宝塚花組全国ツアー公演「仮面のロマネスク/EXCITER!!2017」@神奈川県民ホール

ここしばらくヅカ熱が上がっているので久しぶりに全国ツアー公演にまで手を出してしまいました。いやー何年ぶり? ヅカを見始めた頃に定番演目の「風と共に去りぬ」が気になって宙組和央ようかさんトップ時代に神奈川県民ホールまで行ったのが唯一の全国ツアー経験だったので、もう13年も前です。ひえー。私のヅカ歴もうそんなになりますか。100年の歴史の中で考えれば新参もいいとこですが、しかしもう10年以上見てるんですね……
さて「仮面のロマネスク」はフランス革命後の宮廷を舞台に青年貴族と若い未亡人の恋の駆け引きを描いた作品……ということで、なんというかまあ「ヅカ初心者が見に来る全国ツアーでこの作品大丈夫? 清く正しくなくない?」なくらいにねっとり濃厚なタイプなやつでした。主人公ヴァルモンはそういう駆け引きを面白がってるタイプの男性なので感情移入できるキャラではないのですが、しかし、軍服を何着もお召替えするトップさん・明日海りおの美しさにね、もう、「ごちそうさまです……!」という気持ちになりました。わんこのように可愛いキャラのダンスニーを演じる柚香光ちゃんも、あまりこのタイプの役を見たことなかったので「かわいいなけしからんなもう」となりました。

そして花乃まりあちゃんの後を継いでトップ娘役に就任した仙名彩世さん、優等生タイプでしっとりした大人の娘役、という雰囲気で、花乃ちゃんとはだいぶ違ったキャラですね。この作品も花乃まりあちゃんがやるともっと激しくバチバチした感じの雰囲気だったんでしょうけれど、仙名さんがやると大人の理性で感情を押し殺すエロス、みたいな雰囲気に感じられました。おそらく今後花組にあて書きされる作品もトップコンビの関係性は変わってくるんでしょうね。明日海&花乃コンビはお互いを焼き尽くすような激しい関係の「金色の砂漠」が最高傑作でしたけれど、明日海&仙名コンビだとしっとりと落ち着いた大人の関係とか抑制のきいたやつも行けそうな気がします。みりおファン的にはまた違った側面の魅力が見られそうで楽しみであります。

そして後半のショー「EXCITER!!2017」、いやー楽しかった……やばかった……。あんまり興奮しすぎる状態で何も考えられなくなる状態を語彙消失なんて呼んだりしますが、まさにそれでした。今までの私のヅカ歴の中で最も体感時間の短かったショーではないでしょうか。手拍子で盛り上がるナンバーも多く、客席降りのサービスが何度もあってグイグイと生徒さんたちが客席を盛り上げていきます。3階席なのであまりその恩恵には預かれなかったのですが、あれは1階のお客さん嬉しいやつですね。中でも中盤では男役3人がまるでホストのように流し目やウインクをバチバチ決め、客席に降りてお客さんの頬をなでたり(!)指を指したりハイタッチしたり、と、もう「いま目があったあなた、次は大劇場へおいで下さいね……?」と言わんばかりの釣りっぷり。あれはね、釣られた人、その瞬間にもう思考停止するヤツですよ。気がついたら終演しちゃうやつですよ。特に最前列のお客さんの頬をなでた柚香光ちゃん、そのお客さんのけぞって悲鳴上げてたらしいんですけど、舞台に戻るタイミングでもう一度なでに行ってましたからね。そのお客さん「耐えられない」といわんばかりに逃げ腰になってて、後ろから見てても笑ってしまった。彼女最後まで息できたかな。

はーそれにしても明日海りおさんはもうなんというか、円熟期に入ってきた気がしましたね。数年前は「少年キャラ」「かわいい系男役」な雰囲気だったんですが、もうすっかり色気も貫禄も出てきて押しも押されぬ「大人の男役」になってきた気がしました。この公演もすごく楽しかったんですが、「ああ、トップさんとして完成してきちゃったな」という気がして、「退団」の二文字がついチラチラとちらついて一抹の寂しさも覚えてしまったりしました。現役トップの中ではもうトップ歴最長ですからいつ退団が決まってもおかしくないわけですし。退団までの間に仙名彩世ちゃんとのコンビでまた何か一本でもあたり役が見られることを願いつつ、劇場を後にしました。