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LHCアトラス実験オフィシャルブログ このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-09-26

はじめまして!

| 07:14 |

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ブログ移転後初の記事で若干緊張しますが……

みなさまはじめまして!東京大学医学研究科の秋本祐希です。

一昨年、東京大学理学研究科素粒子実験(アクシオンと呼ばれる素粒子に関するものです)で博士号をいただいた後、現在はマブチデザインオフィスというデザイン事務所で働く傍ら、東大医学部のGCOE特任研究員として横山先生と一緒に科学コミュニケーションに関する研究をしています。

これからちょくちょくと、素粒子物理学LHC、ALTASに関する解説や旬なトピックスなどを描かせていただくつもりです。どうぞよろしくお願いいたします!


というわけで、第1回目は自己紹介もかねて大学院時代に研究していた素粒子、アクシオンの紹介をさせていただきます。

みなさんはアクシオン(axion)って粒子、知っていますか?知らないですよね!
日常生活では決して出てくることはありませんけれど、宇宙の質量の25%をしめるといわれている暗黒物質の候補として、物理学の世界ではたまーに聞く名前です。今回はそんなよくわからない粒子アクシオンを、ほんの少しだけ、知ってみっちゃいましょう。

自然界は4つの力によって支配されていますが、そのうちのひとつ、強い力を考えるための理論が量子色力学(QCD)です。QCDという理論は強い力をとても上手に説明することができるのですが、それでもまだわかっていない部分があるんです。そのうちのひとつが、アクシオンを生み出すことになる強いCP問題です。

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強いCP問題を説明する前に、CP対称性についてちょっとだけ。CP対称性とは、「粒子の運動の方向と電荷をひっくり返しても、物理法則がおかしなことにならない」ということです。そして、強い力ではCP対称性を保存するような実験結果しかないのに、QCDではCP対称性を破ることができるようになっています。これを強いCP問題と呼ぶんです。

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この問題をなんとかするために、「Peccei-Quinn広域対称性の導入とその自発的破れ」なんてものが考え出されました。ちょっと難しいのですが、ちゃちゃっと簡単に説明すると、これによってQCDにおいてCP対称性を破る部分を消して、CP対称性を保つことができるんです。そして新しい対称性が自発的に破れることで、新しい粒子アクシオンが現れるのです。

ちょっとわかりにくいところがあるかと思いますが、「対称性が自発的に破れると新しい粒子が生まれる」というルールがある、と考えてもらえるといいかもしれませんです。対称性だとか自発的破れだとか、ちょっとまえにニュースで聞かれた方も多いと思いますが、これは、昨年ノーベル物理学賞を受賞された南部先生の「自発的対称性の破れとHiggs粒子」の関係と同じものですね。

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そのようにして現れたアクシオンですが、光子と非常に弱いながらもお互いに反応するので、見つけようとする場合には、光子との反応を使ったものとなっています。特に、磁場(実は担い手は光子なんです)とアクシオンの反応によって光子を作る逆プリマコフ変換を利用した実験がいっぱいあります。

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このアクシオンを見つけるために、東京大学蓑輪研究室「すみこ」とCERN「CAST」があれやこれやと競争を繰り広げているのですが、そのお話はまた別の機会に。

2008-12-19

はじめまして 東大素粒子センターの磯部です

| 11:44 |


皆様、はじめまして。
東京大学素粒子物理国際研究センターの磯部です。
私はATLAS実験で主に実験データを解析する為のコンピューティングに関する仕事を行っています。

東大素粒子センターにはATLAS実験データの解析拠点の一つとなる地域解析センターが設置されており、この解析センターにある資源のうち一部は先に坂本先生から紹介があったLHC Computing Gridで使われています。
Gridといえば私の記憶に新しいのがプレイステーション3を使った「Folding@home」プロジェクトです。これは米スタンフォード大学が進めているタンパク質構造解析のためのプロジェクトで、インターネットに接続されたアイドリング状態のパソコンやプレイステーション3などの資源を利用するものです。一方LHC Computing Gridは同じGridでもこのプロジェクトとはかなり異なった要素を含んでいます。特に大きく違うのはLHC Computing Gridの場合、実験で得た膨大なデータ(数ペタバイト/年!!)を如何にして効率よく・速く処理するかが重要である所だと思います。

私の記事では主に東大にある地域解析センターの話を中心として、コンピューティングの話をできたらと思います。

2008-10-05

皆様、はじめまして

| 08:25 |


東京大学素粒子物理国際研究センター(ICEPP)の小林富雄です。
KEKの徳宿さんと一緒にアトラス日本グループの共同代表をさせて
いただいています。

アトラス日本グループが発足したのが1994年の4月ですから、
これまで14年以上の年月をかけて、やっとアトラス測定器が完成
いたしました。特に日本グループが担当した箇所はよい性能で
動き始めています。これもこれまでのスタッフや多くの学生さん達の
努力の賜物だと思います。

LHC加速器は、9月10日の運転開始後数日間は非常に順調に立ち上がり
ましたが、その後故障にみまわれ、運転再開は来春となってしまいました。
しかし、LHCは今後これまでの建設期間と同じくらいの期間は稼動し続ける
ことでしょうから、長い目で見ると、こうした初期トラブルも今後の
安定運転にとってよい経験かもしれません。

LHC実験では、ヒッグス粒子をはじめとして、素粒子の標準理論を
超えるまったく新しい物理が顔を見せるだろうと強く期待しています。
またここは、世界中から優秀な若手研究者・学生が集まる場でもあるので、
日本からも多くの学生さん達が参加して、おおいに活躍してもらいたいと
願っています。

2008-10-02

神戸大学の越智です

| 16:57 |

神戸大学理学研究科の越智です。

ATLAS 実験に日本から参加している機関は、全部で15機関あります。このうち、KEK(高エネルギー加速器研究機構)をとICEPP(東大素粒子国際研究センター)を除くと、他は普通の大学の研究室です。大学は教育機関としての役割もあるため、授業などのために多くの研究者は長期CERNに滞在して実験を行うことが難しいという現状があります。
しかし一方で、元気のいい大学院学生を教育(いや、一緒に勉強!!)して、ATLAS実験の第一線に送り出すことができるのも、大学ならではの研究スタイルです。

私の書き込みでは、ATLAS実験に参加している国内研究者の視点や、将来計画されているLHCのアップグレードに関する話題を提供できればと思っています。

2008-09-27

自己紹介 東大素粒子センターの石野です

| 22:41 |

東大素粒子センターの石野です

既に数度、記事を書きましたが、ここで自己紹介をします。2002年以来、CERN を拠点に実験準備を続けてきました。TGC という名のミューオン検出器、及び これが発する信号を高速処理し (~ 2.5micro sec) 、今、ヒッグス粒子が崩壊したかもしれないので、この瞬間のデータを記録せよ!! という指令をアトラス全体に配布するトリガーシステム、 これらを組み上げてシステムとして確実に動作させることが私に課せられたミッションでした。

システムの規模は巨大です。web 表紙の写真にある様な直径25mの円盤6枚、総チャンネル数32万、これを動作させるためのプロセスは、とうてい一人でこなせるような量ではないし、必要とされるスキルも実に多様です。チームとしての高い総合力が要求されます。自分がオーガナイザーとなってチームをリードするようになった2005年以降に限定しても、デザイナー、テクニシャン、CERN サポートスタッフ、ATLAS ミューオンチーム、ATLAS トリガーチーム、そしてTGC チームを構成する人々 総計100人を超える人々の effort が 注ぎこまれています。

日々、難しい問題にぶちあたりながら、仲間と一緒にそれを解決するというプロセスの連続でしたが、そのパズルを解くような過程は実に楽しいものでした。そして1stビームが出た日の夕方に得られたいくつかの "予定通りの結果" は、今まで正しいことを行ってきたことを証明する最高の贈り物でした。”精一杯の努力と少しのラッキー”のコンビネーションによって到達できた場所、だと思っています。

2009年春に加速器が再稼働し、データが蓄積されていくのに応じて、未だ気付いていない困難や理解できない現象に出会うこともあるでしょうが、今までそうしてきた様に、これからも TGC の仲間と一緒に すべてを解決して、ATLASで新物理を発見するための重要な役割を果たしていきたいと思います。