Hatena::ブログ(Diary)

LHCアトラス実験オフィシャルブログ このページをアンテナに追加 RSSフィード

2018-05-14

一般向けの企画 (6/16 多摩六都科学館)

09:53 |

6月16日(土)に多摩六都科学館にて一般向けの企画を行います。

「巨大加速器LHCで探る宇宙−Phantom of the Universe」

プラネタリウム用に作られたムービーはパソコンの上で見るのと違い、大迫力です。

定員は120名です。申し込みは

https://www.tamarokuto.or.jp/event/index.html?c=event&info=1701&day=2018-06-16

からです。興味のある方は是非!

2013-01-30

共同代表の小林教授、徳宿教授がともに「ナイスステップな研究者」に選出

11:12 |

 このたび、アトラス日本グループの共同代表を務める、小林富雄東京大学教授と徳宿克夫高エネルギー加速器研究機構教授がともに、文部科学省科学技術政策研究所が選定する「ナイスステップな研究者」に選出されましたのでお知らせいたします。

【選定理由】ヒッグス粒子の存在確認に貢献

【国際交流・協力部門】

 ○ATLASアトラス)日本グループ

 共同代表:小林富雄(東京大学 素粒子物理国際研究センター 教授)

      徳宿克夫(大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究

           機構素粒子原子核研究所 教授)

http://www.nistep.go.jp/activities/nistepaward

f:id:lhcatlasjapan:20130125153734j:image


(文責:広報担当、横山広美

2012-12-17

本日proton-proton collision、終了

13:47 |

結局25nsでは0.01fb-1程度のPhysics runデータを取っただけでした。

(物理解析には使わないと思います。)

加速器屋さんからのメッセージ(fishとしているあたり準備しているのかな?)と共に。

f:id:lhcatlasjapan:20121217054457p:image

2012-05-06

ヒッグス粒子のお話【第2回】

| 09:19 |

まずは前回の復習からはじめましょう。

CERNには、LHCという加速器があります。これは陽子同士をぶつけることで、高いエネルギー状態を作ることが出来る装置です。衝突点からは普段身近に存在しないような素粒子、例えばヒッグス粒子などが飛び出してくる可能性があります。でもヒッグス粒子はものすごく短い時間で他の素粒子へ崩壊してしまいますので、直接見たり捕まえたりすることは出来ません。きちんとヒッグス粒子が出来たかどうかを確認するためには、ヒッグス粒子が崩壊した後の素粒子を検出してあげて、そこから推測をしてあげるしか無いということでした。

ではヒッグス粒子は例えばどういう粒子に壊れてゆくのでしょうか?f:id:lhcatlasjapan:20120506074523p:image:w360:right

いろいろな崩壊の仕方が考えられますが、その中でもまず真っ先に挙げられるのは「ガンマ線」です。あまり聞きなれない言葉かと思いますが、ガンマ線というのは「光」の一種です。性質は普通の光とほぼ同じ。ただエネルギーがとても(10000000000倍くらい)高い光なので、特別に「ガンマ線」というかっこいい名前が与えられています。もちろん単に「光」と思っていても差し支えは無いので、研究者の中でもしばしば「フォトン(=光子)」と呼ばれていたりします。

ヒッグス粒子はこのガンマ線2本に崩壊します。特徴的な崩壊の仕方なので、ヒッグス粒子探しでは一番注目を浴びています。

ところがこの「ガンマ線を2本検出」してヒッグス粒子の証拠にする方法には少しだけ問題があります。LHCはものすごく高いエネルギーで陽子同士を衝突させる装置です。ヒッグス粒子由来でなくとも、高いエネルギーを持った光が何本か出てくるようなことはしょっちゅう起こります。もしくは、検出器が勘違いをしてしまって、本当はガンマ線でないものをガンマ線だと報告してしまうようなこともたまに起こります。

そのため、「一回の衝突から2本のガンマ線が検出される」ということだけでは、本当にそれがヒッグス粒子から生まれたものなのか自信をもって判別出来ないのです。(この「ヒッグス粒子を探すのに邪魔になる事象」のことを、一般的に「バックグラウンド」事象と呼びます。反対にヒッグス粒子が出来た事象のことを「シグナル」事象と呼んでいます。)

さて、ではもっと積極的にヒッグス粒子の特徴を捉えるようなことは出来ないでしょうか?

人間だったら顔つきや体つき、髪の色に眼の色、といった特徴がすぐに思いつきますが、残念ながら素粒子に「大きさ」はありません。なので見た目の特徴というのは存在しません。

でも重さはどうでしょう?素粒子にも重さはあります。もちろんヒッグス粒子にも重さはあります。これを手がかりに出来ないでしょうか?

都合の良いことに、「バックグラウンド事象」は何か特別な粒子から光が出ているわけではありませんので、特定の「重さ」というものはありません。重さを測ったとしても、きっとランダムな大きさになるでしょう。これはヒッグス粒子との大きな違いです!

では二本のガンマ線から、ヒッグス粒子の重さを計算する方法について考えてみましょう。

ガンマ線は光の一種だということでした ー 光には重さがありません。だから、単に壊れて出来た光の重さを足しあわせても0kg+0kg=0kgですのでヒッグス粒子の重さにはなりません。おや、さっそく躓いてしまいました。ヒッグス粒子の重さはどこへ行ってしまったのでしょう?

実はここが素粒子物理学の不思議なところです。

f:id:lhcatlasjapan:20120506074932p:image:w360:right

アインシュタインが今から100年も前に提唱した「相対性理論」によれば、エネルギーが高い世界では「質量」と「エネルギー」が(条件さえ揃えば)入れ替わることが可能です。

あるとき突然、1gの重さのモノが消えて、それと同じ分のエネルギーに形を変えてしまうこともありえたりします。逆もまた然り。エネルギーを集めてきちんと条件を満たしてあげれば、新たに重さのあるモノを作り出すことが可能です。

質量を「金の延べ棒」、エネルギーを「円」だと思えばだいたいのイメージとしては正しいと思います。普段はそれぞれで流通していますが、きちんと手間をかければお互いに入れ替えることが可能です。変換レートもきちんと設定されていて、(エネルギー) =(質量)x(光の速さ)x(光の速さ)といった関係式があります。

(これを数式で表すとE=mc^2と書くのですが、これは少し物理に詳しい人や、SFが好きな人ならきっと聞いたことがあるのでは無いでしょうか?)

話を簡単にするため、ヒッグス粒子が止まった状態で生み出されたと考えましょう。このヒッグス粒子は、すぐに2本のガンマ線へと崩壊します。この時のガンマ線2本分のエネルギーを加え合わせると、ヒッグス粒子の質量をエネルギーに変換した分になっているはずです。つまり、(ガンマ線2本分のエネルギー)=(ヒッグス粒子の質量)x(光の速さ)x(光の速さ)となっています。実際のヒッグス粒子は動いた状態で生み出されますのでもう少し複雑な計算が必要になりますが、大まかには同じ方法で質量が計算できます。

すると私達がやらなくてはいけないことは、「ガンマ線のエネルギーをきちんと測定してあげる」ことになります。そのためにアトラス検出器に設置されているのが「電磁カロリメータ」という装置です。f:id:lhcatlasjapan:20120506080510j:image:w260:rightアコーディオンのような構造になっていますが、これは鉛と液体アルゴンを交互に重ねて束ねたものです。これが ー 手巻き寿司で言うとごはんのあたりに ー ぐるり円筒状に配置されています。

f:id:lhcatlasjapan:20120506081050j:image:w260:right

この中にガンマ線が飛び込むと、まずは鉛にぶつかります。エネルギーが高いため普段は透過力がものすごく高いガンマ線ですが、さすがに分厚い鉛の板が相手では素通りは出来ません。対生成という反応が起こって、電子と陽電子に分かれてしまいます(陽電子というのは電子の反対の電気を持った粒子です)。この電子と陽電子は元のガンマ線の勢いを引き継いで、すごい速さで飛び去ろうとします。そうはさせるかと鉛の原子核が引きとめようとするのですが、すると今度は制動放射という反応が起こって、電子・陽電子からガンマ線が飛び出してきます。こうしてまたガンマ線が生まれて、はじめに戻ります。

f:id:lhcatlasjapan:20120506084817p:image:w200:rightこのループを繰り返すたびに、粒子の数はねずみ算式に増えていきます。いわゆる倍々ゲームですので、あっという間にものすごい粒子数になってしまいます。当然「1つあたりの粒子が持つエネルギー」はどんどん少なくなっていくので、最後に残るのは大量のひょろひょろ電子だけになります。末広がりに粒子が枝分かれしていくこの過程は、遠くから眺めるとさながらシャワーのようですので、「電磁シャワー」と呼ばれています。

液体アルゴンの中に漂うひょろひょろ電子は、両端に取り付けられた電極から電気信号として読み出されます。この電気信号の大きさを調べることで、元のガンマ線のエネルギーを知ることが出来るという構造になっています。

f:id:lhcatlasjapan:20120506081230p:image:w640

先程述べたように、このエネルギーを足しあわせてあげると、元の粒子の重さを計算してあげることが出来ます。もし元の粒子がヒッグス粒子なら重さは一定になりますが、「バックグラウンド事象」ならば決まった重さは無いので、ランダムな重さを指し示します。(エントリーの最後にこの件に関して一つだけ宿題を出しておきます。もし時間があったらぜひ考えてみてください。)

ここまでわかっていれば、もうほぼヒッグス粒子探索の全容を理解したと言ってもいいのではないかと思います。そろそろ実学へと進みましょう。

次回は「ヒストグラム」というものの読み方を少しだけ勉強して、それからいよいよ去年のヒッグス粒子探しの結果を見ていくことにしましょう。


宿題:

東京ドームいっぱいのお客さんの中にクローン人間が変装して混ざりこんでいます。彼らは変装の達人なので外見では区別がつきません。唯一の手がかりは、彼ら全員の体重が同じであることですが、残念ながらそれが何kgなのかはわかりません。さて、どういう方法で彼らの体重を推定すれば良いでしょうか?また何人紛れ込んでいるか予想するにはどうすれば良いでしょうか?良い方法を考えてみてください。


( 佐々木・山口 : ご意見ご感想はmoreinteraction@gmail.comまでどうぞ )

2012-04-29

ヒッグス粒子のお話【第1回】

| 04:53 |

2011年末、CERNはヒッグス粒子発見か?ということで湧き上がりました。日本でも幾つかのメディアに取り上げられたのでご記憶の方もいらっしゃると思います。

その時の結論は、

ヒッグス粒子発見の兆候は見えました。でもまだ間違いの可能性が少し残っています。2012年にさらにデータを貯めるので、それを使って解析をもう一度やって、それから最終結論を出しましょう」

ということでした。ですので、今年のいつかには(少なくとも)去年見えた兆候が正しかったのかについて結論を出す予定です。もし正しければ、科学者たちが約半世紀も探し続けた粒子の発見になりますので、物理学界隈ではちょっとしたお祭り騒ぎになると思います。きっとテレビ・新聞等でもニュースにもなるでしょうから、みなさんもぜひその輪に加わっていただきたいと思います。そしてその時に、ヒッグス粒子とは何なのか、どうやって探したのか、という知識を持っていると、より一層深い味わい方が出来るのではないでしょうか?

そんなわけでこれからしばらく、回を分けて少しずつになりますが、出来るだけ簡単に(高校生くらいを対象に)ヒッグス粒子についての説明をしていきたいと思います。よろしくお付き合いお願いいたします。

さて、初回の今回は、実験自体のおおまかな全体像を説明いたします。

途中難しい語句が出てきますが、これらは後で回を改めて順々に説明をしていこうと思っているので、今はまだそういうものなのかと思っていただければ結構です。例えば私たちが研究しているのは素粒子物理学という、「素粒子」を対象にした学問なのですが、この「素粒子」をイメージしていただくことさえ中々に難しいのです。「素粒子とは物質の最も基本の構成要素で、つまり原子も分子も人間も地球もこの素粒子でできている」と言ってしまえば簡単なのですが、実はこの素粒子達は真空から生まれ、気がつくとまた崩壊していなくなってしまう、といったように、常識では考えられないような不思議な性質を持っています。「ヒッグス粒子」はその素粒子ファミリーの中でも特に変わりダネですので、みなさんにうまくお伝えできるよう頑張ります。

さてまず、私たちがいる研究所ですが、スイス・ジュネーブ郊外にある、「CERN(セルン)」というところになります。ダン・ブラウンの著書で映画にもなった「天使と悪魔」の冒頭で登場する研究所です。(詳しくは、早野先生のサイトを参考にしていただくのが良いかと思います。)南はモンブランを眺めて、北はジュラ山脈に囲まれた風光明媚な研究所です。何千人もの物理学者がここに集まって研究をしていますので、さながら物理学者の村のようなところになっています。

f:id:lhcatlasjapan:20120429212937j:image:w360:right

その地下には、「LHC(エル・エイチ・シー)」と呼ばれる巨大加速器(右写真の赤線)が建設されて、すでに稼働を開始しています。写真から分かる通り、町一つが収まるほど巨大なリング状の装置です。この装置は、「とてつもなく速い陽子ビーム」を作ることを目的として建設されました。「陽子」というのは、水素原子から電子を剥ぎとって残った「核」のことなのですが、これをほぼ光の早さにまで加速してあげます。

そのままではせっかく加速した陽子はすぐにどこかに飛んでいってしまいますので、LHCのリング中でぐるぐる回してあげます。

それが終わったら次にもう一本、また別の陽子を用意してあげて、反対方向にぐるぐる回してあげます。

ものすごい速さでぐるぐる回る陽子が二本。すると次にやってみたくなるのは、その二つをぶつけることです。とても小さいとはいえ(むしろ小さいからこそなのですが)、衝突の際にはものすごいエネルギーが小さい領域に集中します。その領域は、ビッグバンで宇宙が誕生した直後に近い高エネルギー状態になっていまして、現在の宇宙ではほとんど起こり得ないようなことが起こる可能性があります。

f:id:lhcatlasjapan:20120429213654p:image:w640

その中の一つに、「ヒッグス粒子が生まれる」というのがあります。「高エネルギー状態だとなんで粒子が生まれて、それが宇宙の誕生直後となんの関係があるの?そもそも高エネルギー状態ってなに??粒子が生まれるってどういうこと???」と頭上にはてなが飛び回るかもしれませんが、今はそういうものだと思っておいてください。とにかくエネルギーをつぎ込むためだけに、LHCはひたすら陽子を速く回すことに注力していて、現在のところ、そして今後何十年も引き続き、人類史上最高の高エネルギー状態を作る装置として活躍する予定です。

ヒッグス粒子についての説明はまた回を改めて書くことになりますが、私たちの身のまわりに転がってはいないヒッグス粒子というものがもしかしたらーそれだけ特殊な状況になったらーぽっと生み出されてしまったりするかもしれないわけです。

さて、ではそうやって生み出された(かもしれない)ヒッグス粒子を、どうやって「見る」のでしょうか?

実はヒッグス粒子というのはすごく不安定な粒子です。ごく短い間に他の粒子へ壊れていってしまいますので、例えば顕微鏡で見るなどということは出来ません。ですから、折角ヒッグス粒子ができたとしても、確かにできたとわかるのはとても難しいことなのです。

ではどうするかというと、「壊れた粒子」の方を見てあげて、その壊れ方の様子から「あ、ヒッグス粒子が壊れたようだな」と推定してあげます。

f:id:lhcatlasjapan:20120429232017p:image:w640

花瓶を想像してみてください。

花瓶をハンマーで横から殴るとバラバラに割れてしまいます。でも割れた破片から、もとが花瓶だったということはなんとなく分かります。破片を残らず集めてあげると、もとの花瓶の重さも分かります。壊れる前が複雑な絵柄だったとしても、破片を根気よく組み上げていけば再現できますね。破片の散らかり方をみれば、どんなハンマーで、どれだけ勢い良く、どの方向から叩いたか、といったことすらも推定できるかもしれません。

ヒッグス粒子の見つけ方も同じです。直接は見れなくとも、壊れ方や壊れて出来た粒子の様子を見れば、ヒッグス粒子の手がかりが見つかるのです。

とはいえ残念ながら、実際にはものすごく手のかかる解析作業が必要になります。そしてその解析をはじめるためには、なによりもまず「壊れた破片を残さず見つけること」が必要です。もちろん単に見つけるだけではなく、その壊れた破片の情報(何が、どのくらいの速さで、どの方向に飛んでいったのか?)というのを正確に調べて記録しなければいけません。これがまず第一です。

そのために作られたのが、「ATLASアトラス)」と呼ばれる巨大な検出装置です。

f:id:lhcatlasjapan:20120429213653j:image:w360:right

全長44m、太さ22m、重さ7000トンという、ビルのように大きなこの検出器は、陽子と陽子が衝突する点をぐるりと取り囲むように作られていて、衝突後に出来る粒子を捉えて記録していきます。極微の粒子を対象にした機械が逆に巨大になってしまうというのは、なんとも皮肉な話です。

ここでいう「粒子」というのは、どんな分子・原子よりも小さな「素粒子」のことを指すわけですが、そんなに小さいものを「目で見る」ことはまず不可能です。さらには崩壊して出来た粒子というのは通常光の速さと同じくらいの超高速で動いていますので、ゆっくり調べることも出来ません。

ではどうやって破片集めをしているのでしょうか?

ーーー人類の叡智が結集しているのはまさにこの点です!

「見えないものを見てやろう」というのは素粒子物理の発祥以来、最重要の課題の一つでした。そして百余年に渡る技術革新の末、様々な方法が編み出され、改良されてきました。素粒子物理学の歴史は、検出器の歴史といっても過言ではないでしょう。その集大成の一つが、私たちのATLAS検出器です。

この巨体には、様々な粒子を、その特性を生かして捉えてあげるような各種装置がぎっしりと詰まっています。

次回はまずその中の一つ、ガンマ(γ)線を捉える、電磁カロリメータから説明していきたいと思います。

(佐々木・山口)