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2009-10-14

LHC運転再開に向けてのCERNのメディア対応

| 19:01 |

KEK徳宿です。

LHC加速器の運転再開の準備が進んでいます。8月にこのブログでお伝えしたように、11月の中旬にビームの再入射。その後、加速をする前にまず入射エネルギー(ビームあたり0.45テラ電子ボルト、0.45TeV、4500億電子ボルト)のままで陽子陽子衝突を行います。

 その後ビームあたり3.5TeVまで加速して、衝突実験にはいります。この、世界最高エネルギーでの初衝突は12月中旬に起こる予定です。

以上の節目節目にCERNがどのようにメディアに報告するかの方針が今月示されました。 基本的には

http://press.web.cern.ch/press/lhc-first-physics/

ウェブページで現在の状況、スケジュールの最新情報を得ることができます。

その中でスケジュールのページに書いてある重要な点を上げておきます。

1.ビーム再入射、入射エネルギーでの衝突、ビーム加速でこれまでの最高記録である米国フェルミ研究所のテバトロンの記録(1TeV)をぬいた時、及び3.5TeVを達成したとき:

  これらの時には、プレスリリースの発表という形で行います。上記Webを常時見ていれば情報が現れるはずです。

2. 3.5TeVでの陽子・陽子衝突に際して。

  衝突開始までには非常に複雑な作業がありますので、いつ衝突が起こるかを正確に決めることはできません。衝突の2週間前ぐらいに、どの期間に行うかのアナウンスをした後、実際の衝突時間が決まるのはその1,2日前ということになると想定しています。また、それでも予定通りに進むかはわからないので、来訪するメディアは準備も含めて数日待機するという体制が必要です。

 そのような条件で、CERNはメディアの来訪を受け付けます。昨年9月10日の時と同様に、LHC加速器のコントロールルームへ報道陣を受け入れるかもしれません。しかし、狭いスペースですので、非常に限定されたものになりそうです。このため、来訪希望のメディアは10月23日までに登録をする必要があります。登録は上記ウェブページのなかのaccreditationをクリックしてください。


10月13日現在で、LHCの加速器超伝導磁石ヘリウム温度以下に冷やされています。8つのセクターの内6つのセクターでは動作温度の絶対温度1.9Kまで達しており、2セクターでは既に通電テストが始まっています。

 私たち実験グループも維持補修がおわり、宇宙線を使ったテストを繰り返しています。衝突実験の始まりへ向けて準備が整っています。

    徳宿

2009-08-20

LHC再開スケジュールのアップデート

| 02:08 |

 
 KEKの徳宿です。
 夏休みを取っていたので書き込みが遅くなりましたが、8月6日CERNプレスリリースを行い、LHCの再開スケジュールを発表しました。2009年11月にビームの入射を再開して、まず、入射エネルギーで衝突をテストを行ったあと、それぞれのビームを設計値の半分の3.5TeV(3兆5000億電子ボルト)まで加速して衝突させ実験を始めるという内容です。詳しくはプレスリリースの原文及び日本語訳を参照してください。どちらもATLAS日本の研究者向けホームページ理事会等報告ページからたどることができます。

ビームの入射を始めてから衝突にこぎつけるには約1ヶ月ぐらいの加速器の調整が必要と考えられていますので、今年中に何とか3.5TeV+3.5TeVでの衝突実験を始められるのではないかとわくわくしています。ヨーロッパは冬の電気代が高いので、CERNも11月には加速器の運転をやめるのが通常なのですが、今年は少しでも遅れを取り戻そうと、クリスマス時期にちょっと休みを取るだけで運転を続けて行きます。

このブログで前にLHCのスケジュールの話を書いたのは2月12日と大分前になります。いったいどうなっているのかと不思議に思っておられた方もたくさんあるのではないかと思いますので、長くなりますが少し経過を書いていきます。

昨年9月に起ったヘリウム大量流出事故が起こり、計画が一時ストップしているわけです。しかし、その損傷を受けた場所の修理自体はは順調に進みました。39台の超伝導双極磁石、14台の四重極磁石等を交換しましたが、この修理は6月までには完了しました。この分はほぼ昨年12月にたてた予定通りに進みました。

しかし、2月の時にも書いたとおり、このような事故が二度と起らないようにするために、二つの重要な対策を取る必要がありました。一つは、事故の初期要因(超伝導が破れた線材に過剰な電流が流れて線材が切れてしまう。)が起らないようにすることで、もう一つは万が一起ってしまった場合にも被害を最小限にくいとめる対策を取ることです。両方に対して何をどれだけやれば充分であるかを考え、議論し、実行に移すといういうのを短期間に詰めなくてはなりませんでした。いろいろな視点からチェックする必要のある項目がたくさん出てきて、きちんとしたスケジュールを言うことができなかった状態でした。(しかし状況は常に報告されており、それは先に挙げた理事会の報告を見れば、3月、6月の状況を詳しく見ることができます。) 8月上旬に最後の情報(あとで述べるように銅接続部の抵抗値分布)がわかり、現在ヘリウム温度に冷やしている加速器部分(セクター)を暖め直す必要が無いとわかったので、今回の発表になりました。

もう一つ、7月初旬に「新たなヘリウム漏れ」のニュースを聞いた人があるかもしれません。これは昨年9月に起ったような事故とは全く異なり、単なるヘリウムの接続部からの微小な漏れで、私たちはあまり気にしていません。ただし、その補修のためには部分的に常温に戻さないといけないので、これによりそれまでは9月には再開と思っていたのが2ヶ月ずれ込んで11月になってしまいました。その時点でブログで報告しなかったのは、銅の接続部の抵抗分布がスケジュールを左右する一番の鍵で、その結果が近々出る状況であったので、軽微な方だけ取り上げてもしょうがないと判断したためです。抵抗分布の方はこのまま3.5TeVでの衝突を行うのに支障ないという結果になったため、結果的にはこのヘリウム漏れの遅れが一番効いてしまいましたが、これは私たちにはうれしい方向に事態が転がったと思っています。

さて、「銅の接続部の抵抗」という、わけのわからないものを話に出していますが、いよいよそれについて説明していきます。でもそのまえに、まず超伝導線の接続抵抗の話からします。それが9月の事故の第一要因だったと考えられていますので。

LHCに使われている超伝導磁石はたくさんあります。例えばビームを曲げて27kmの周回軌道にするための双極磁石は、一つ一つが長さ14mという大きな物ですが、それが全部で1232台あります。磁石はグループにまとめられて直列につないで電流を流します。ということで隣同士の磁石から出てきた超伝導線同士をつながないといけません。その接続部は、(結構、複雑なのですが単純化して言ってしまえば)両方の磁石から出てきた平たい板のようになった超伝導線同士を重ねて半田づけしてあります。

9月の事故は、その接続がうまくいっていないところがあって、接続抵抗が高く、電流をどんどん増して行ったときにそこからの発熱で超伝導が破れ(「クエンチ」といいます)、それでも電流をすぐに切ることができなかったために接続部が熔け、そこから放電が起きて真空を保つ壁に穴が開き、大量のヘリウム流出になりました。

したがって、類似の事故を起こさないためには、すべての超伝導線の接続部の抵抗をもう一度測定し直し、悪いところがあったらやり直す必要がありました。この抵抗はナノオーム(10億分の1オーム)と非常に微小なのでこれをLHC加速器に設置された状態で測定するのは簡単ではありません。「クエンチ」を検出する回路を改良して、これができるようになりました。すべての超伝導線の接続部の抵抗の測定は昨年12月には完了し数ヶ所疑わしい接続があったので交換しました。(話をややこしくすると、見つかった「疑わしい接続」は結局磁石間の接続ではなく、磁石内部の接続でした。つまり、磁石の中で超伝導線を継ぎ足している所もあるのです。)

これで、事故の第一要因は取り除いたことになるかというと、実はこれだけでは不十分であることが指摘されました。それでようやく銅の接続抵抗の話になります。上の接続抵抗の検査により超伝導線がすべてきちんと接続されていることがわかりました。でも、超伝導磁石では、クエンチは(それほど頻度はないですが)いつでもどこでも起ると想定していないといけません。例えば、LHCのビームの一部が磁石に当たったりした場合にもビームのエネルギーが熱にかわり、温度が上がって超伝導が破れます。そのときにはどうすればいいでしょうか?

このクエンチが起ったときに電流を徐々に落として超伝導線が熔けない用にクエンチ防護システムが作られています。ここで、徐々に落とす間に超伝導線を保護するのがその周りを囲んでいる銅の安定材なのです。超伝導線が超伝導状態の時にはすべての電流がそこを流れます。しかしクエンチして超伝導線が抵抗を持ち始めると、それを囲んだ(超伝導でない)銅の部分により多くの電流が流れます。これにより線材の温度上昇を抑えることができます。クエンチが起ったときにどのぐらいの時間をかけて電流を0に落とせるかによって、銅の厚みを変えないといけません。早く0に落とせるなら周りの銅は少なくても大丈夫です。

さて問題は、磁石間の接続部では、この周りの銅も切れていて、それをつながないといけないわけです。もし接続部で(超伝導体はきちんとつながっていても)周りの銅が切れていたりすると、そこの部分では電流は超伝導線を流れることになり、超伝導線が溶けてしまう可能性が出てきます。従って、接続部では超伝導線だけでなく、周りの銅の安定材もきちんと接続していないと、昨年9月の事故と類似の事故が起る可能性が出てしまいます。(ただし、9月の事故との大きな違いは、9月の場合は超伝導線の接続なので、電流をある値に以上にすると必ず事故が起るのに対して、銅の接続の場合は「もしその近くでクエンチを起こした場合」だけに問題になります。とはいえ、だからといってほっとくわけにはいきません。)

銅の接続抵抗を計るのは実は単純ではありません。接続抵抗はマイクロオームと超伝導線の接続より1000倍大きいのですが、磁石が冷えていて超伝導線の抵抗が0の状態では銅の部分の抵抗は計れないのです。

LHC全体の磁石の内、半分(4セクター)は常温に戻っていました。この部分については6月までにすべての接続の測定を終えました。悪いところが何個かみつかったのでそれは接続をやり直しました。問題は残り半数の4セクター分の超伝導状態の磁石です。これらを常温に上げて測定すると、温度の上げ下げに時間がかかるためさらに3ヶ月は再開が遅れます。だからこの測定が、LHC再開時期を決める上で最大の要素になっていたのです。結局、ちょっと温度を上げて(絶対温度で80度)超伝導状態で無くなった状態で計る方法を採用しました。しかし、超伝導はやぶれても、金属は低温では抵抗はどんどん小さくなるので、接続抵抗を精度よく計るのは難しい作業です。

まず6月に一つのセクターで測定を行いました。1ヶ所疑わしい接続が見つかりました。しかし、低温での測定は難しいので、本当に思ったとおりの精度で測定できているか確認する必要がありました。このためこのセクターを暖めて常温に戻し、常温での測定と比較することにしました。その結果が7月上旬にわかり、精度が確認できました。これで、残りの3セクターは低温で測定すればいいことになりました。でも、ここで非常に悪い接続が見つかった場合は、そのセクターを常温に上げて修理しなくてはならず、3ヶ月の遅れになります。測定結果が出るのを、実験グループみんなが心配しながら待っていました。

8月初めに3セクターの測定が終わり、その結果3.5TeVのエネルギーであればこれらの3セクターのすべての銅の接続は十分に安全な抵抗範囲にあると言うことがわかり今回のスケジュール発表になりました。

なおこの測定をするに当たって、絶対温度80度まで温度を上げる作業を行っているところで上記の軽微のヘリウム流出事故が起きました。

以上が、2月から報告をしてこなかった弁明ですが、なかなか発表できなかったのもしょうがないとサポートしていただけるでしょうか?もっと詳しい話を絵付でみたいという人は(英語になりますが)CERN加速器の総責任者のSteve Myers氏がCERNで行ったセミナースライドとビデオをご覧ください。いずれにしても、LHC及びそこでの実験で起っていることは、このブログでこれからもきちんと報告していきたいと思います。

 本当は、もう一つの対策、つまり、事故が起らないようにしても、万一起ってしまった場合に被害を最小限にする対策に関しても話さないといけないのですが、すでにかなり長くなってしまったので、それはまたの機会にします。理事会の報告にはその辺もちゃんと書いてありますので、待てない人はそちらを見てください。


 

2009-02-12

LHC再開のスケジュール

| 02:08 |

KEKの徳宿です。

先週・今週とCERNからプレスリリースが出て、LHC運転の再開スケジュールが更新されました。

2月の第1週に、CERN近辺で山岳観光地としても名高いシャモニーに加速器研究者が集まり、LHCの運転再開にむけていろいろな側面での議論が行われました。その結果を受けて2月9日に、CERNの新所長ロルフ-ディーター ホイヤー氏が最終決定を行いました。

昨年12月の理事会で示された予定では、「7月始めには加速器全体が再び冷却される」となっていましたが、それからは遅れ、今年の9 月末にLHC の最初のビームを出し、10 月後半に衝突をさせるという予定になりました。エネルギーは各ビームが5TeVで、つまり重心エネルギーは10TeVになると考えられます。(ただし、2番目のプレスリリースではこの数字は書かれていません。)

 予定を遅らせる主な要因は、昨年の9月のような事故が起こらないように監視装置を大幅に改善させるためと、万一事故が起こっても昨年のような大きな被害が起こらないように、圧力を下げるための安全バルブをたくさん設置するためです。既存の場所に安全バルブを増やすのは磁石を冷却した状態で行うことができます(第一段階)。これだけでも事故が起こった場合の被害を大きく軽減できます。ただし完璧にするためには、すべての双極磁石付近に安全バルブをつける必要があり、この作業のためには各セクターを一度室温に暖めなければいけないため、時間がかかります(第二段階)。2009年の秋までにはすべてのセクターで第一段階を行った上で、8つのセクターのうち4セクターには第二段階まで行うことにしています。

 ヨーロッパは冬に電気代が高くなるので、通常は冬には加速器を運転しないのですが、今年の冬は、クリスマスの期間にちょっと止めるだけで連続運転を行う予定にしています。これによって、いろいろな物理の結果を出すのに必要なデータを2010年末までにとれると期待しています。

 今回のスケジュールは安全性を最優先事項としつつ、できるだけ物理成果を早期に出せるようにと配慮をした計画といえます。

 詳しい内容はプレスリリース本文をご覧ください(プレスリリース1プレスリリース2)日本語訳をつけたバージョンもこちらからとれるようにしてあります。(訳1訳2)。

 実験をする側の私たちも、10月に向けて測定器を最良の状態に持って行くように調整をしていきます。また、実験が始まると1年近い長丁場になります。その間に加速器の性能がどんどん上がっていくと考えられますので、急に輝度が増えても、きちんと重要なデータを取りこぼすことがないように、きちんと計画を立てていかないといけません。

2008-12-20

CERN理事会とLHCの予定に関して

| 18:35 |

2008年12月12 日にCERN理事会がありました。CERNのメンバー国の代表が集まる会議で年に3回開かれます。日本はオブザーバー国として公開セッションなどの限られた会議に出席・発言できます。
 理事会ではLyn Evans LHC Project Leaderから、LHCの現状と今後の予定の報告がありました。それらを簡単に紹介します。
理事会に先立ち、事故の原因と対策に関しての詳しいレポートが発表されていますので詳しくはそちらを参考にしてください。和訳もこちらからとれます。この報告と理事会での口頭報告の両方の情報をもとに簡単にまとめます。

?9月10日LHCビーム初周回が成功した時点で、8つのLHCセクターのうち、7つのセクターは5TeVまでの運転が可能なことが確認できており、残りの一つ(セクター34)は4TeVまでの運転が可能であることが確認できていた。
?10日の初周回は非常に迅速に達成できた。さらに翌日には高周波によるビーム捕捉にも成功した。計算器でのシミュレーションと実測値もよくあっておりLHCが優れた完成度で建設できていることを示した。
?ビーム衝突の準備をしていたところで、トランスの故障がおき、その交換のために数日ビームを出せないことになった。この機会を利用して残りのセクター34の5TeV運転へのコミッショニングを行っていたところ9月19日にヘリウムの多量流出問題が起こった。
?故障の第一原因は、二つの磁石間での超伝導線の接合部にごくわずかの抵抗があり、大電流に伴い加熱し温度が上昇して超伝導状態が破れることにあった。その際に発生した高電圧により、真空容器との間にアーク放電が起き、これにより穴が開いて真空容器内に急激に多量のヘリウムが流出した。電気的なクエンチ保護回路等は、設計通り作動した。
?ヘリウムの流出により、真空容器内の圧力が急激に上がった、減圧の排気バルブは存在したが、想定外の多量流出には不十分で、内部圧力が4-5気圧に達したと思われる。これにより真空隔壁が破れ、その隔壁を装備した磁石が大きく動いた。第一原因より、この高圧力による二次被害が大きくなった。被害の状況写真は12月5日のCERNのプレスリリースに載っています。
?接合部の抵抗値を検査する手法を開発し、残りのセクターを検査した。問題のある接合部は見つかっていない。2台の磁石で内部に接合で若干の抵抗を示すものがあった。これまでの励磁試験では問題が起こっていないが、取り出して調べる。
?今後同様の問題が起こらないように対策方針を決めた。まず通電中に接合部の抵抗を直接測定するためのモニター回路を取り付ける。さらに、ヘリウム流出が起こった場合に容器内の圧力を下げるために、解放バルブの増設を行う。前者が接続異常をいち早く検出してヘリウム流出に至る前にLHCを安全な状態に戻すための対策であり、後者は万が一流出が起こっても大きな二次災害を起こさないようにする対策である。
?問題のあったセクター34からは、39台の双極磁石と14台のショート・ストーレート・セクション(SSS)を搬出して修理を行う。12月末までに47台を搬出し、残りの6台は1月初めに搬出する。一方で予備を使って12月中に4台の双極磁石の再設置が予定されている。
?真空隔壁を備えたSSSをトンネルに固定するコンクリートのアンカーの補強を12月中に行う。
?3月末までにはセクター34のすべての磁石をトンネルに再配置する。6月末までには冷却を完了させ、LHCへの入射を始められるようにする。このスケジュールでの仕事表ができており、交換部品、マンパワー等の目処も付いている。
?これらの報告をもとに理事会において、LHCの進め方に対する議論を行った。既に議論がされた、SPC (Science Policy Committee)およびFinance Committeeの委員長よりコメントがあり、両委員会とも、LHC加速器が非常に優れた加速器であることを確認し、困難な状況で迅速な問題解決にあたっている現執行部を支持することを表明した。また、SPCは、MAC(Machine Advisory Committee)の意見にある、加速器の新しいクエンチ保護システムに関して、外部専門家の意見を聞く機会を設ける件を支持した。またFCはLHCの補修にかかる費用に関して、CERNの物品費からの支出での見通しを述べた。また現所長、および次期所長ともに、早期に対応策をたてて来た現チームを賞賛した。非常に忙しいスケジュールで無理に急ぐことはしないが、来年に衝突実験ができると確信していると述べた。理事会も今後の方針を了承した。

理事会に関してはCERNからもプレスリリースが出ています。また、これまでの理事会の日本語報告はこちらに載せてあります。

10月19日のような大量放出事故が起こらないように、また問題が万一起こっても今回のような大きな被害がないように対策を立てつつあります。大きな問題が起こって、なかなか心理的にもきついところで、原因の究明に真摯に取り組み、改善方針を定め、実行にうつしていくというのは非常に大変なことだと思います。
 Evans氏を中心と下LHCのチームが、最高のチームであることを理事会は確信しました。

 ビームの入射が始まるのが早くても7月になるので、初めての衝突は夏以降になります。丁度1年遅れた感じですが、実験グループも測定器をより完璧にもっていくように調整しています。

    徳宿

2008-10-04

LHC落成式典を10月21日に開催

| 17:46 |


 10月2日のCERNのプレスリリースに出ましたが、LHCの落成記念式典が10月21日に行われます。

 9月10日LHCでのビーム初周回を見事に成功させ華々しくスタートアップしましたが、19日に8つの加速器のセクターのうちの一つに問題が起こり、現在運転を停止しているのは前の報告に書いた通りです。

「問題発生のタイミングが悪く落胆するところもあるが、これまでの20年以上もかけて進めてきたプロジェクトにおいて2か月の遅れはそれほど大きなものとは考えません。要するに最先端の知識と技術を使って進めようとする実験物理の宿命みたいなものです。」とエマーCERN所長はプレスリリースの中で述べています。
 
また、10月3日に行われたCERN職員へのスピーチのなかでも、エマー所長は「ビームの初周回を予定通り成功させたことは、これまでの長い間苦労して進めてきたLHCおよびその前段加速器を含めたCERNの複合加速器施設の技術の高さを示したもの」で、「10月21日に予定通り落成式典を行うことは大変重要であり、CERNの理事会メンバーも強くサポートしている。」と述べていました。

19日のトラブルに関しては、「問題のあった部分を今室温に上げているところであり、本格的な原因究明はこれからである。状況がわかり次第随時公表していく」とのことです。「日本の高エネルギー加速器研究機構を含めて、世界中の研究所や研究者から、励ましとサポートのメッセージをもらっており、大変ありがたい。」とも述べておりました。(スピーチはフランス語で行われ、ちょっと怪しげな英語の同時通訳を聞いてのメモなので、話したことを厳密にお伝えできていないとはおもいますが)

 10月21日の式典への参加者は招待者のみです。関連各国の要人も多数参加します。式典の詳しい内容はhttp://lhc2008.web.cern.ch/LHC2008/で紹介されますし、インターネットを通して当日画像配信もされる予定です。

                 KEK 徳宿