Rubbish diary このページをアンテナに追加 RSSフィード

2014-11-19

データの見えざる手

現在、長期休暇中で無駄に時間がある。ので、最近読んだ本の書評を。

HONZの”ノンフィクションはこれを読め”で紹介されており面白そうだったので購入。

ノンフィクションはこれを読め! 2013 - HONZが選んだ110冊

理系のバックグラウンドがある人にとっては非常に読みやすく、没頭して2,3時間くらいで一気に読める。今年読んだ本でベストに入るかもしれないくらいのめり込んで読んだ。

著者は日立製作所中央研究所でビッグデータに関する研究をしている。本書では、ウェアラブルデバイスを用いて長期間に渡り人間の行動を集計・分析することで見えてきた法則について説明している。大きく分けて、人間としての法則、組織としての法則に関する研究に続いて、実際のビジネスでのビッグデータの活用について示してある。

人間・組織の法則

人間としての法則

人の手首にウェアラブルデバイスを着け、対象となる人の行動を継続的に記録することで、人の活動量に関する法則性を見つける。それは人の1日の活動は、より高い活動量を要する行動は出現頻度が低く、あまり活動量を要しない行動の方がよく出現するという分布が存在し、それにに従うものである。

当然、人により総活動量は異なるが、いくらTo do等で自分の行動を管理しようとも自分の意思では自由にならず、一日の中での高い活動量の出現頻度は分布に従うというものである。

本書ではその法則を熱方程式になぞらえて解明していく。説明も非常にわかり易く、読み進めることが非常に楽しくなる。

また、著者の研究ではないのだが、幸せ(ハピネス)に関する研究成果を紹介しておりそれが非常に興味深かった。

地道な研究の結果、幸せは、およそ半分は遺伝的に決まっていることが明らかになった。(中略)環境要因に含まれるものは広い。人間関係、お金、健康が全て含まれる。驚くべきことに、これら環境要因をすべて合わせても、幸せに対する影響は全体の10%にしか過ぎないのだ。(中略)それでは残り40%は何だろう。それは、日々の行動のちょっとした習慣や行動の選択の仕方によるというのだ。特に、自分から積極的に行動を起こしたかどうかが重要なのだ。自ら意図を持って何かを行うことで、人は幸福感を得る

遺伝的には自分は明らかに幸せになりにくい人な気がする。しかも、自分が10%しか影響しない環境要因を高めるために日々努力しているのではないか、という気がしてならない。

組織としての法則

著者は名札型のウェアラブルデバイスを用いて組織での人々の行動を記録・分析する。ありきたりな結論のような気もするが、組織でのいわゆる「親密さ」が高いほうが組織としてのパフォーマンスが高くなるという。

具体的には「休憩中の活発度(他者との会話など)が高い組織の方がパフォーマンスが上がる」、「社内で様々な人がよりつながっているほど組織としてパフォーマンスが高い」などである。

これは、なんとなくストーリーとしてそんな気もするが、本書の研究で統計的に証明されたことは非常に新鮮であった。自分はどちらかというと、「組織として仲がいいほうがいい」という主張に対しては懐疑的で、「個人の能力のが大事でしょ」くらいに思っていたが、このように科学的に証明されているということ大きな発見であった。

今後、働くにあたって、もう少し社内の人と繋がったり、会話を大事にしようと思う。チームで同じ部屋で仕事をしていてもイヤフォンを挿しながら仕事をするのではなく。。。

ビッグデータが意味すること

本書におけるビジネス・ケース

本書の後半では、実際にある店舗でのビッグデータの活用に関する事例について紹介している。具体的には、ある店舗で、顧客と従業員の行動を分析し、それをスーパーコンピュータで分析し、どんな要因が売上に寄与するかということを解明するというものである。実際に、それらの要因を元に店舗での店員の配置を変えると、小売の専門家がアドバイスをしたケースよりも売上が向上したという。

ビッグデータの分析で重要な事は”意味を見出さずに、そのままのデータをコンピュータに分析させる”ということだという。人間が仮説を立て、それをサポートするようなデータを集めるよりも、仮説を立てずにそのまま分析させた方がよい。実際に上記のケースでもなぜ店員の配置を変えることが売上に寄与するかは完全に説明できるものではないという。

コンサルティングビジネスに意味すること

コンサルという仕事ではあくまで仮説を立てて、それを分析することが非常に重要であるとされている。むしろ、仮説を立てずに分析を始めることは非効率で避けるべきこととされる。そして、戦略はストーリーを持つ必要がある。なぜ、その施策が効果的であるのか、どの程度の効果が見込めるのかということを説明できる必要がある。そこで始めて企業のマネジメントに対する提案としての要件を満たす。

ビッグデータを用いた分析では必ずしもストーリーが無くても良い。ただ、それは確実に効果が見込める施策につながる。

コンサルとしてビッグデータを使うということは、自分達のビジネスモデルを否定することになろうとしないか、とも思う。ただ、本書で紹介されている例では、あくまで店舗レベルの改善の話であり、やはり大局的な戦略というのはコンサルティングファームが唯一行えることなのだろうとも思う。

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