Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

「パンドラの匣」

 今日も休みにしていたので起きてからうちに泊まっていたalbionと新宿まで出た。彼はブート屋のAIRSで洋楽アーティストのブートもののDVDを購入した。店内には海外の有名アーティストの色紙と訪れた時の写真がたくさん飾ってあった。もはやいなくなったoasisのメンバーのものもあった。


 やっぱりノエルの私服はダサイと写真を見て思った。


 その後武道館でArctic Monkeysのライブに行く彼と別れてからテアトル新宿に向かった。冨永昌敬監督「パンドラの匣」を観に。生誕100周年となる太宰治の同名小説の映画化作品。




 富永監督の前作は「パビリオン山椒魚」でオダギリジョー香椎由宇が出会って結婚に至った作品でPVなども撮っている。


相対性理論「地獄先生」PV


 ↑このPVに出てるのは主人公の母役の洞口依子さんっぽいし、看護士、でも看護婦の方が呼び方は好きだけど彼女達の来ているナース服はたぶん「パンドラの匣」で看護婦(劇中では助手と呼ばれている)が着ているものに見える。


 監督・脚本・編集・冨永昌敬、音楽・菊地成孔、主演・染谷将太川上未映子仲里依紗窪塚洋介ふかわりょう、小田豊杉山彦々、KIKI、洞口依子ミッキー・カーチス
 あらすじ・結核を患う少年・ひばり(染谷将太)は終戦を機に、「健康道場」と称する風変わりな療養所に入所する。そこで出会う、気まぐれな看護婦・マア坊(仲里依紗)と、美人婦長の竹さん(川上未映子)、おかしな療養者たちとの日々。やがてひばりは生きる活力を取り戻していく――。


 観ようと思ったのは好きな俳優の窪塚洋介さんが出ていることと結核ものであるというぐらいの動機。昔好きだった子が結核で入院して隔離病棟に見舞いに行った記憶がけっこう鮮明というか隔離されるって・・・、かなり悲惨な事だというのを知っていたので興味があった。


 原作は生誕百周年でいくつかの作品が映画化されている太宰治。4回の自殺未遂に最期は愛人と入水心中するという、今で考えたらたいそうイタい人である、中二病的な人かしら。


 僕は原作を読まずに映画を観た。この映画のウリとしては芥川賞作家である川上未映子が演技をしているということは挙げられると思う。
 太宰は第一回および第二回の芥川賞候補で、第三回からは一度候補になった者は選考対象から外すという規定のため候補にもならず、三回の前には仇敵だった川端康成に選考懇願をしたほどだった。太宰が芥川龍之介を敬愛していたために芥川賞固執したと思われ、しかし一度も賞を取る事はなかった。


 だけども芥川賞を取って一気に注目を浴びた川上未映子がその太宰作品に出演という皮肉、入水心中したのは玉川上水玉川上水の中には「川上」という字が使われてたりもする、これは完全な僕のこじつけ。


 川上演じる「竹さん」は原作でも関西出身の人物で関西弁であり、監督・プロデューサーが彼女しかいないと。生誕百周年に合わして公開ということもあり彼女に断られたら映画化中断にするしかないと二人で言っていたらしい。


 主人公「ひばり」は染谷将太という子でかなり目つきがいい。なんか少しひねくれていそうなニヒルな感じが役的には似合ってた。彼らが過ごすここでは患者(ここでは塾生)や看護婦(ここでは助手)などは渾名で呼ばれている。


 富永監督と音楽担当の菊地さんの話でこの作品は元祖ブロガー的な要因があると語っている。原作は「ひばり」が友人の「君」に向けて書いた手紙で成り立っている。「君」からの返事は届くがそれは書かれずにそれに対しての返事として書く手紙が小説として書かれている。


 個人的な想いを、日々の出来事をひたすら書き続けるという辺りが「元祖ブロガー」的な部分だろう。ハンドルネーム代わりに渾名で呼ばれているのもそれを思わせる。


 助手と塾生にはいつも決まった挨拶がある。
「やっとるか」
「やっとるぞ」
「がんばれよ」
「よし来た」


 これが結核療養所なのに「健康道場」と呼ばれている空間をうまく違和感ないものにしているし、助手と塾生の関係をよいものに思わせる。


 「ひばり」という主人公にたいしてヒロインは「竹さん」と「マア坊」がいる。「マア坊」は仲里依紗が演じているが可愛い存在として「竹さん」と対照的な女性になっている。
 仲里依紗はなんだか少しふっくらした竹内結子(デビューして数年ぐらいの時の)を思わした、売れるよ、うん。でも「時をかける少女」の主人公の真琴の声や「ハルフウェイ」とかに出てた。


 「つくし」役の窪塚洋介さんはかなりいい味だったし役としてもおいしい感じの部分を持っていった感じ。数年前に「アイキャンフラ〜イ」と言ってた人物にはとても見えない、実生活で本当に飛ぶとは思わなかったけど。役者さんとして好きだし雰囲気が好きなので映画にはもっと出て欲しい。


 同室の「固パン」役のふかわりょうとかよかったな、人と人が話すシーンとかの間やテンポ、言葉遣いが面白くて何度か吹き出して笑った、まあ僕だけだったみたい、観客の年齢層がかんなり高かった。二十代三十代は五人ぐらいか、あとは中年というよりも老人に差し掛かる年齢の人が多いかった。太宰原作だからだろう。


 「ひばり」と「マア坊」が布団部屋でするやりとりというかなんとなく怪しげな雰囲気のシーンで「マア坊」の声が重なったり、裸電球が点いたり消えたりするのが実写「エヴァ」か?と思う感じで印象的だった。


 この映画始まって最初に違和感があるのは「声」だと思う。スクリーンに写る役者の声とスピーカーから流れる声になにか違和感がある。パンフを見るとこの作品はオールアフレコらしく、そのために最初に撮影現場で出した声が消され、のちに同じ人物によってアフレコされた声が重ねられているので違和感がある、すぐに慣れたけど。


 映画としては音楽もいいし、人物同士のやりとりも面白い。最後の終わり方は途中から予想できるんだけど、その終わり方が腑に落ちるのでいい。この映画けっこう面白かった、僕は好きなタイプ。前作「パビリオン山椒魚」みたいにアクロバティックなシュールさもないので観やすい。


 終わった後に原作と川上未映子「ヘヴン」を購入して家に帰って原作を読んだ。で「Life」が次回放送の「休日の哲学」予告編をpodcastで配信していたので聴きながら読書。
 僕の休日はこんなものですけどね。僕は休日は何かをする日とかどこか行く日とか誰かに会うとか決めた日を休むようにシフトを出しているのでなんにもしない休日はあんまりない。


次回10月25日(日)「休日の哲学」予告編
http://www.tbsradio.jp/life/2009/10/1025.html


 太宰原作を読み終わった感想はすごく上手い感じでこの作品を元に脚本を作ったんだなってこと。とくに窪塚君演じた「つくし」が映画化に関しては原作と違う。
 原作における「ひばり」が手紙を送っている「君」(同級生だった友人)と同室の「つくし」が合体して映画の「つくし」になっている。これがだいぶ脚本を物語の展開をよいものにしているし、ラストの終わり方に影響している。


 原作読んでからだと違和感が出るかもしれないが、読まずに映画観て原作読んだら映画の方が断然いい作品に思える。終わりの方で自分の想いを正直に語りだす「ひばり」の心情が映画の方が伝わる。


 原作には「人間は死に依って完成せられる。生きているうちは、みんな未完成だ。虫や小鳥は、生きてうごいているうちは完璧だが、死んだとたんに、ただの死骸だ。完成も未完成もない、ただの無に帰する。人間はそれに較べると、まるで逆である」とある。そりゃあ、自殺未遂四回するわ。


 albionが土産的なCDを持ってきてくれたのでiTunesに入れてシャッフルで今日歩いている時に聴いた。


Jemina Pearl - Selfish Heart & Heartbeats


Girls - "Lust For Life" (official video)



 劇場で観た予告「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の感じは、峯田君はわりと田西っぽいしよさげに観える。ただ問題はこの予告版で充分じゃねえかって内容でないことを祈るばかりだ。


 この作品に関しては原作が明らかに連載中止とかに思われる終わり方をしているのだが、内容的には連ドラとかでやる方が向いていると思う、テレ東の深夜ドラマとかで十回とか二クールぐらいで。


 作品の頭の青山との対決だけを描くなら映画二時間で足りると思うけど、この漫画にある痛さとか男と女とか性と生とかをみじめさとか弱さとかは青山との戦いの後にあると思う。
 青山のその後とかさ、あれ見て笑うやつとか人としてどうかと思うし、因果応報というかさ、いい漫画なんだけどなあ、テレ東深夜でやればいいのに。


映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』予告編


ボーイズ・オン・ザ・ラン〜終幕〜
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20080702

 ↑なぜか「ボーイズ・オン・ザ・ラン 最終回」とグーグルで検索すると僕のブログがトップにくる。


 予告で鳥肌が立ちっぱなしだったのは「東のエデン」劇場版1「The King of Eden」劇場版2「Paradise Lost」の時。リアルタイムでアニメを見ていたけどここまで当時代性を持った内容でありながら面白い作品だったし、この作品で語れる事がいっぱいありますね。ゼロ年代的な事柄と次のディケイドであるテン年代への希望と期待、あるいは不安を。



 「Life」のプロデューサーの黒幕氏に「東のエデン」劇場版1「The King of Eden」劇場版2「Paradise Lost」が劇場公開したら「charlieの「東のエデン論〜ゼロからテン年代の滝沢朗」」やりましょうと言ってみようかしら。


東のエデン」劇場版 予告


 「パンドラの匣」と言えば高二の時に見ていた野島伸司脚本「世紀末の詩」の第二話「パンドラの箱」での百瀬教授の台詞が未だに脳内にこびりついている。僕はなにしろ中二からの野島伸司信者であったために。ああ、今思うと僕の中二病野島伸司作品が引き金だったのか。


 野亜亘(ノア)と百瀬教授(モーゼ)の二人が主人公の野島脚本らしい寓話的な作品。野島ファンの中でも人気が一番ある作品。


「あなた、彼に何かした?」
「きのう、置き手紙があったそうです。“今までありがとう。ごめんなさい”と、それだけ」
「いや、それだけじゃない、彼女は」
「目医者と婚約したんだってな」
「ひどいじゃないですか。あんまりじゃないですか。・・・興梠さん、彼女を責めないで欲しいって。しかたないです、いい夢を見たと思ってあきらめますって。そう言って笑ってました」
「・・・おれの言ったとおりだろ。手術なんかやめときゃよかったんだ」
「いけないことでしょうか。愛する彼女の目が見えるようになって欲しい。自分と同じ景色を見せたい。そう思うことはいけないことでしょうか」
「現にそれと引きかえに愛を失った」
「人間は見ちゃいけないものがあるんです。互いに恋をし合うことはある。だが、愛し合うのは難しい。たとえば、夫婦をごらんなさい。恋をして結婚したかもしれない。しかし、いつしか熱が冷め、家族になったから愛に変わったと思う。ただ思うだけだ! 誰もが日々の暮らしに埋没して、愛があるのか確かめたりしないものです。確かめる人間がいるとしたら、必ず絶望するんです。その純粋さゆえに確かめ、愛などなかったと絶望する」
「そんなことはない!」
パンドラの箱には希望が残されたという。なぜ愛ではなく希望なんだ」
「愛などないと言うんですか。この世の中に愛などないと」


 月9が「月キュン」とか呼ぶ感じで新番組を始めたって僕は「やりすぎコージー」を録画しながら尚も見る、それが月曜の休みの日の過ごし方。



 COUNTDOWN JAPAN09/10第三弾アーティスト発表
 

12月28日(月)佐野元春People In The Boxa flood of circleユニコーン


12月29日(火)HYSEAMOBEAT CRUSADERSFoZZtone/Prague / Paymoney To my Pain


12月30日(水) Scars Borough/凛として時雨


12月31日(木)SCOOBIE DO /Superfly/sleepy.abdetroit7HALCALI


 って行くのが三十日だけなんだが凛として時雨かあ、リキッドでZAZEN BOYS×凛として時雨観たからなあ。凛として時雨が出るのは嬉しいんだけど、わがままは言わないようにしよう。


渋谷川の上でAsobi上がる昇り龍
http://d.hatena.ne.jp/likeaswimmingangel/20090901


 仲俣さんが編集長の『マガジン航』の一般公開が始まりました。
「海難記」ボイジャーの『マガジン航』創刊
http://d.hatena.ne.jp/solar/20091020

マガジン航」サイト
http://www.dotbook.jp/magazine-k/

パンドラの匣 (ぶんか社文庫)

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ヘヴン

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Break It Up

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ALBUM

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小説 東のエデン (ダ・ヴィンチブックス)

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世紀末の詩

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