須賀敦子のことば
須賀敦子の本を読んでいる。
私が近ごろ思ったり考えたりしていた、ほんとうに多くのことがらが、すでに彼女のことばで書かれていた。
ここまで、ことばがするすると身体に溶け込むように入ってくる感覚は久しぶりだ。
昔話の中に登場する彼女自身の年齢や立場が自分に近いせいもあってか、いつも以上に感情移入している。彼女の聡明さに憧れながら、ことばを自分の思考にひきつけるように解釈して読んでいるところがあるから、きをつけないといけない――
そんなことはどうでもいい。
私は嬉しいのだ。
秘密の仲間を見つけたような気がして、小躍りしたいくらい、あるいは泣き出しそうなくらい嬉しい。
しばらくは、物語と自分の距離をたしかめたり振り返ったりせずに、彼女のことばの海に潜ろう。
××××
昔話が物語になるまでの年月
再構築
発酵と熟成
においと温度の伝達