江藤淳は、私の親父と同世代。親父の本棚には「漱石とその時代」、「小林秀雄」、「一族再会」、「海舟余波」など多くの氏の著作があった。私自身は比較的最近になって文庫本で「海は甦る」と「南州残影」を読んだくらいで(山本権兵衛の評伝「海は甦る」は最高に面白い。)、氏の主要な業績も知らず、保守派論客といった程度の知識しかないのに、この手の本を何故手にとったのかというと、単にブックオフで105円で売っていたからというからに過ぎないのだが・・・。日常の時間と異なる夫妻の間に流れる「生と死の時間」を認識して、何と幸せな夫婦であったかと、すばらしい愛の形であったかと、目頭が熱くなる。
妻の死後半年ほどを経て、江藤淳はその後を追うようにして自裁する。氏の遺書「心身の不自由は進み、病苦は堪え難し。去る六月十日、脳梗塞の発作に遭いし以来の江藤淳は形骸に過ぎず。自ら処決して形骸を断ずる所以なり。乞う、諸君よ、これを諒とせられよ。」江藤の死に際しての、福田和也、吉本隆明、石原慎太郎による追悼文を併録。吉本隆明の追悼文にある江藤の遺書の「自己限定」についてを興味深く読む。
- 作者: 江藤淳
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/07
- メディア: 文庫
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