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lionusの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-08-12

[]心の宇宙〈6〉脳の情報表現をみる(機能局在論へ一石を投じる。) 心の宇宙〈6〉脳の情報表現をみる(機能局在論へ一石を投じる。)を含むブックマーク

何カ月か前に読んでいたのですが,忙しかったので思い出して書いてみます。

心の宇宙〈6〉脳の情報表現をみる (学術選書)

心の宇宙〈6〉脳の情報表現をみる (学術選書)

脳の情報表現の実体を探す時,脳のどの部分が活動しているかという「機能局在」やその総体である「機能地図」を探すことと混同されることが多い。言うまでもなく,脳のどこが強く活動しているかということは,脳のどのあたりで情報が表現されているかを示しているにすぎず,情報の実体を明示しているわけではない。

心の実体を見るということは,脳のどこが活動するかを知ることではなく,脳の活動により表現される情報の実体を検出することであり,同時に脳が情報を表現する方法を知ることである。そして,脳の情報伝達と情報処理を担う存在が,ニューロンとそれが縦横無尽につながった神経回路網である以上,それらニューロンの活動を多数かつ同時に記録し解析することこそ,情報表現の実体を検出する唯一の方法である。

これだけだと,ある特定の行動をしている時,脳のある部位がアクティブになっている→××は脳の○○という部位で処理されているという,前半の引用部分のようなアプローチとどこが違うのかまだ分かりにくいですね。
読み進めていくと,各ニューロンの活動の相関を調べることにより,脳の情報表現の実体に迫ることができるのだという主張が出てきます。

情報表現を担う協調的なニューロン集団が,あらかじめ特定の構造的つながりを持っているとは考えられない。

機能局在論への意義申し立て。*1なぜなら・・・

どのような情報表現が必要となるかは,あらかじめ予測できないし,必要となってから構造を作っていてはとうてい間に合わないからである。そもそも,あらかじめ固定された構造的つながりにのみ基づいていては,自由で柔軟で迅速な情報表現は不可能である。

門外漢のlionus猫には,なかなか難しい本だったのですが,多少なりとも教育に関わる人間として,以下引用部分はずっしりと心に響きました。少し長くなりますが一部略しながら引用します。

最近,遺伝子の研究が進むにつれ,それが持つゲノムさえ全てわかれば,一般の動植物はもちろん,人間の性格や心の働き方も全てわかってしまうと誤解している人達も多い。(中略)しかし先に述べたように,ニューロンが作る回路網の接続箇所(シナプス)はゲノムが表現できる情報量よりも遥かに多い。すなわち多くのシナプスが,出生後にさらされるさまざまな外部環境や多彩な経験により作られ,全体の回路網が整備されていく。心を生み出す神経回路網の多くは経験と環境により作られるのであり,だからこそ,全ての人に良好な経験と質の高い教育の機会を均等に与えることが,何よりも重要なのである。*2

[]大学生の学び・入門―大学での勉強は役に立つ!(自分の頭をつくるのは自分の日々の行動。) 大学生の学び・入門―大学での勉強は役に立つ!(自分の頭をつくるのは自分の日々の行動。)を含むブックマーク

mkawanoさんの3月31日の記事を読んで,自分も読んでみました。これも数か月前に読了したものです。

大学生の学び・入門―大学での勉強は役に立つ! (有斐閣アルマ)

大学生の学び・入門―大学での勉強は役に立つ! (有斐閣アルマ)

大学でいかに過ごすべきかということについての意見と具体的行動のアドバイスです。mkawanoさんの記事で目次が挙げられていますので,内容についてはそちらを参照ください。

授業にただ出るだけで,将来必要だと思われる知識が得られたり,そこで教えられることが将来につながると感じたりするようになるというのは傲慢なのである。

どひゃー。溝上先生,バッサリ。

大学での勉強が将来に役立つ,つながると感じられるようになるためには,日常生活のなかでの不断の努力と習慣化が必要なのである。何を努力し習慣化するのか,それは,自分は何に興味,関心があって,それについて何を考えていて,何を知っていて何を知らないのか,そういう思考の習慣と知識の習得である。

本書は,溝上先生が所属されている,京都大学の学生との経験を基に書かれた部分も大きいようですが,別にこのことは,京大のような「優秀」な学生さんがおられる大学以外にも応用可能なことであると思います。
まず自分を知ることですね。
ちょっと前,Tせんせいが自分の担当されている授業での学生のコメントペーパーについて,あれこれlionus相手に話をされた時のことを思い出しました。確か,話題のひとつになっていた学生の質問は「人生で最も重要なことは何か」みたいなんだったと思うのですが,それに対してTせんせいは

身の程を知ること

と,答えたということです。
すごく圧縮された言い方で,少し時間が経った後でも,Tせんせいの学生はこの真意は分かっているのかなあとlionusは思っています。大学生対象には溝上先生のような説き方が適切かもしれないですね。
・・・
で,自分を知ってからどうするということもさらに重要です。

大学以降社会に出てから問われるのは,自分の頭である。それは残念ながら,ただ授業を受けるだけでつくられる類のものではなく,日常生活のなかでそうした思考の習慣や知識の習得を主体的に心がけることでしかつくられない類のものである。

どんなにすばらしい授業をする名教師であっても,どんなに世話好きな人であっても,日常生活のなかでの個人の頭のつくり方にまで踏み込むことはできない。それは,個人が自覚的に日常生活のなかでつくっていくしかないものである。

第2部の「行動編」では,具体的な数々の提案がなされています。
大学生だけではなく,lionus猫にも大変有難く拝読できる内容です。

[]テキストマイニング入門―経営研究での活用法 (Clementineが使えればなあ。) テキストマイニング入門―経営研究での活用法 (Clementineが使えればなあ。)を含むブックマーク

経営研究にデータマイニング,特にテキストマイニング手法適用するための参考書です。
なかなか類書はないと思う上に,著者本人の研究内容を例に書かれているので,研究者としての立場から参考にできる点が多々あると思います。
特に,日経新聞に長く連載されている「私の履歴書」の分析は,lionusもいつかやってみたいなあと思う題材だったので,非常に興味深く読みました。
でも,これを読んですぐに自分もテキストマイニングを使えるかっていうとそうじゃないだろーなと思いました。
大変高価なマイニングツールを使った手引きになっているので,それが使えるような環境(境遇)でないとちょっと参考にできない内容が多いのです。
しかし,従来内容分析と呼ばれていた研究手法テキストマイニング代替できないかというアプローチを知るには日本語で読める格好の書であると思います。

*1:もちろん,全否定ではありませんが

*2:太字はlionusによる。