創世記43章・約束の地の最良の産物についての記述は正確ですか

 ヤコブは、エジプトに息子たちを派遣して食物を買いにいかせる際に、贈り物として次のようなカナンの地の最良の産物を持っていくようにと言いました。「少しのバルサム、少しの蜜、ラダナムゴムとやに質の樹脂、ピスタチオの実とアーモンドを。」(創世記43:11)

 
 それは、どんなものでしょうか。パレスチナ地方では、本当にそのような産物が取れたのでしょうか。それは今日でもパレスチナ地方で取れますか。


                            バルサムと蜜 
 
 バルサムとは何でしょうか。バルサムという語は,特定の木ではなく、芳香性の,油状またやに質の物質を生じさせるモミ,トウヒ,ポプラなどの多くの低木や高木に当てはまります。その樹脂は香料としてまた医療に用いられます。


 しかし、エレミヤは傷をいやす働きのある「ギレアデのバルサムbalsam in Gilead」について特に言及しました。(エレミヤ8:22; 46:1)ギレアデの「バルサム」はヘブライ語でツォリー、またはボーセムと言います。このギレアデのバルサムがどの木であるかを明確に同定することはできません。


 しかし、wikiには、アラビア南部原産のメッカのバルサムがギレアデのバルサムであるという記述があります。メッカのバルサムの木は,Commiphora opobalsamumもしくは,Commiphora gileadensisと呼ばれる,低木のような常緑樹です。そして、古代でも近代でもユダで見られ、最も有名な産地はエンゲディというユダヤ人の町であると記載されています。




Balm of Gilead by wallygrom (balm of Gilead)
ギレアデのバルサムの考えられている低木




 聖書にはシバの女王がソロモンにバルサムを贈り物として携えてきたと記録されているので、アラビアのバルサムが聖書に出てくるバルサムであると考えても決しておかしくありません。(列王第一10:2)その木は、茎や枝に切り込みを入れることにより,緑がかった黄色の油状のやにが採集され,後から樹液が集められます。


 ユダヤ人の歴史家ヨセフスは,ソロモンの時代にバルサムがエリコの周辺で栽培されていたことを示しており,ギリシャ人の地理学者ストラボンは,ローマ時代にガリラヤ湖のそばでも栽培されていたことを記録しています。


 ギレアデのバルサム・ツォリーは乳香の木(Pistacia lentiscu)のことではないだろうかと言う人もいます。この木は乳香(frankincense)と呼ばれる香りのよい薄黄色の樹脂を生み出します。樹皮,葉,および実からは医薬として用いられる油が採れます。この木は、パレスチナではどこにでもあります。(ソロモンの歌3:9;4:14)



Frankincense Tree by HitchChic(frankincense2)



Anacardiaceae - Pistacia lentiscus by Ettore Balocchi (Pistacialentiscus1)
ギレアデのパルサムは乳香の木だと考える人もいます



 ギレアデのバルサムが何であれ、パレスチナ地方とアラビアには確かに、バルサムが古代から現代に至るまで産出されています。


 蜂蜜に関しては、JICAはパレスチナ地方で、蜂蜜を生産する援助のプロジェクトをしているということです。



                    ラダナムゴム(labdanum)


 次に、ラダナムゴム(Labdanum)とは何でしょうか。ラダナムゴムとは地中海地方から中東にかけて生息する低木ハンニチバナ科ゴジアオイ属の植物の葉や樹皮からとれる天然ゴム 樹脂のことです。野ばらに似た花を咲かせます。その樹脂は黒か褐色、緑色をしています。そこから170種類の精油成分が含まれているエッセンシャルオイル(精油)が取れます。強い芳香を持ちます。


  アロマセラピーに使われます。別名「シスタス」(cistus)または「ロックローズ(rockrose)」とも言います。



Cistus monspeliensis by wallygrom (cistus2)
シスタスからラダナムゴムという樹脂が取れそこから精油が取れます




Rock Roses by mikecogh (rockrose2)
シスタスは別名ロックローズとも言われます



 シスタスには、強い抗菌・抗感染・抗ウイルス作用があり、血液凝固作用、細胞の免疫系の強化を期待でき、リンパの流れをよくし、炎症を抑えるとされています。それで、風邪、気管支炎、鼻炎によく、一部の癌にも効果があるとされています。スキンケアでは、「若返り」、「シミやシワ消し」に有効であることで有名だということです。



 イスラエルガリラヤ地方、カルメル山、その他の丘陵は自然の森に覆われており、ハンニチバナ科のゴジアオイが一面に咲き乱れると、イスラエルについて調査したPDF105pに記載されていました。


イスラエルの情報


 ですから、今日でもラバダムゴムを産するハンニチバナ科のゴジアオイはパレスチナ地方に生息しています。

               
                         ピスタチオとアーモンド
 

 ピスタチオやアーモンドはパレスチナに見られるのでしょうか。上記の同じPDFイスラエルの情報には、ネゲブの高地では、水の枯れた谷に沿って大量のアトランティク・ピスタチオが大規模に根を生やしていると記載されています。また、イスラエルのネタニヤフ首相もピスタチオのアイスクリームが大好きで、エルサレム市内のアイスクリーム店グリダー・メトゥデラで大量に買っていると報道されていました。


ネタニヤフ首相の好みはピスタチオ・バニラ 2013.2.17

 
 また、イスラエル国内では、アーモンドの花が日常咲いているようです。パレスチナ地方ではアーモンドの青い実、即ち種子は塩漬けにして食用とされるそうです。 


 また、パレスチナ地方では、バクラワというピスタチオ・アーモンドなどのナッツをパイ生地に包んで焼き、蜂蜜や砂糖のシロップをかけた甘いお菓子が食されています。それで、ピスタチオやアーモンドは今日でも、パレスチナ地方に普通に見られ、日常人々に食されています。




Baklawas by Rafel Miro (baklawa)
パレスチナではバクラワというピスタチオやアーモンドを使った甘いお菓子が食べられています

       

 約束の地は良い植物や産物が存在するところですが、今日戦争や紛争によって損なわれているのは残念なことです。しかし、族長ヤコブの時代の約束の地の最良の産物が、今でもパレスチナ地方にそのまま見られます。創世記の記述は架空の話ではなく、実際の場所と実際の状況に結び付いた話が記載されているのです。約束の地に関する創世記の描写は正確なものです。