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「突然炎のごとく」★★★★

 オーストリア人のジュールとフランス人のジムはパリで出会い、文学の話で即座に意気投合した。そこに現れたのは、彫刻そっくりな顔立ちのカトリーヌ(ジャンヌ・モロー)が現れる。カトリーヌはしばしば奔放で突拍子のない行動をとる女性だった。ジュールはカトリーヌに惚れ込み、2人は一緒になる。

 その後、ジュールとジムは大戦でばらばらに闘うことになるが、やがて戦争が終わると、ジムは山小屋に暮らすジュールとカトリーヌを訪ねた。2人の間には娘も生まれていた。

 カトリーヌの交友関係は相変わらず奔放で、近所に住む別の男と浮気をしつつ、ジムとも深い関係になっていく。ジュールもジムとカトリーヌの関係を公認し、3人は奇妙な同棲生活をする。こうして、しばしば、カトリーヌは3人の男たちと一緒の時間を過ごすのだった。

 やがてジムはパリに戻ることに。カトリーヌとの別れ際に2人はベッドを共にするが、カトリーヌから手紙が来て、子供がお腹に宿ったことを知らされる。ジムは自分の子であることを疑っていたが、カトリーヌは結局流産してしまう。

 カトリーヌはその後もジムを呼び出す。ジムは別の女性との結婚を決めていたので、カトリーヌに説明すると、ピストルを取り出すこともあった。そして、カトリーヌとジム、ジュールの3人は車でドライブに。カトリーヌはジムに話があると車に乗り込ませる。カトリーヌが運転す車は、ジムを乗せたまま、湖に突っ込んでいった。。。

 原題は「ジムとジュール」だそうです。

 3人の男たちに囲まれたカトリーヌに対して、男たちが嫉妬心をそれほど表に出しておらず、ジュールとジムの友情が維持されていることについては、違和感がないわけではありませんし、カトリーヌの振る舞いには決して共感を抱けないのですが、男たちを振り回すカトリーヌのキャラクターは何ともシュールで、さばさばとした表情でジムに執拗に付きまとうカトリーヌの振る舞いが、底知れぬ恐ろしさを醸し出しています。

 淀川長治氏は、本作品について、

「絹糸のような恋の糸の美しさ、あやうさを描いた、トリュフォーの映画詩」

と表現されていますが、恋の不可解さを巧妙に描いている点は、さすがトリュフォー監督、といえる作品でした。