「村上かつら短編集1」_Posted at 15:02

2作かいつまんでレビュー。

・「はるの/よるの/ようだ」

村上かつらって人は
きっちり思春期を乗り越えた人だと思う。
デビュー作
「はるの/よるの/ようだ」の第一印象がそれだ。

恋愛という概念を朧げながら空想する年代にとって、
現実世界で異性との交際が
うまくいく可能性は限りなく少ない。
残酷なまでの現実を受け入れるキャパ、
そんなもん身につけているはずも無い。
ウブな少年少女には。
その挫折は「痛い」という感覚を伴い
コンプレックスとして重くのしかかってしまう。
そうやって彼らは「大人」になっていくのだと思うが、
「はるの/よるの/ようだ」はそこをうまく描写している。
この短編集の中で一番好きな作品だ。

過去の恋愛を過去のものとして清算しようとする
島田ヨシコの精一杯の勇気は
互いの利害の間を取った
「友達」という枠を
拒否したところに集約されるだろう。
時には
可能性を四捨五入するようなみみっちいことをせずに
思い切って切り捨てる強さも必要なのかも。


・「さよなら奇跡」

整形などで加工された身体。
どこまでその人のパーソナリティとして
認められるのだろうか?
整形だけではない、
場合によっては
身も蓋も無い噂によって
歪曲された身体も含まれるかもしれない。


ドラッグをやっているのか?
中絶しているのか?
整形しているのか?
男(女)とひどい別れ方をしたのか?


すでに
加工されてしまった(=汚れてしまった)身体には
一般に言う
倫理的・道徳的な正しさを吹き飛ばしてしまい、
その正当性を中途半端で陳腐な価値観に
変えてしまう無敵さが潜んでいる。
大抵批判には嫉妬が内包されていて、
自分の言っていることが
正しいはずなのに醜く見えてしまう。


「(お前たちは)結局、他人のことも
自分のことも幸せに出来ないダメ人間だよ。」
「他人はおろか自分さえ満足させられてないじゃん!」
「あたしはねぇせ、っかく生まれてきたんだから、
せめてこのあたしだけでも幸せにしてやろうと思ってんの!」
サユリ1号のように
山田は決まってかわいい娘にキツイ言葉を吐かせる。

私はM男だから、むしろ大歓迎。