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愛・蔵太のもう少し調べて書きたい日記

2007-03-11

[]翻訳小説が出なくなる

最近どうも翻訳小説を読む人が、ミステリーとSFを除くと減っているみたいで。

それも英語圏以外のものに関してはさっぱりなわけで。

でもって、SFとミステリーも、売れているものはそれなりにあってもベストセラーにはあまりならなくなっていて。

SF・ミステリー業界では「シリーズものの続きが出ない」ものがいくらでもあるわけです。

そんなことは昔からですが。たとえば「ナポレオン・ソロ」(一世を風靡した痛快娯楽スパイ小説。TVドラマのほうが有名)ですら全部は翻訳されなかったんじゃないかな。

で、今後の状況なんですが、たとえば値段を高くすれば固定読者は買う(SFなんかはすでにそうなっている)。問題は、翻訳者が翻訳して食っていけるか、という経済的なところでして。

すでにロシア語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語・フランス語などの小説の翻訳者は、初版3000部で5000円、みたいな本(それでもあちらではそこそこ売れたような本)を、年に1冊出しても全然食えないわけで。

翻訳印税5%としても、3000×250円だと、ええと、75万円。それでは1年は食えません。10冊翻訳すれば食えるかも知れないけど、5000円の本を10冊出す出版社も、読む読者もいない、という。

技術関係の本も、ロシアなんかはあるとは思えないし。実用書なんかはどうだろう。とんと検討がつかない。ロシア語の翻訳者は、いったいどうやって食っていっているのか。大学で教えて食っているのか。一応、国際交流とか商売としての通訳・翻訳の需要はあるとは思うけど、小説なんかは無理。

日本全国で、数百人単位の趣味の人が、ロシア語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語・フランス語の小説を原書で読んで「これ、面白いよなぁ」と話をする、という、ほとんど俳壇・歌壇の世界

英語圏の、SF・ミステリーの翻訳をしている人はまだマシだけど、たとえば文庫で800円、2万部、翻訳印税5%だと、2万×40で80万円。まぁそれでも数冊は翻訳できるか。人間の能力から言うと、毎月1冊翻訳できるのかなぁ。10万部ぐらい売れるのがあったり、何冊か重版がかかるようなものがあると、年収数百万は可能な線。

フリーライター的職業で年収数百万(それも、下のほうの数百万)だと、サラリーマンの「年収300万」というレベルより全然下。かなり特殊な特殊能力を持っている割には、タイヤの溝刻みリサイクル職人*1とか、ごみ収集職人とかのほうが全然まし。

英語のテキストを読んで、「I」を「ぼく」か「私」か「俺」か、読みながら判断できない、中途半端な語学力の人は、日本語の翻訳を待っているより、原書で読んだほうが、というより、読むしかない時代なわけです。

昔は、「翻訳が出ないなら、自分で翻訳してみろ」という時代もあったんですが、翻訳しても出版してくれる出版社がないとどうしようもない。早川書房・東京創元社はそれでも、マイナーメジャーな小説で翻訳権料の高くない、もしくはタダなものなら出してくれるかしれない。国書刊行会とか、論創社とか、河出書房も可能性はあるか。ただし、あちらのベストセラー小説は、中途半端にベストセラーなものは無理。

以上、伝聞情報から出版状況をテキスト化・再構成してみました。取り扱いにはご注意ください。

翻訳の現場にいる人は、もっとすごいことを知っているかも知れない。

 

(追記)

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2007年03月10日 stella_nf publishing ロマンス小説の翻訳レーベルがここんとこ増えてるんだけど、そのへんどうだろう

ロマンス小説というすごいジャンルを忘れていました。

(追記その2)

上記テキストでは、ロシア語その他の言語の翻訳者も、俳壇・歌壇の世界も貶めているつもりはありません。そのように読めてしまえるテキストだとしたら、それはぼくの伝達能力の問題です。

 

*1:そんな職業本当にあるのか不明だけど、フィリップ・K・ディックというSF作家は昔やっていたらしい。

鉄人鉄人 2007/03/09 23:27 初めまして、鉄人と申します。
翻訳をやっています。
翻訳を400字で特殊言語なら5000円〜8000円がフリーの最高クラスではないでしょうか(1言語につきこのクラスは多くて5〜10人位、東欧の言語なら1人いるかどうかも微妙)。医療・特許・法律・技術で1日10万円稼いでる人も片手で数える程なら各言語にそれぞれ居ます。

lovelovedoglovelovedog 2007/03/09 23:45 どうも情報ありがとうございます。小説の翻訳以外ならちゃんと食える、という状況は、特殊言語を勉強しようと思っている人の励みになるんじゃないでしょうか。アラブ系とか中国語なら、さらに需要はありそうですね

鶚 2007/03/10 03:44 商業・技術翻訳の場合、大量の定型文書を機械に処理させて枚数を稼ぐ方向と、それほど枚数のない文書を自力で処理する、昔ながらの方向に二分されつつあります。当然、機械に作業の一部を肩代わりさせる系統は単価もそれなりになります。

>小説の翻訳以外ならちゃんと食える

ネットが発達したおかげで現地発注ができるようになりましたから、これから始めようという人にとってのハードルは高くなっていると思います。なにせ初心者は機械や(概ね)日本より作業単価の低い現地の日本語が出来る人と競争しなければならない上に、仕事が安定的に入るかどうか不透明な時点で一通りの辞書と(10万〜の)翻訳支援ソフトをそろえるのは辛いですから。このあたりは、よほど珍しい言語でもない限り、特殊言語でも事情はそう変わらないはずです。
キャリア的に、新規参入から所謂中堅にかけてはかなり淘汰されている状況です。少なくとも英文科を出て翻訳家になりたい、というコースは、ハリーポッターの中の人とかにコネがない限り、避けた方が無難かと。(笑)

lovelovedoglovelovedog 2007/03/10 11:26 「日本より作業単価の低い現地の日本語が出来る人」を使う(現地語を知る日本人を使う必要がない)、というのは盲点だったかもです

oono_noono_n 2007/03/10 14:52 どうも初めまして。ロシア語のSFを翻訳したり紹介したりしています。

>ロシア語の翻訳者は、いったいどうやって食っていっているのか。

少なくとも文芸関係では食えません。専業でやっている人はいません。私のように在野で本業を抱えた傍ら翻訳を続けるのは、かなり厳しいです。
しかし、時代の流れもありますから、いつかまた需要が出てくることがあるかもしれませんので、火を絶やすわけには行きません。好きでやっていることでもありますし。
出版社の「営業成績」だけで語られると、非常に厳しいというのはその通りなのですが、出版という世界は「金儲け」だけが目的ではなく、文化の創出にあると信じて続けています。「俳壇・歌壇の世界」にも存在する意味は確かにあると思います。

lovelovedoglovelovedog 2007/03/10 15:18 どうもはじめまして。世界中で英語が共通言語になって、それ以外の言語・文化がなかなか日本に伝わりにくくなるのは残念な状況です

fumiofumio 2007/03/10 23:59 始めまして。小説を書いている者です。トラバさせていただきました(「それが夢ならば」の項)。たとえマイナーであっても、商業として成り立ちにくくても、文化的なものにはこういう側面がある、という話です……。愛・蔵太さんの日記によっていろいろ改めて考えるいい機会となりました。ありがとうございます。

lovelovedoglovelovedog 2007/03/11 00:46 トラックバックどうもありがとうございます。グローバニズムに関してはいつも、ポール・アンダースンの「救いの手」(The Helping Hand、翻訳はSFマガジン1967年1月号)で考えたことと同じことを考えてしまうのです

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