Hatena::ブログ(Diary)

愛・蔵太の気になるメモ(homines id quod volunt credunt)

2012-02-25

[]東京創元社はなぜ女性翻訳者を使うのを嫌がったのか

 …ということが、この本の「資料編」に書いてありました。

東京創元社文庫解説総目録

東京創元社文庫解説総目録

東京創元社 文庫解説総目録・資料編

厚木淳インタビュー  聞き手=戸川安宣・高橋良平 p70-72

戸川 僕が入社したころ、厚木さんがおっしゃったのは、女性翻訳家は三人以上使わないという方針で、人からは、三十歳以下の翻訳者は使わない方針と聞きましたが……。

厚木 なんとなくあったでしょうね、頼みに行く場合。二十代の訳者というと、読書量不足、経験不足で、語学力があってもね、とんでもないところでとんでもないミスをやられる恐れもある。だから原則として避ける。女性の翻訳家に対しては、ものすごい偏見をもってたんです(笑)。どうしてかというと、じつは悲惨な幼児体験がありまして(笑)、《クライム・クラブ》でお願いしたTさんの一件で。彼女はYWCAの先生をやっていて、誰かの紹介で翻訳もできるからと言われて頼み、一冊出したんです。それはマアマアだったのよ、出来が。それで二冊目を頼んだら、これが出来がよくない。そのころ、もちろん原稿は手書きでしょ、五、六百枚のものが、最初からここが抜けてる、あそこが抜け、ここが誤訳、ここもおかしい、ここは意味が分かりにくい。下訳を使われたにしても、僕は下訳に対しては偏見はないんですよ、ご当人が責任をもってきちんと直してくれればいいんで。とにかく、このままでは使えないし、多少の訂正で済むくらいなら、ゲラで直していただく場合もあるんだけれど、分量的にゲラにしたらおっつかない。原稿のうちに直していただかないと。弱ったな、と思いましたね。編集者の一番嫌な仕事なんですよ、原稿をつっ返すってのは。でも、頼んだからにはこっちにも責任あるしね。「この間いただいたお原稿のことでお話がある」と、御茶ノ水の駅前にあるジローって喫茶店で会って。まだ三十四、五なんですよ、なかなか品がよくてきれいな、おだやかな女性で、「じつは拝見して、いろいろ引っ掛かるところがあるんで、もういっぺん先生に目を通していただいて……念の為、そういう箇所に付箋をはっておきましたので、ひとつよろしくお願いします。お忙しいところを恐縮です」って、用件が用件だけにこちらもできるだけ下手にでて丁重に頼んだんです。相手はずっと黙ってるんですよ。黙ってるから、こちらは必要以上に喋らされちゃう(笑)、間がもたなくて。それでも一言も喋らなくて、こちらも説明が終わって腕組みをしてたら、いきなり、あの広い喫茶店じゅうに轟くような大声をあげて、テーブルの上にうっ伏してワアワア泣きだしちゃった。まわりのお客が一斉にこっちを見るわけ。こっちは二十六、七、その前で三十四、五の女性が泣いてるんだから、なんとも体裁が悪いったらありゃしない。僕も初めての経験。仕方がないから泣かすだけ泣かして、治まったところで「僕も次の用事がありますから、これで失礼しますが、ひとつご訂正のほうをよろしく」とコーヒー代を払って帰ってきちゃったんだけど、その後とうとう彼女からは何も言ってこなかった。直したから取りにこいとか、届けてくれるとかの連絡もなく、それっきりになった。つまり、彼女としては、自分の翻訳原稿に自分の全人格を賭けているわけ。それを、この翻訳は駄目ですと言われた、今の言葉で言うと、アイデンティティーを否定された、それで号泣した。男の翻訳者だとね、例えば、よその出版社で盛んに出していたIさんにも頼んだけれど、これが駄目だった。で、お宅に伺って、玄関先で説明すると、「僕はね、今まで出版社から原稿を直してくれと言われたことがないんだ。きみが気に入らないなら、出してくれなくていいから。置いていってくれたまえ」と言われたので、「ああ、そうですか」と置いて帰ったことがある(笑)。男のほうはいいんだよ、いろいろあるにしてもそれで済むから。それで、もう女の訳者はこりごりだ、金輪際頼まんぞ、と思ったのも分かるだろ(笑)。そういう偏見をもたされた幼児体験なんです。それからしばらく、女性に頼まなかった。

 …この女性のTさんに興味を持ちました…が、調べないほうがいいんだろうな…調べがついても日記には書きません。

2010-10-25

[]エターナルフォース講談社の電子出版契約書(相手は死ぬ)

 講談社の謎の電子出版に関する契約書について。

池田信夫 blog : 講談社の「デジタル的利用許諾契約書」について

講談社の野間副社長は「年内に2万点をデジタル化しろ」と社内に号令をかけ、同社のほとんどの著者に「契約書」を送っているようだその1通を入手したので、一部を引用する:

(中略)

印税は第6条で「乙が当該利用によって得た金額×15%(消費税別)」と定められている。

 漫画家・鈴木みそ氏のツイート。

http://twitter.com/MisoSuzuki/status/28498215455

講談社から単行本を二冊出しているが「デジタル的利用許諾契約書」というものが送られて来た。どちらも印税15%を一方的に印字して、全ての所有権は乙(講談社)に帰属する。とかいてある。「実際の電子書籍の発売は、まだ決まっていませんが」とある。まず話し合いがあるんじゃないんだ?

 鈴木みそさん、講談社からは「原作つき漫画(共著)」しか出してないですね。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062576058

マンガ 物理に強くなる (ブルーバックス) [新書]

関口 知彦 (原作)

鈴木 みそ (イラスト)

ISBN-10: 4062576058

ISBN-13: 978-4062576055

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062573342

マンガ 化学式に強くなる (ブルーバックス) [新書]

鈴木 みそ (著)

高松 正勝 (クリエイター)

ISBN-10: 4062573342

ISBN-13: 978-4062573344

 あと、池田信夫さんが講談社から本を出している、ということは確認できませんでした

 とりあえず、印税半分しかもらえない可能性のある人と、講談社で本を出したことのない人が「講談社の契約書、ひどくね?」と言ってても、それに賛同するにはもう少し資料(データ)が欲しいのだった。

 鈴木みそ氏「印税15%印字の契約書を受け取った」池田信夫氏「印税15%という契約書を入手した」の、どちらの意見も真とすると、原作者の印税が存在しない出版社が日本に存在する、という考えが一つ。

 別の考えとしては、池田信夫氏が「単著でない場合の契約書を入手した」「偽物の契約書をつかまされた」というのがあるけど、他にも何か考えられるかな。鈴木みそ氏宛ての契約書は出版社の印字ミス、とか。

http://twitter.com/MisoSuzuki/status/28565524363鈴木みそ氏)

@nana4_japan この作品は原作つきのため簡単に自分の判断だけで出版社を移動することはできないので、その場合電子出版を見合わせることも視野に入れつつ、講談社をつついてみようと思ってます。35%を提示し、30以下では出すつもりはありませんから。

 講談社の判断としては、鈴木みそ氏関係の電子出版をあきらめ、漫画家を変えて電子出版で出すしかないのかな…。

 

 契約書に関する俺の意見は、非実在(的)契約書について言及していても意味ないので、以下のまとめから。

Togetter - 「電子書籍…新しい「世界」に飛び込むにあたって、「フェアな契約」とは?」

 池田信夫氏の伝聞情報だけでは何なので、自力でこんなの見つけてくる。「社団法人 日本書籍出版協会」の、「著作物利用許諾契約書(PDF:57KB)」。ここに「電子出版」に関する言及あるよ。協会に所属する出版社は、これ雛形にしてる可能性高い?

著作物利用許諾契約書

(前略)

第2条(その他の複製等への利用の許諾及び第三者への許諾)

 本著作物の以下の利用については、甲は乙に対して、優先的に許諾を与え、その具体的条件は、甲乙別途協議のうえ定める。ただし、乙が自ら利用する意思を表明しない場合の第三者への許諾については、甲はその権利処理を乙に委任し、乙は具体的条件に関して甲と協議の上決定する。

1・電子媒体に記録したパッケージ出版物として複製し、翻案し、販売すること(以下「電子出版」という)

2・本著作物を電子的に利用し公衆に送信すること

3・ 本著作物をデータベースに格納し検索・閲覧に供すること

 雛型が作られたのが「2005年」なので、「電子的に利用し公衆に送信すること」は「電子出版」とは言ってないのかな。

「甲(著作権者)が自ら利用する意思を表明しない場合の第三者への許諾については、甲はその権利処理を乙に委任」。これが「卸元」的考えですな。

 著作権者が「自ら利用する意思」を表明すれば、著作物利用は本人の自由(他社への委任も可?)、というのが俺の判断。

 この「社団法人 日本書籍出版協会」による雛型と違う契約書があって、それが「講談社」のものである、と言い張るなら、俺はもうその人相手にしない。「第三者に確認できる情報」を提示するなら、相手にしてやってもいい

http://twitter.com/MisoSuzuki/status/28498215455

講談社から単行本を二冊出しているが「デジタル的利用許諾契約書」というものが送られて来た。どちらも印税15%を一方的に印字して、全ての所有権は乙(講談社)に帰属する。とかいてある。「実際の電子書籍の発売は、まだ決まっていませんが」とある。まず話し合いがあるんじゃないんだ?

 所有権(著作権?)の委譲まで契約に入れている契約書って、あんまり聞かないですな。とりあえず「デマ」タグ貼っておこう。 http://togetter.com/li/62185

 著作権が出版社に帰属する、という契約書って、日本の法律的に不可解

 まぁ、こんな新聞報道があるので。

asahi.com(朝日新聞社):本の電子化、契約書ひな型作成 出版社有利、作家反発も - 文化

本の電子化、契約書ひな型作成 出版社有利、作家反発も

 

2010年10月6日16時19分

 

 電子書籍の市場拡大を前に、国内の主要459出版社が加盟する日本書籍出版協会(書協、理事長=相賀昌宏・小学館社長)が、書籍の電子化に際して著作者と結ぶ契約書の「ひな型」を加盟各社向けに作った。著作者と契約した出版社が、作品の電子利用について「独占的許諾権を取得する」と、出版や流通の権限を出版社に集中させているのが最大の特徴だ。

 「ひな型」では、出版社は(1)DVD―ROM、メモリーカードなど電子媒体に記録した出版物として複製し、販売できる(2)インターネットなどを利用し、公衆に送信することができ、ダウンロード配信やホームページに掲載して閲覧に供することができる(3)データベースに格納し、検索・閲覧に供することができる、などとした。一方で、出版社側の役割としては「価格、広告・宣伝方法、配信方法および利用条件などを決定し、その費用を負担する」とある。

 「ひな型」は出版社側に有利な内容になっており、著作者たちの反発も予想される。書協は「加盟社を縛るものではなく、あくまで『ひな型』。個別の契約で、作者の希望を入れるのは自由」としている。書協幹部は「まずは市場を大きくするために、出版社に権限を委ねてほしいということ。売り上げが増えれば、各出版社は当然、印税を増やすなどの形で著者に還元するだろう」と話す。

 今年は「電子書籍元年」といわれ、今後、電子書籍の契約が急増するとみられる。大手出版社は独自に契約書を作成して対応を始めているが、大多数の中小出版社から「ひな型」作りの要望が寄せられていた。書協は今月中旬にも加盟各社への説明会を開く。

 一方、雑誌の電子化では、日本雑誌協会日本文芸家協会、日本写真著作権協会の間で、作家や写真家らの著作権を一定期間に限って出版社に譲渡するガイドラインの大枠が合意されている。煩雑な著作権処理を円滑にすることで、電子雑誌の流通を促進するのが目的だ。(西秀治)

日本書籍出版協会」に、「契約書ひな型」が公式アップされたらまた何か言うかもです。

 

 それから、印税率に関しては、実はこんな回答をいただきました

http://twitter.com/kuratan/status/28613266487

@MisoSuzuki もう少しくわしく知りたくなったので@します。鬱陶しいようでしたらすみません。原作つきの漫画で「印税15%を一方的に印字」ということは、原作者との印税はどういう割り振りになっているんでしょうか。15%を2人で分割、なら「印字」は「15%以下」なのでは?

http://twitter.com/MisoSuzuki/status/28666059298

@kuratan 間違えていました。二人で分割する場合、大本は25%のようです

http://twitter.com/MisoSuzuki/status/28666001494

昨日の「デジタル的利用許諾契約書」講談社は基本25%を提示するようです。著者が複数いる場合(原作付きなど)それぞれに内部で割り振る。自分の場合は原作10%、漫画15%だろうと思われます。訂正させていただきます。ただし、それは売値ではなく卸値に対するものになります。

 25%を著者お互いの「力関係(あるいは執筆の苦労関係?)」に応じて分割する、という感じですか。本当に微妙な数字…。

 ぼくの立ち位置は引き続き、実物見ないと分からない、です。これでまた、講談社の電子書籍印税が25%というのも、根拠ないまま流布して、間違ってたら目も当てられない惨状に。

 しかし、池田信夫さんの入手したと言っている、

印税は第6条で「乙が当該利用によって得た金額×15%(消費税別)」と定められている。

という、講談社の「デジタル的利用許諾契約書」の存在・記述がちょっと、どころではないレベルで怪しく感じられてきた。単著の場合は「印税15%」というのはあり?

 とりあえず、「印税15%」という偽伝聞情報(?)を元にして、高いだの安いだの言ってた人は、今どんな気持ち?

池田信夫氏の「講談社の「デジタル的利用許諾契約書」について」はひどいでしょう | ポット出版

で、どこも15%というのはカルテル、っていうなら、紙の本の10%って常識もカルテルか?

そもそも電子書籍も出版社の仕事だろ、ってな―Hey, publishers, E-books are books, too | Books and the City

アメリカでも基本的に新刊のEブックの印税は15%がデフォになりつつある。

電子書籍印税率15%の「ひな形」は搾取なのか?: マンガ家Sのブログ

しかし、新人の場合、予想に反してまるで売れず、宣伝費のかけ損、原稿料の払い損で終わる場合だってあるわけで、最初は紙10%、電子15%という条件は妥当な線じゃないだろうか。

 しかし俺以前には誰も、鈴木みそ氏の講談社の本が「共著(原作つき漫画)」であること、池田信夫氏が講談社から本を出していないことに言及していないとは驚きだね! みんな俺をTwitterでフォローすると半年でメディア・リテラシーが10倍ぐらい上がるよ!

愛・蔵太 (kuratan) on Twitter

 

2009-09-24

[]原稿料のことなど・他

 以下のつぶやきに対応して。

http://twitter.com/y_kurihara/status/3958765711

Twitter / 栗原裕一郎:

ふう……。原稿料というのはやはり400字詰め1枚1万円くらいはないと対価として――クリエイティビティとかそういうの抜きで単純に労働対価として――引き合わないよねえ。梶山季之のピーク時(昭和40年代)の平均原稿料単価が6千円くらいだったそうな。ええと40年前でいまより高いんですが?

3:06 AM Sep 14th webで

http://twitter.com/watanabeyayoi/status/3962428912

Twitter / 渡辺やよい:

@y_kurihara 漫画の原稿料なんて、それより低いんです。。。。

6:28 AM Sep 14th webで y_kurihara宛

http://twitter.com/y_kurihara/status/3963154062

Twitter / 栗原裕一郎:

@watanabeyayoi あれ? 「それ」がどれを指しているかわからないんですけど、書き方がまずかったですね。梶山の当時よりいまの平均単価のほうが低い、物価はたぶん10倍以上になってるのに原稿料の平均額面は昔より下がってる! ありえない!! というような話だったんですが……。

7:08 AM Sep 14th webで watanabeyayoi宛

http://twitter.com/watanabeyayoi/status/3964593187

Twitter / 渡辺やよい:

@y_kurihara  あ、意味は分かってます。ただここで具体的な数字を書くのがはばかられたので。。。。

8:30 AM Sep 14th webで y_kurihara宛

http://twitter.com/y_kurihara/status/3963355916

Twitter / 栗原裕一郎:

この話をすると受けるのでちなみに。原稿料の安さで知られる『ユリ○カ』は69年の創刊以来稿料が変わっておらず、その定額ぶりから「1ユリ○カ」が原稿料の単位として使われたりしている。だが、その『ユリ○カ』でさえ、69年当時は20枚も書けば、大卒初任給にほぼ匹敵する額になったのである。

7:20 AM Sep 14th webで

 ここでぼくが話に参加する。

http://twitter.com/kuratan/status/3979509767

Twitter / kuratan:

@y_kurihara 大卒の初任給は1970年で平均40961円。原稿料(400字?)20枚でそれぐらいというと、1枚2000円ですか。2004年では初任給は203537円。だいたい5倍でバランスが取れるという計算。#shuppan

http://twitter.com/kuratan/status/3979512090

Twitter / kuratan:

でも財源は、という話になると、雑誌の値段が当時の5倍になっているかどうか。ユリイカの最新号は1300円。1969年には260円だったんだろうか。#shuppan

10:05 PM Sep 14th webで

http://twitter.com/y_kurihara/status/3983695729

Twitter / 栗原裕一郎:

@kuratan ああ、さすが高度成長期。65年当時の初任給で考えてしまったようです。5年でほぼ2倍か。

1:54 AM Sep 15th webで kuratan宛

 というと、原稿料1枚1000円ですか。

http://twitter.com/y_kurihara/status/3983771471

Twitter / 栗原裕一郎:

@kuratan 「財源」というのは発注側の論理で、われわれ原稿を生産する個人事業主としては、極端な話、時給○円×拘束時間+諸経費という単純計算でさえ、400字1万円でも割に合わないときというのがしばしばあるですよ。

1:58 AM Sep 15th webで kuratan宛

http://twitter.com/y_kurihara/status/3984908351

Twitter / 栗原裕一郎:

まあでも原稿料はもうどうでもいいんです。雑誌というメディアはいよいよ終わるばかりなので。課題は、その先、なのです。

2:58 AM Sep 15th webで

 そのあと、ちょっとぼくが終わるばかりのメディアについて話す。

 雑誌売れない→原稿料が出せない→安い(もしくは、タダの)ライターしか使えない、という問題。「どこから金を持ってくるか」というのは、雑誌の場合広告主か読者からしかないわけで、前者に多くを(あるいは、ほとんど)望めないとなると、高い雑誌を少ない読者に売って、ライターと編集者の取り分をきっちり出す、という、ミニコミ的商売になっちゃうのかも。

 広告とマス・セールスを前提にした「マスコミ」がビジネス・モデルとして成り立たなくなることによる危機は、高給取りの大手マスコミ関係者(これはまぁどうでもいい)と、専門分野についてコツコツ調べてじっくり書くライター(それなりの原稿料が出ないと書き手としての生活および自負が維持できないライター)の危機、ということになる。テレビなんかも最近そういう感じで、ギャラの中途半端に高い人が切られている印象があったり。

 やはり出版の場合は、本や雑誌が「それなりに安いもの」という認識をつけてしまったのがいけないのかも。特に広告の多い(多かった)雑誌などは。厳密に部数で原価を計算すれば、講談社文芸文庫のように、普通で1000円越える文庫(中には2000円越えるのもあったり)も当然になる。でも、本(書籍)の値段は1000円越えると高いかも、というのが買う側の感覚。文芸書(小説)は文庫でその値段で再チャレンジできるんだけど、実用書やサブカル系(死語)のソフトカバー本はなかなか難しそうな感じ。

 「株で儲ける」とか、「○○で儲ける」的実用書(今だと「Twitterで儲ける」)は、旬の内にさっさと売り切ってしまうのが商売としては正しい商売か。

2008-12-16

[]「本の雑誌」(本の雑誌社)の経営危機について

 以下のブックマーク・コメントから。

はてなブックマーク - 本を一冊出したらどれくらいの金が動くかを他の業界(不動産業界)で考えてみる - 愛・蔵太のもう少し調べて書きたい日記

fujipon 『本の雑誌』の経営危機も、こういう「雑誌の衰退」の影響なのかな。

 ということで、一番新しい『本の雑誌』2009年1月号を見たら、発行人(浜本茂氏)のことばにこのようなものがありました。

 今月のお話で編集長(椎名誠氏)が書いているとおり、2008年になって当社の経営財務状態は急激に悪化した。それもサブプライムだのリーマンだのと言われだした時期に一気に悪くなったもので、おお、わが社は世界経済とリンクしていたのか、さすがワールドワイドな雑誌だのお。などと束の間は笑っていたのだが、もちろん笑っている場合ではなく、気がついたら存亡の危機に陥っていたのである。結果的に、人件費を始め、さらなる歳出削減を進めた上で、いましばらく這いつくばってみよう、ということになったが、本誌を取り巻く状況が楽観的ではないことは、お伝えしておかなければならないだろう。それはひとえにわたしの責任だが、今後、定価の改定等、読者のみなさんにもご負担をいただくことになるかもしれません。この雑誌を読んでしまったのが運の尽きと、継続的な刊行に力を貸してもらえるとうれしいです。(後略)

 その、椎名編集長の言葉はこんな感じ。「もしかすると…と聞いて(今月のお話)」より最後の部分。

 2008年になって『本の雑誌』の経営が急に悪化し、このままでは「休刊」に追い込まれるかもしれない、と現経営者に聞き、これはいかん、と思い、ぼくはもう何年も前から実質的な編集現場から離れていたが、なんとか立ち直る方向でみんなと頑張ることにした。今回いきなり自分の編集長の系譜を書いたのは、これが最後の「今月のお話」になるかも知れないから、と言われたからだが、これを書いている途中で(締切前日に)まだもう少し這いつくばってでも出していこう、というスタッフみんなの決意になった。地方の講演などに行くと、むかし『本の雑誌』読んでました、などと言う人とよく会うけれど空前の危機を迎えてしまったのでぜひまた『本の雑誌』を読むようにしてほしい。

『本の雑誌』についてあまりしらない人は、ウェブページでも。

WEB本の雑誌

本の雑誌社 - Wikipedia

 ウィキペディアで見たら、1976年から続いている(いつから月刊になったのかは知らないけど)A5判の雑誌です。ダ・カーポとか正論とかと同じ判型。本に関する話とか新刊書評(案内)が出ていてなかなか便利なんだけど、取次を通して流通していないのかな、置いてある書店にしかないのが不便なのでした。

 昔はこの手のミニコミ系雑誌ってけっこう出ていたと思うのですが、そういうのの数少ない生き残り。最近は読者投稿などを見ていると高齢化が目立ってましたが、そんなに経営が、急激に悪くなっていたとはしらなかった。まぁ、また昔のように隔月刊とか不定期刊とかにすればいいんじゃないの、とハタからは思ってしまうんですが、そうもいかないんだろうなぁ。寂しいことです。しばらく寂しい話が続くことです。

 

2008-12-15

[]本を一冊出したらどれくらいの金が動くかを他の業界(不動産業界)で考えてみる

 ベストセラーじゃなくて、あくまでも「最低ライン」の線で言うと、2000円の本で5000部、というところか。漫画となるとケタが違うのでこれはまた別計算にして、1千万円。東武東上線沿線のワンルーム・マンションぐらいですか(ここらへんはあまり調べないで、だいたいの感覚として言ってみる)。だいたい1軒の家やマンションを作るのに、職人が手数料としてもらうのが、まぁ多分印税と同じぐらい。1千万円の家なら100万円、というのが相場だろうか。

 これが10万部ぐらいになると、単純計算で2億円。広尾でほどほどの広さのマンションが買えます。一戸建てだったら、まぁ普通の豪邸ぐらいは、場所を選ばないと買える。つまり、そのくらいの本を作ることができる編集者は、億ションの物件を取り扱える不動産の営業と同じぐらいの能力がある、という感じ。もっとも、何を出しても○万部、○十万部、というほど売れる作家は数えるほどしかいない(たまたまベストセラーになる作家は、毎年何人かはいる)。

 世の中で、本を売る(作る)人の数より不動産を売る人の数が多いのは、なんとなくわかるような気がします。一生に一度の買い物、とは言っても、やはり不動産のほうが単価は高いわけで。本を売る(作る)人のリスクは、自動車を売る人のリスクよりかなり高いと思う。一つの商品を「万」という数で作って、全国の何千という書店、何万という書店員の手を通して売らなければならない、というリスクぶり。まぁその分、リターンも大きいんだろうな、売れさえすれば

 漫画(コミックス)の場合は、それよりひとケタ多い、と普通に考えていいんだろうか。500円で10万部。で、5000万円。これ、商売としてはすごく小さい気がする。つくばエクスプレス沿線に高層マンションひとつ作ると、○十億の売買になるんじゃないかな。まぁその「○万部」が「○十万・○百万部」になる、という可能性があるので、家を売るよりは少し面白いかもしれない。

 ただ、出版社の社員とその売上との相関関係は「売上1億につき1人(売上1000億円で1000人。そんな出版社は日本に5つはないだろう)」というのが比較的健全な状況で、社員の半数は販売・制作あるいは人事・総務といった管理部門なので、編集者の目標は、その出版社の規模が大きかろうと中・小規模であろうと「年間2億円」の売上を目標にする、というのが妥当なところか。そんなに売れる本なんてありません

 雑誌の場合はまた、広告収入とか雑費とか、出る金・入る金の計算が違うので、またの機会に考えてみるけど、ずいぶん昔に某ファッション雑誌の広告収入がゼロだったらいくらの値段で売らなければならないか、という試算の話を聞いたな。現在の販売価格は300円台なんだけど、その試算だと800円台になってしまったそうな。まぁこれから、趣味の雑誌(犬とか釣りとか)を除くと、雑誌の広告媒体としてのメリットはどんどんなくなっていくので、もっとバリバリ高い値段をつけることになるんだろうなぁ。ていうか、本(書籍)はともかく、雑誌の値段って安いと思ってるのが当たり前、というのがおかしいです。ぼくが定期購読している雑誌は3誌だけなんだけど、平気で3000円越えてしまう。ツケで処理してもらっているので、3か月も溜めてしまった日には大変なことになる。でも、これが広告収入のほとんどない雑誌の、正しい値段なんだろうと思う。

2008-11-22

[]本のシュリンク(パッケージ)販売をしている書店の一角について

 本のシュリンクがけしている書店の一角って、倉庫みたいだね。立ち読みしている人なんていないし、売っている本の表紙はライトノベル的にカラフルだったり漫画だったりしているので、よけい寂しく思える。なんか、寂れたゲームセンターで、機械の音が空しく響いている風景に似ている。

 ジャンルの成熟化・細分化とか、読者の高年齢化とか、少子化とかの話以前に、もう少しこうなる前に何とかならなかったものかと思う。具体的には、漫画のリテラシー(読み書き能力)の高度化や、ジャンルの細分化をどこかでくい止めるとか、みたいな(これは持論ですが)。あるいは、雑誌・漫画家・編集者の数をもう少し減らしてみるとか。まぁそれは無理か。

 しかしぼちぼち、都内の大型書店じゃなくって地方の中規模書店あたりから、漫画のシュリンク(パッケージ)がけを外すことを考えたほうがいいと思った。新しい漫画との出会いがなかなか難しい。その手の情報はネットでしか手に入らないし、手に入った情報が必ずしも書店での書籍購入に結びつく、ということもなく、ネットでの書籍購入になってしまう。

 結局アニメになって派手に宣伝している漫画を除くと、書店員のおすすめ、とか、店頭ポップのほうが効果的ではありましょうか。しかし書店で売られているもので、こんな風に売られているものは、何か間違っているような気がして仕方ない。宣伝はともかく、中身をちょっとでも見て、いいかなと思ったら買う、というのが正しい本の買いかただと思うんだけど、これじゃ絵柄とちょっとした内容紹介しかわからないよ。

2008-09-01

[]雑誌の休刊(廃刊)は自殺と同じ

『ロードショー』も休刊ですか。

禁煙撮影所:洋画雑誌「ロードショー」休刊

集英社の映画雑誌「ロードショー」休刊の知らせが

届きました。

(最終号は11月21日発売の2009年1月号)

1972年創刊。

映画ファンの間では「スクリーン」派と「ロードショー」派に

分かれました。

 これに関しては、公式サイトの公式発表を見ていない(マスメディアの報道も見ていない)ので事実かどうかは未確認なんですが、雑誌の休刊は、老人・若者の自殺と少し似ていると思った。要するに、未来に希望が持てない(これ以上続けていても、いいことなんて何もない)という判断からなんでしょうね。情報提供雑誌(特に、インターネットで情報を得ることが可能な情報を提供している雑誌)はどこも厳しいかなぁ、という感じです。あとオピニオン誌(左寄り系)か。

月刊現代が休刊へ ネット普及で部数低迷、週刊誌も態勢見直し - MSN産経ニュース

月刊現代が休刊へ ネット普及で部数低迷、週刊誌も態勢見直し

2008.8.30 18:24

 講談社発行の月刊誌「月刊現代」が休刊することが30日わかった。読者が高齢化し、部数低迷が続いたことなどが理由という。同社は1日にも発表する。

 インターネットの普及で、紙媒体の読者離れが進み、月刊誌だけでも5月に「主婦の友」(主婦の友社)が休刊。「論座」(朝日新聞社)が9月、「PLAYBOY日本版」(集英社)が11月に休刊する。

 関係者によると、現代の休刊は講談社の幹部が8月下旬に編集部員に伝えた。10月1日発売の11月号が最終号となる見通し。「読者の高齢化に伴い部数減が続いたため休刊を決めたようだ」(関係者)という。

 同社は週刊誌「週刊現代」、写真週刊誌「フライデー」の編集態勢も見直す予定で、11月までに結論を出すもようだ。

 「月刊現代」は昭和41年12月創刊で、日本雑誌協会公表の発行部数は8万5833部(18年9月−19年8月の平均)。「早耳・空耳・地獄耳」「音羽人事観測所」など名物連載がある。話題となった記事も多く、17年9月号ではNHKの番組改変問題をめぐる「『政治介入』の決定的証拠」と題する記事を掲載した。

 まぁ、雑誌読者の高年齢化は、特定のどの雑誌、ということではなく、たいていの雑誌が高年齢化してはおりますが。

 そんな中で、最近売上のよかった雑誌の例を挙げると、こんな感じ。

1・あるゲームのプレミアカードつきゲーム情報誌(カード目的で、雑誌をまとめ買いする人間も多数)

2・ネットで露出度が極端に低い、某事務所系のタレント情報が中心の芸能誌(芸能誌と言えるのかどうか)

3・ブランド系のバッグが付録になったファッション誌(ファッション誌の売上を左右するのは、もはや付録)

 どれも、雑誌としての買われかたが特殊なものばかりで残念な感じです。

 あと、映画・音楽の情報誌はあまりよくないけど、TV関係の情報誌はそんなに落ち込んでいない(増えてる、ということもないような数字ですが)。要するに、インターネットと繋がっていない人(繋がる気のない人)が買っている。

 ぼくは、雑誌の値段が1000円以下の、不特定多数を仮想読者にした、広告収入を収益の一部に組み込んでいる月刊の雑誌は、5年以内で死滅するのでは、と思う。週刊誌も厳しいだろうけど、ちょっとこれはどうなるかわからない。「5年以内」という数字は、だいたいそのあたりで団塊の世代が定年退職することから。

 もちろん、釣りとかガーデニングとか犬の雑誌は売れると思う。あとマニアックな音楽・映画雑誌もね。でも多分単価は1000円とか1500円、部数は○万部(あるいは○千部)、とかそのくらいのレベル。