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2003年からの読書日記

フィンガーボウルの話のつづき (新潮文庫)作者: 吉田篤弘出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/07メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 15回この商品を含むブログ (49件) を見る

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以前『それからはスープのことばかり考えて暮らした』を読んで気に入ったのでこちらも借りてみました。
物語を書きあぐねる吉田くん(著者の分身?)が主人公。
ふとしたきっかけで謎の作家ジュールズ・バーンを知った彼はバーンのことも探りつつ、自分の作品を書き溜めていきます。
ビートルズのホワイト・アルバムを軸にして進む不思議な物語。


ホワイト・アルバムの存在は聞いたことがあるくらいでしたが、通し番号がついているんですね。
白だけのシンプルなジャケット、自分だけの番号・・・ファンにはたまらないものだと思います。
このアルバムを絡めつつ、短編が16+1(1は書き下ろし)収録されているんですが、どれも独特で不思議な世界です。
閑人たちが集まるカフェの話、気まぐれでささやかな電波で放送されるラジオ局<6月の月放送局>、レインコート博物館など・・・
少しリンクしている物語もあり楽しめます。


読んでいる自分もジュールズ・バーンの世界(いや吉田くんの作品になるのかな?)に入っていったような気分になりました。
ホワイト・アルバムを聴いてこの本を手にとってみたいと思いました。


吉田篤弘さんの作品はまだこれで2作目ですが、なんとなくいしいしんじさんと通じる世界を感じます。
いしいさんほど不思議ワールド全開じゃないんですが(笑)
日常に潜んでいる不思議を優しくすくい上げて物語を作っている感じがします。
現実にありそうでやっぱりありえない独特な世界もお気に入りです。
吉田篤弘さん、これからも追いかけていこうと思います。