- 作者: 羽生善治
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/07/01
- メディア: 新書
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ご存知、将棋界のスーパースター、羽生善治。中学三年でプロになり、19歳で初タイトルの竜王を獲得、96年将棋の7大タイトルをすべて独占し、将棋界初の7冠を達成。現在は最強の棋士だ。そのトッププロが語る決断力とは?そのエッセンスを紹介しよう。
・将棋にはいわゆる「定跡」というものがある。しかし定跡はただ記憶するだけでは実践でほとんど役に立たない。そこに自分のアイデアや判断をつけ加えて、より高いレベルに昇華させる必要がある。言い換えれば、知識は単に得ればいいのではなく、知識を「知恵」に変えないと生かすことはできない。たとえば、金槌やカンナなどの大工道具も、ただ持っているだけでは無用の長物だ。どこでどう使ったらいいのか、使う技能があって初めて生きたものになるのだ。
・勝つのは一点差でいい。五点も十点も大差をつけて勝つ必要はない。常にギリギリの勝ちを目指しているほうがむしろ確実性が高くなると思っている。
・将棋の対局はきわめて厳しい。対局が終わると、頭の血管が膨れ上がり、頭皮が真っ赤になっていることがある。それほど長く集中するのだ。それくらい消耗するのだ。
・人間の持っている優れた資質のひとつは直観力だと思っている。これまで公式戦の千局以上の将棋を指してきて、直感によってパッと一目見て「これが一番いいだろう」と閃いた手のほぼ七割は、正しい選択をしている。
・今、将棋の世界では、かつては「邪道」といわれていた手や戦型が流行っている。二、三十年前の人が見たら、「こんなの本筋じゃない。破門だ」というような異筋、異端の形がプロの将棋に現れるのだ。ここ二、三年、その傾向が強くなっている。常識を疑うことから、新しい考え方やアイデアが生まれる。
・タイトル戦の前などには、ボーっとした空白の時間をつくるようにしている。頭の中に空いたスペースがないと集中できない。移動するとき、何も考えずに窓の外の風景を見たり、将棋に関係ない本を読む。常に将棋漬けになっているほうが雰囲気が出るという人もいるが、私の場合は、一日でも二日でも頭の中を空っぽにしておいたほうがいいようだ。仕事や人間関係など頭からすべて捨て去り、生活の中に空白の時間をつくることは心身のリフレッシュにつながるはずだ。
・将棋には怖いところがある。将棋だけの世界に入っていると、そこは狂気の世界なのだ。ギリギリまで自分を追いつめて、どんどん高い世界に登りつめていけばいくほど、心がついて行かなくて、いわゆる狂気の世界に近づいてしまう。一年なり二年なり、ずっと毎日将棋のことだけ考えていると、だんだん頭がおかしくなってくるのがわかる。
・将棋は、スポーツと違ってきちんと検証できる利点がある。そのときの判断や決断を次に生かすことができるのだ。
・以前、私は、才能は一瞬のきらめきだと思っていた。しかし、今は十年とか二十年、三十年を同じ姿勢で、同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている。
・勝ちにこだわる将棋は、将来的にはマイナスになりかねない要素でもある。勝つことだけを優先していると、自分の将棋が目の前の一勝を追う将棋になってしまう。今はいいいが、将来を考えると「よくないな」と気づいた。勝負に勝つことは、企業でいえば、目先の利益である。目先の利益も大事だが、先行投資的な研究もしなければならない。長く将棋を続けていくには、目先の勝負以外のところで何かしなければならないのだ。
あらゆるビジネスでも通じることだよね〜!(^^♪ さすが一芸に秀でた人はスゴイなあ!