luckdragon2009 - 日々のスケッチブック(Archives)

luckdragon2009 - 日々のスケッチブック [過去記事]

相手を人として見る、という大切な視点の話、...小さな箱の外に出る勇気。

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上記の書籍の話です。
書籍の内容に触れる前には一度、ワンクッションを置いてます。よって、読んだ後にしたい方は本書を読んでから再来ください。図書館でも一般に貸し出し可能な普及している書籍ですが、かなり人気の書籍のようですし、本書の性質から古本*1でも購入をお勧めします。


この書籍が明かしている事実は、一つの心の内容*2のみですし、書籍を読んだ後に「細かな心理的な機微が分かる」というような、テクニックとか知識の話ではありません。
ただし、一つの事について語られていて、その事実が非常に強力な作用をもっていること、そして、その作用がどんな状態をもたらしてしまうのか*3、そして、それが何故連鎖してしまうのか*4、が語られます。
人によっては、書籍に過大な期待をしてしまう人もおり、そういった人に「期待はずれ」と言われてしまう*5のかもしれないが、非常に大切な視点を与えてくれる書籍だと思う。


この書籍で、「小さな箱に入る」とされている事は、何かのトラブルに際して相手と向き合って会話しようとせず*6に、その相手のせいにする事を言います。
そして、それを続けると、その状態を保持するために、実際の原因がそうでなくても、その原因が薄れても、箱の中に居続けるために、相手をそう決めつけ、相手の不当行動をさせることによって「箱の中に居続ける」状態を継続させることになります。
結果としてどうなるか、というと「互いに小さな箱に入り続け、それを保持させるフィードバック・サイクルが成立し続ける」という事になります。増幅のフィードバックは、結局のところ原因となる状態の増幅・継続を呼ぶわけです。


よく、色々な組織のコミュニケーションについて問題が語られますが、解決に至らない原因として、語る本人が問題の発生に密かに加担している事があります。これは問題を指摘し続ける事*7が、自分の自尊心を満足するための習慣になってしまっている場合です。
そういう人は、指摘し続ける問題が維持するために、問題の悪化に手を染める事があります。本来、問題があるなら、その問題を解消して関係する人々が幸せになる事が重要なはずなのに。...それは、その人が「小さな箱に入ってしまっているから」です。
この視点に気付くまでは、例えば友好のために飲み会等を催しても「諍いを増幅したり、相反する人々は会話しない」という事態になったり、問題解決のために良い方法を提案しても、「互いに提案を掲示する人が、互いに激突したり」「問題解決の方法が、片方に有利な内容になったり」「その情報を限定された相手にしか伝えなかったり」という事態*8になったりします。
重要なのは、双方共に事情を抱えている状況を踏まえて、両方ともモノとしてではなく感情を持つ人間として扱うべきだ、という事です。


以前、問題があるプロジェクトを紹介されたときに、この視点に気付かずに、批判されている人のみが問題児だ、と決めつけて問題を解決しようとし、それ以外の全員が問題児の行動の維持に加担していた現実に気付かずに失敗しかけた事があります。まさに、この書籍と同じ状況でした。そういう人の欺瞞性に気付くと言う意味でも、良い書籍であると思います。
実は「ライトついていますか?」でも、似た意味の章が一つあるのですね。ちゃんと、ワインバーグは気付いていたわけです。


なお、書籍でも語られますが、人は相手によって「小さな箱に入ってしまうこと」をしてしまう場合があり、完全に外に出ていられるか、というと、さすがに無理じゃないかなあ、と私も思います。努力しても、相手がずっと小さな箱に入り続けている場合もありますし。
そんな場合に、相手を笑う余裕も出てくるような本ですね。
本当にどうしようもないときは、自分だけが箱の外に出続けるか、そっと立ち去るか、という行動をするのが良いと思います。私にも、相手が箱に入り続けて、仕方がない場合には相手をする事を止めています。

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*1:ただし、個人的には TUTAYA は嫌い。一般の古本屋を勧めます。

*2:自己欺瞞という心理がもたらす、色々な人の心の機微。内容は、仕事の上司からの講習に伴う、本人の行動と心理の物語として、まとめられています。

*3:仕事で不当な扱われ方をして、激怒した人にとって、この内容は色々腑に落ちると思う。まさに、その人は「自分が人として扱われない経験」をしたのです。

*4:冒頭で細菌(産褥熱)の発見物語が語られるのですが、まさに人を死に至らしめる感染症例です。

*5:私は単純に「後認知バイアス」だとは思いますが。

*6:相手を、会話できる人として扱わずに。

*7:それは、相手を侮辱的に批判する行為を伴う事があります。そんな言い方をすれば、相手は当然感情を害するでしょう。相手の事情も分かった上で、解決を求めればよいのに。

*8:どれも、自分の業績のみを評価されたくて、そうするから、ですね。本来は双方が補完しあえる内容の場合もありますし、相反する場合でも片方を無評価とするのは行き過ぎでしょう。