luecke

夢見る文系スケートボーディング愛好家

Fabian Fuchs interview from SOLO skateboard magazine

こちらは2016年2月11日、コペンハーゲンで催された『I like it here inside my mind, don’t wake me this time』の記念すべきプレミア上映会の取材の一環で実現した、ビデオの編集の段階でPOLARのクルーに加わったドイツ人クリエイターFabian Fuchsのインタビュー。作品がリリースされたいまでは少し情報が古くなってしまっているかもしれませんが、いちファンの彼がビデオの編集に関わった経緯や制作の舞台裏を垣間みることができる内容だとおもい、翻訳させてもらった次第です。Fabianもインタビュアーもドイツ人、ということでドイツ語バージョンの方を翻訳してみました。そのため英語バージョンとは表現が異なる箇所もあると思いますが、そこは翻訳の七不思議(?)だと思ってお許しください。

またSOLOのホームページには上映会の様子が見られるフォトギャラリーもありますので是非ともリンク先の元ネタページもご覧下さい。

Fabian Fuchs interview
from SOLO skateboard magazine web article
POLAR VIDEO PREMIERE
– GALLERY & INTERVIEW

taken with permission
original interview & photo by Stefan Schwinghammer
translated by Katsushige Ichihashi(Luecke)
http://soloskatemag.com/polar-videpremiere-gallery-interview/?lang=en

遂に待ちこがれたPontus Alv氏の3作目にしてPOLARの本格ビデオが遂に完成した。コペンハーゲンのPumpehusetにてワールド・プレミア上映会が催されたが、もしもあなたの街でも上映会が予定されているなら是非とも足を運んでもらいたい。まちがいないから。昨日、そのプレミアの会場にて今回Pontusのビジョンを具現化をサポートしたシュトゥットガルト出身のFabian Fuchsにも話を聞くことができた。

ビデオについて語るのはいつだって難しい。結局、自分で見てもらうのが一番なのだが、それでもあえて一言、「このビデオはあまりにもスケートボーディングそのものすぎてスケートボーディングであることに気付かないほど」。え?意味がわからない? Pontusはいつもスケーター以外のひとにも興味を持ってもらえるような作品を作ることを心がけていたため、作品にはスケートボーディング以外のテーマもこめられてきたが、今回は完全にスケートボーディングのみであるためにもはや「そのもの」であることすら感じさせないほどなのだ(もちろんこれまでのように複数のレイヤーが織りこまれているのだが、作品の鮮烈な印象がそれらをかき消してしまったようだ)。

説明するのが難しいが、とにかくものすごいスピードで見る者に迫りくる。すべての要素が複雑に編みこまれ、自分が一体誰のパートを見ているのかわからないほど。Pontusはあえてひとりのスケーターをメインにすえる現在の主流といえるパート制度ではなく、全員のスケーターが入れ替わり立ち替わり登場する前菜〜主菜〜デザートのような料理のコースにちかい構成をとったのだ。爆進するジェットコースターのようで、初めて見終わったあとには作品のタイトルすら忘れてしまうほどだったが、Bloby’sとKevin Rodriguesの印象は強烈だった。

とにかく自分もスケートに行きたい気にさせられるし、(DVDがリリースされて)また何度でも繰り返して見られる日が楽しみで仕方ない。数カ所でのプレミア上映が終わればDVDが発売され、ネット上で限定のライブ・ストリーム公開もされる予定だ。その日までは代わりに『The Strongest of the Strange』や『In Search of the Miraculous』を引っ張りだして我慢するしかない。

P.S. ネタバレ注意 - 今回、Pontusはフルチンにはならない。

Fabian Fuchsは自分から動いてみることこそ成功の鍵であることを証明している。Pontusと仕事をしてみたかった彼はたった一通のメールをきっかけにマルメに移り住み、POLARの事務所でビデオの編集にたずさわるところまで到達したのだ。Pontusはもうインタビューには応じない、作品にすべてを語らせると公言しているので(注:このインタビューの時点ではまだそうでした)、我々はFabianから今回の作品についての情報を聞き出そうと試みた。

やぁFabian、まずはPOLARで働く前に何をしていたのか教えてもらえる?

法学部に入ったけどすぐに辞めちゃって、ある代理店でアート・ディレクターとして働きながらメディア関係の勉強をさせてもらって、最終的にはIHK(ドイツの商工会議所)から奨学金をもらったよ。その奨学金のおかげでここまでこれた感じかな。

ということドイツ商工会議所がPOLARのビデオを支援した、てわけだ。

たしかにそういう言い方もできるね(笑) ずいぶんと迷っていたんだけど、ある日、いろんなところにメールを出してみたんだ。実はニュージーランドに行ってビデオ制作に関わる話も決まりかけていたけど、Pontusから「興味があるから一度会おうぜ」と返事が来てね。

Pontusに自分を売り込んだ、ということ?

なにか一緒にやってみたいと思ったひとたちにただ普通にメールを送っただけだよ。Pontusのメール・アドレスも偶然見つけることができてね。でも3ヶ月間は音沙汰無しだった。ところがある日、返事をくれてコペンハーゲンで会うことになった。そのままマルメに行って街を案内してくれて、僕にできることに関しても少しだけ話をしたかな。当初の計画では僕はPOLARのアパレルやプロダクツ関係を手がけるはずだったんだ。代理店で映像やアニメーションもたくさん手がけていたことを言うチャンスがなくて本当はそっちの方が得意だってことはPontusも知らないままだったなぁ。しばらくは携帯メールでアイディアを交換しあう日々が続いた。たとえばPontusが自分の好きなアニメーションを教えてくれたりして彼のビジョンを共有してくれようとしたんだ。あるとき、フォルクスワーゲンのヴァンでハンブルクからシュトゥットガルトに向かっている間の5時間でいちからiPhoneだけでアニメを作ってそれを送ったことがあって、それを見たPontusが「よし、わかった、すぐにこっちに来てくれ!」となったんだ。去年の春にマルメに引っ越して、そこから少しずつ作業しはじめた。僕はそのままアニメーション担当になった。まずはどうやって一緒に作業するのがいいのか、という試行錯誤もあったけれど、そこから自然と発展していったよ。ちょっとしたクリップからどんどん作品が増えて、さらにモンタージュ用に映像を撮りにいこう、ということになった。これまでならPontusが三脚とカメラだけでひとりでやるような作業だったけど、もうすこし作りこんだものを撮るためにもまずは彼の信用を得る必要があった。

ではこの1年で一緒にビデオの編集をしてきたわけだ。

Pontusはその前からすでに編集を始めていたはず。僕はちょうど編集期間の真ん中あたりから参加した。ふたりで色々と調整しなおしたよ。どのシーンも5回くらいはやり直したかな。ちょうど編集の真ん中あたりから始まった共同作業は議論と狂気に満ちあふれたものになったよ。

Pontusと作業するのはどんな感じ?

もちろん最高に刺激的なのはまちがいない! 「大変だ、しんどい」なんて言い方もできるけど、その苦労はなにかしらの形で必ず報われるものなんだよ。僕はあの場にいられたことにものすごく感謝している。最初は一緒に事務所に行って作業をしていたんだけど、後半になると毎晩、自転車で街に出て作品について語り合った。もはや仕事なんかじゃなくて、作品の中を生きていたんだよ。夏にはチームのみんながマルメに集まってきてよく一緒にスケートしたり、撮影したりしていたし。

Pontusが他人を編集に参加させたのは正直、驚きだったよ。ひとりで地下室にこもって狂ったように編集する、というのがPontusのイメージだから。

作業を始めた当初はそういう感じだったみたい。でも共同作業になってからは本当に一心同体だった。まずはお互いを知る必要があったけどね。そしてPOLARといえばPontusにとっては自分の子供のような存在だ。彼はPOLARのためならいつだって全力を尽くす。メンバー全員がそれぞれのビジョンを実現できようにしてあげるんだよ。まさにあのフレーズ「Inspiring others to inspire themselves(みんなが自分をインスパイアするまでみんなをインスパイアし続ける)」。実際には難しいし、大変なんだけどね。

POLARが発表し、発売するものの量を見るとPontusが1日を48時間に拡張できたとしか思えないもんね。

たしかにいつ寝てるんだろう、という感じ。かなり狂ってるよね。朝から風呂に入りながらメールをチェックをしてそのあとはひたすらビデオの編集しつつ、いつの間にかプロダクツの制作もやってのけているんだから。さらにチーム・マネージャーとしてみんなを動かし、ときにはカウンセラー役までやっているよ。たとえば去年、みんなで彼の誕生日を盛大に祝ったときの話だけど、普通ならそのあと何日か休むと思うんだよ。ところが彼は次の日には僕らを連れて出かけて、コンクリートをこねてDIYスポットを2つ作ったよ。二日酔いのときでそんな調子なんだよ(笑)

撮影の方も実はPontus以外にたくさんのフィルマーが手がけていたらしいね。

そうだね。もちろんPontusが撮影した素材もたくさんあったけど、参加したフィルマーの人数を見るとすごいよね。Thor(Ström)がかなりたくさん撮ってた。彼も当時、事務所に寝泊まりしていたメンバーのひとりだった。

そのことで作品のテイストが変わったと思う?

それはないかな。フッテージを送ればそれがそのままビデオに使われるわけじゃないからね。かなりすごいトリックでも撮り方が作品に合わなくてボツになったものすらある。

スパイシーさが足りなかった?

まぁ決定権はPontusにあるからね。とはいえ、膨大な規模の共同作業でもある。Pontusが作品の方向性を提示し、みんなも彼のスタイルや彼が何を欲しがるのかはわかっている。でもフッテージが世界中から届くからね。

この作品をひとことで言うと?

ひとことで言えば「ジェットコースター」。ふたことなら「カラフルなジェットコースター」。とりあえず退屈はさせないと思う... 3作目としてこれまでの流れに属しつつも、単独作品としても存分に魅力と存在感がある。ちょっと大人になったとも言えるかな。とにかくカラフルで様々な要素が絡み合っていて、スケート・ビデオにしてはめずらしく濃密でソリッドな作品。ハンマー・トリックの連発みたいな典型的な作品なんて作らないようなひとだからこそ僕もPontusにメールをしたわけだけどね。作品の中にいろんなレイヤーがあって、多層的にいろんな物語が語られるのが彼のスタイルであって、今回もいろいろと織りこまれているよ。ほとんどのものはかなり抽象的だから背景を知っているひとにしか作品を通して何度も登場し、伏線となって織りこまれている物語を読みとくことができないかもしれない。でもその真意を正しく理解する必要もないと思う。ただすべての要素には結びつきがあって、みんなのスケート・シーンも同じように絡み合っている。すべてが作品という形に集約されていて、すべてが心の奥底から生まれているんだ! ライダーがお金で寄せ集められただけのチームなんかじゃなくて、本当の仲間だっていうこともわかると思うよ。

http://soloskatemag.com/polar-videpremiere-gallery-interview/?lang=en



いかがでしょうか。ライダーのみならず、映像や写真でもあらたな才能をどんどん引き入れるPontusの姿勢や今回のビデオの製作現場の雰囲気を感じることができたのではないでしょうか? Fabianのホームページやインスタグラムのアカウントもかなり面白いのでおすすめです。
http://thefandfandf.com/
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