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I thought the world was going to end this morning.

2017-09-20

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よくあることといえば、そうだけれど
明日は早い時間から仕事だというのに
今の今、夜が更けるまで、一冊の本に熱中していた

エリック・マコーマック『パラダイス・モーテル』
頁をめくりつづけ、ほとんど一気に読み切った

グロテスクな描写が苦手なわたし
この手の小説は、あらすじを読んでけっこう避けてしまう
これもやっぱり、頁から目を背けるところが多々あったけれど
それでも読んでよかった、本だった


なぜこうなるのか、わからない、というのが好きだ
圧倒的な不条理が、軽やかなタッチの絶望が、
ひんやりとした手触りの文章が、
突然幕を引かれて、それでも余韻のある小説が好きだ

そういう本に、こうして出会うと、
ただただ、嬉しくなってしまうな
誰かに薦めることは、なかなかできないんだけれど


そしてその夜、ヘレンとわたしがベッドに横たわっていたとき、見晴らし窓ごしに野獣の姿を形づくる星々をながめながら、あなたがいままでパタゴニアの物語を話そうとしなかったことのほうが、あなたについて発見したどんなことより意味深いわとヘレンはいった。
彼女のいうとおりかもしれない。おかしなことじゃないか?人が心に秘めて話さないことがそんなにも重要だとは。人が話すことのほとんどすべてがカモフラージュか、ひょっとすると鎧か、さもなければ傷に巻いた包帯にすぎないとは。(63頁)


この一冊には
たくさんの物語が、散りばめられている
本筋と関係ありそうなものも、なさそうなものも
どれが虚でどれが実なのか、判然としないまま
主人公(とおそらく呼べるだろう人物)は、
(彼の言う)恋人、ヘレンと、物語のひとつを織りなす言葉を交わす

二人の会話には、鮮烈さはない
それでも、そのふしぶしが、
読んでいる最中に、そして読み終わったあとに、
何度もやってきて、ほのかな光と、濃い影を落とす

わたしには、この層が、ある種の救いになっているように思える
たとえ、そのすべてが、
存在するかわからないものだったとしても


それにしても、びっしり鉛筆が重ねられたデッサンのような
緻密な印象の小説だった
この感じは、ひとつひとつの文章から来ているんだろうな

ほかの作品も、全部読みたい
そう思う作家に出会った、よい夜


2017-09-19

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連休明けの雑務を、あれこれ終わらせて
とりあえず、ネイルへ

ネイリストさんが、伸びきった爪を見て
伸びるのが早すぎると、笑う
お客さんの中でも、一、二を争う早さだとか

やっぱり手先使うからかなあ、と、しみじみと言いながら
彼女は、手をとって、爪を整えはじめる
この、スッと仕事に入っていく瞬間が、好きだ


最初に出した、オレンジ色のダリアの案を
ふたりでいろいろ考えた末、捨てる
結局、シンプルに配色だけを取り入れて、初秋らしさを出すことに

ネイリストさんは、“よいものにならない”と判断すると
こうだから、やめたほうがいいと思う、とキッパリ言ってくれて
そのうえで、提案をいくつかしてくれながら
わたしの第二案、第三案を待ってくれる
色も、彼女の感覚とわたしの意見でバランスを取りながら
一色一色、すこしずつ混ぜて調整してくれて
わたしの手や、雰囲気、人となりから浮くと判断すると
躊躇なく、やり直す

プロだなと思うし、
それ以上に、細やかな、誠実な仕事だなと思う
わたしは、そんな彼女をほんとうに尊敬しているし、
見習いたいと、いつも、思っている



何度も行って、話をするうち
ネイリストさんは、わたしにとって
恋人以外で唯一、仕事のこと、理想のことなんかを
ざっくばらんに話せる人になった

彼女の人柄が好きで、信頼しているというのもあるけれど
職業柄なのか、聞き上手ということもあるし
親しい友人というわけではないという、距離感もあるし
彼女が、ひとりで仕事をする先輩だということもある
ネイルのときのわたしは、
実は、ほかの誰といるときよりも、饒舌だ

彼女と会うのは、ひと月に、3時間ほどだけれど
一週間分ほどは喋ったという気持ちで
いつも、帰り道は、心がクリアになった気がする


そして、きょうも
帰りは、足取りが軽く

秋色になった爪を眺めて
ほんのりと、明日が色づいたような
あたたかな気持ちになるのだった

2017-09-18

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窓のそとの台風が、往き
目が覚めると、ピカピカの昼

起きぬけから元気すぎる恋人と
三度目の正直のクレープ屋さんへ、出かける


これまで、二度も臨時休業の憂き目にあい
彼とは初めてだった、店

昼食だからと、海老クリームのガレットを選んだわたし
初回はやっぱりクレープでしょ、と言って
ベリーアイスクリームのクレープを選んだ彼
性格が出ている

これ全部食べるには何回来なきゃいけないかな、と
メニューを見た時点で、すでに楽しそうだった彼は
わたしの海老クリームを、横からウキウキとつついていた



買い物に付き合ったり
お茶に付き合ってもらったり
最近にはよくある、月曜祝日の過ごしかた

帰りに、花屋さんの前を通りかかると
彼が、ホラ選びなさい、と言う
いくらくらいまでならいいの、と訊くと
いくらでもどうぞ、そんな高くなんないでしょ、と笑われた

恋人は、わたしが花を好きなことを、よく知っていて
昔も、ときどき買ってきてくれていた
ドアを開けた瞬間の小さな花束、
俗っぽいでしょ、という言葉と、はにかんだ顔を
きのうのことのように、思う

これが好きであれが好きで、と、出来上がった束を見て
彼は、色のある花がないけど?と、また、笑っていた



恋人が帰ってしまったあとの、部屋は
いつも、耐えがたい静けさで
あらためて、彼の明るさを知る

一緒に過ごす時間が、楽しいほど
見送ったあとは、つらくなるけれど
まあ、これは、どうしようもないことだ


つぎに会うのは、たぶん、11月
その頃には、いろいろなことが、
きっと、うんとよくなっている

その時をめざして、また、明日から
わたしわたしの、日々を

2017-09-17

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こちらへ向かってくるという台風を、物ともせず
奈良へ、出かけていく

公園で、カフェで、車のなかで
美味しいものを食べ、ただお喋りするだけの、休日


恋人は、草食動物、とくに鹿を愛しているので
奈良公園では、きょうもウキウキ鹿せんべいを買い、
猛烈に追ってくる鹿を、持ち前の身のこなしでかわしていた
わたしが撮っていた動画を、あとで二人で見て
まるで飼育員みたいだと、ひとしきり笑った

10年前も、仲はよかったけれど
いつから、こんな風に、
小さなことで、よく笑うようになったんだろうな


2008年ごろよく一緒に聴いた曲を、カーステレオで聴きながら
わたしは、日本に居なかったあいだ、
どれだけこの人の表情を見逃してしまったのだろう、と
すこし、悲しくなった

けれど、なかなか一緒にいられなかったから、
今のわたしと、彼と、この気持ちのよい関係があるわけで
時間は、わたしたちなりのものを、ちゃんとくれたのだなと
安心したりも、する



台風の雨が、なかなか来ないので
奈良、橿原、明日香と、
結局、のんびりと移動しつづけた

晩ごはんは、近所でいつものラーメン
食べ終わって、車に乗り込むと、
ちょうど雨が、フロントガラスにぽつぽつとやってきた


すべてを吹き飛ばすような風に、笑いながら
雨を避けて、バタバタと家に駆け込む
やさしい一日の、終わり

2017-09-15

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荷物を、ちゃんと片付ける時間も気力もなく
それでも、スーツケースくらいは閉じねばと、
イギリスで買ってきたものものを出した

自分用のインスタント・コーヒーシロップ
それから、お土産にお菓子や紅茶
いつも持ち帰るのは、結局似たようなものばかりだ


大学の四年生のとき住んでいたアパートの
広いキッチンを、思いだす

食器や料理本、こういう食べ物なんかを雑然と積んでいて
まあ、なんでもない、普通のキッチンだったけれど
いまとなっては、恋しい



きょうも、お店には
たくさんの方が来てくれた
雑誌を見てくださった方、ツイッターをフォローくださっている方、
旅行で京都に来ている、恋人の同僚の方
妹、それから友だち


昔からの、インターネットの友だちが
来てくれたのは、ビックリしたし、すごく嬉しかったな
これまで何度も会っているのに、新鮮だった
彼女のまわりだけ、空気がぱあっと明るくなるのが
いつもの場所にいると、よくわかる

ノートをふたつ、顔の横に持って
どっちが似合う!?と言うので、笑っちゃった
どっちも似合うよ!

彼女は、すてきなイラストを描くので、
ノートも幸せだろうな、ほんとうに

夜、彼女からの、今日はありがとう、というメッセージを見て
こっちがありがとうやで、と、思いました
元気をもらった、時間だった



わたしは、まだまだ
説明やおすすめが、下手で
とくに本は、端的に内容や感じたことを伝えるのが難しい
もっと特長があるのに、
読みたくなるような感想がきっとあるのに、と、思いながら
なんだか、頭も口も、うまく動いてくれないのだった

これまで、誰かになにかを薦める、ということから
わたしはすこし、距離をとっていたのかもしれない
自分の好みが、あまりに偏っているので
きっと相手も困るだろうというのが、いつも、頭の片隅にある

けれどやっぱり、頼んでもらえたときには、
ちゃんと言葉を尽くして、なにかを薦められる人になりたいな、と
店をはじめて、いまさら、思う


落ち込むこともあるけれど
いつかは、上手になれるように

また、あたらしい課題
すこしずつ、一歩ずつ

2017-09-14

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さてさて
今月はじめての、営業日

日に焼けないよう、かけていた布をとり
仕舞っていたものたちも、ディスプレイに戻す
ヨシ、と力を入れて
持ち帰った新しいものたちを、並べはじめる

何度か、電話が鳴る
目の前の大通りを、バスが通っていく
上階にある建築事務所の方たちが、
ぱたぱたと、お昼休憩から戻ってくる

平日のお昼すぎ
この、心地よい忙しさ、静かな時間が好きだ



きょうは、多くお客さまがいらっしゃって
ガサガサと荷物を開けるそばから、見てくださる方もいて
なんだか、フリーマーケットみたいで、愉しかった

それにしても、トラブルも多い日で
最初はカード決済のエラー
次に、レジのキャッシュドロアーが開かないという不具合
もう、軽いパニック状態になってしまい
持ち前の気弱さで、小さな失敗まで連発してしまった

キャッシュドロアーが開かなかったときには、
強制的に開ける方法がわからなかったので
近くのコンビニに小さなものを買いに行き、おつりをつくった
その後は、とりあえず開けはしたものの、
また開けるとなると、レジごとひっくり返さなくてはいけないので
解決するまで、ちょっとドロアーを開けたまま営業
きょうのうちの店は
おそらく、日本でいちばん不用心な店だったにちがいない

しかし、ねえ
お客さまが良い方ばかりで、本当によかったけれど
備えあれば憂いなし、というか
備えておかなければダメだなと、しみじみ



すこしほっとした、夕方
そとに目をやると、空が美しくて
窓をそっと開け、写真を撮った
空気に触れてみると、もう秋のつめたさがあって
思わずもうひとつの窓も開け、吹き抜けるやさしい風を味わった

こういう、ふとした瞬間
ここに居ることを、実感する
来てくださる方には、もちろん、何にも押しつけたくないけれど
わたしは店主として、この場所に、
さらりと愛を注ぎたいなと思う


気持ちのよい場所にしたい
ものを、本を、愉しんでもらいたい
そんな、率直な願いを携えて
あしたも、お店に立ちます

2017-09-13

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二週間の日程を終え
京都へ、帰ってきた


ロンドン最終日は、予備日にしていたのだけど
結局、朝にも、夕方にも、仕事の予定が入った
それでも、どうしてもやりたいことは全部やりたくて
ふたつの予定の合間に、あちらへこちらへと走り
夕方の用事のあと、派手に体調をくずした

その日は、とにかく、天気が安定せず
激しい雨が降っては青空が広がっての、繰り返し
不安定な天気は、ロンドンの代名詞のようなものだけれど
それにしてもという荒れ具合で、雹まで降った
頭がガンガン鳴っていたのは、そのせいもあったにちがいない

それでも、濡れた道に落ちる木漏れ日は、
鮮やかで、美しかった


結局、いつもの倍は重く感じる身体を、持ち上げて
最後の最後まで、本屋で新刊書をチェックし
深夜に、荷物と4時間半にわたるデスマッチを繰り広げた

もう二度と、こんなことはやりたくないけれど
やってできないことはない
これも、きっと、経験



今年最後の、ロンドン訪問は
とても、とても良いものだった
仕事で、良い人たちに出会い、
新しいものも、古いものも、浴びるように見た

選ぶということの、傲慢さ
お洒落という概念の、軽薄さ
そこからは、なかなか逃れられるものではないけれど
こうして、誰かと言葉を交わすなかで、
わたしなりの目線でいいから、価値について、考えていきたいな

それを、来てくれる人に伝えたいわけじゃなくって、
自分のなかに、ただ、とどめておきたいだけなのだけど


記憶でいっぱいの、いつもの街で
こうして、また、時間を重ねていけること

何にもかえがたい充実を、現実に繋いでおけることの幸せを
あらためて噛みしめた、6日間だった