マリーズ・コンデ『わたしはティチューバ セイラムの黒人魔女』

わたしはティチューバ―セイラムの黒人魔女 (ウイメンズブックス (20))

わたしはティチューバ―セイラムの黒人魔女 (ウイメンズブックス (20))

虐げられし者

 この小説は、17世紀終わりにアメリカのセイラムで起きた魔女裁判の容疑者、ティチューバ・インディアンの一人称の語りという体裁をとっている。
 ティチューバは母親がアフリカからカリブ海のバルバドスへと渡る奴隷船の中で白人男性に強姦されたときにできた混血の子供である。それでも母親は同じ黒人奴隷の男性と事実上の夫婦関係になり、ティチューバは血の繋がっていない父親から愛情を受けて育つが、彼女がまだ子供のころ母親は主人を短刀で傷つけて縛り首になり、義父も自殺してしまう。
 一人ぼっちになったティチューバはママ・ヤーヤという魔術師に引き取られて魔術を学ぶが、ママ・ヤーヤが死ぬとジョン・インディアンという黒人奴隷と夫婦になる。そして主人に連れられてボストンからセイラムへと移り住むのだが、そこでティチューバは他の二人の女性とともに魔女の嫌疑をうけ、逮捕されてしまうのである。このように、これは一人の黒人女性の受難の物語だ。

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