100sが『世界のフラワーロード』でオマージュした原風景

100sの『世界のフラワーロードを語るキーワードとして「オマージュ」という単語が浮かぶのですが、ちょっとした企みも含めて上手くいっていると思います。
恐らくこのアルバムは中村一義時代のファンからすると歓迎される作品になると思いますし、100sのアルバムでは希薄に感じた歌の部分は見事に蘇っています。インスト3曲を含む全16曲はコンセプトアルバムに近い形で配置されており、サウンド的に統一感がある(というか実際に全体的に似たイメージの曲が多い)。そして全編に渡りサウンドはリラックスした印象で、100sとしてのアルバムで感じていた張り詰めた緊迫感は感じられません。『世界のフラワーロードはどのメディアでも『金字塔』という中村一義のデビューアルバムと比較されているのですが、バンドサウンドだけどバンドサウンドらしくない部分を除けば、個人的にはやっぱり100sのアルバムでしかなく、オマージュされている部分を除けば比較の対象としてはピンと来ませんでした。
このアルバムは開かれて明るい序盤のパートと中盤の中村一義でない100sのメンバーが作曲したアクセントとなるパート、そして終盤のエンディングの様な曲ばかり続くパートと大きく分けて三つのパートに分かれているのがキモで、この絶妙なバランスが『世界のフラワーロードを統一感のあるアルバムとして成り立たせています。オープニングの「出口VS入口」から「世界の私から」中村一義自身が過去のキャリアを客観視しているオマージュが効いている「魔法を信じ続けているかい?」、シングルにもなってた「そりゃそうだ」が並んでいる最初のパートから強力で、「そりゃそうだ」がこのパートの締めとしてアルバムの中では輝きを増していて、このアルバムの主役を担う存在になっています。先述の通り、中盤は小野眞一池田貴史の両名の楽曲があったり、「セブンス・ワンダー」「I Am the Walrus」のサンプリングが使われていたり、良いアクセントになっている為、ともすれば単調なアルバムになる可能性もあっただけに、重要な役割を果しているのではないかと思います。終盤の楽曲は全てがエンディングに相応しいと思えるような楽曲で、『世界のフラワーロードの辿り着きそうで辿り着かない出口が描かれているように感じます。これだけ終りそうで終らないと普通だと少々くどい感じがするのですが、それを感じさせないのはそのフラットなサウンドプロダクションの賜物だと感じますし、結果的にハッとする魔法の様なフレーズは無くとも、アルバム全体の雰囲気とクオリティが高いところで結実している為、アルバムとしては高いレベルの作品になっていると思います。個人的には前作『ALL!!!!!!』よりも好き。

今作『世界のフラワーロードの初回盤はSHM-CDで発売されているのですが、劇的に音質が良いかはちょっと判断がつき難いかも。サウンド面では特筆する点は少ないのに耳にすっと入ってくるのは、SHM-CDの効果なのかもしれないですが、正直この辺は通常盤と聞き比べてみないと良く分からないですね。

世界のフラワーロード(DVD付)

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