Mくらが生まれた話・変遷の話

今でこそたくさんの皆さんにご使用いただけるようなったMくら。ここに至るまでの変遷をちょっとまとめておきたいと思います。


Mくらは、見たまんまニョロ系クランクなので、管釣りルアーとして初めてニョロっと誕生したココニョロの延長線上にあると見られるかもしれませんが、それは半分だけ正解。ニョロ系ルアーが釣れるという実績だけではMくらは誕生できませんでした。それにはもう一つの大きなとあるルアーの存在がありました。


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私が自分でルアーを作るようなったのは大学生の頃(25年ほど前)だったでしょうか。当時はバス釣りで使うミノーを試行錯誤しながら作っていました。そんな中で管釣りでも使えるルアーも作ってみようと思い立ち、まずは丸っこいクランクを作り始めました。色々作っては試すものの、「すごく釣れる!」というようなものは出来ませんでした。


時は流れ、九重フィッシングリゾートの古味さんがココニョロという"名機"を生みだしました。(古味さんの創造力、すごい!)
その当時、私は朝霞ガーデンさんのワンメークトーナメントによく出ていました。そこで会うF島さんというかたがいて、この九重さんのルアーのテスターのような役割をになっていました。F島さんと釣りをする中で、ココニョロ(もちろん当時は「発泡ウレタン版」です)のスゴさを目の当たりにしました。ただ、この時点では自分の中では、まだ何も"弾けて"いませんでした。

もう一方の流れで「でかいフラットフィッシュのアワビ貼りは異常な集魚力がある」という話がありました。前回のクロニクルの中で紹介していたフラットフィッシュは、写真で見ていただくと一目瞭然の極小タイプ。管釣りでプラグを投げる人にはこのサイズがポピュラーでした。
これに対して下記の写真のような巨大なフラットフィッシュ(X4とかX5といったサイズです)にアワビシートを貼ったものがすごっく釣れると・・・・。当時、加賀フィッシングエリアに通っていた一部の釣り人の間でのみ話題になっていた「シークレット」でした。自分でルアーを作るだけでなく、小細工することも大好きだった私はこれを試してみて、その釣れっぷりを体感してしまいました。(最近始められたかたは、こんな話は聞いたことがないかと思います。)

このアワビ貼りフラットフィッシュ、サイズの大きさを感じさせないくらいマスがバイトしてきます。この事実から「管釣りルアーって、小さければいいってもんではないな。むしろ大きなものの方が釣れる場合が多々ある」ということに気がつきました。


ここで上記の2つが融合し自分の中で"弾け"ました。「長くて大きいルアーってスッゴク釣れるんじゃね?」と。
そして新たな試行錯誤が始まりました。色々作っては試し作っては試し・・・・。たくさん作りましたよ〜。


ということなので、私の中でMくらの中に「透けて見える」のは(どちらかというと)いつも「フラットフィッシュ」なんです。

上記写真の中央にある白と茶色の長〜いやつは全長13cm(リップ含まず)くらいあります。「いくらなんでもこんなに長くちゃぁ釣れないだろ」と思いましたが、KSFではあっさり釣れちゃいましたし、夕方の朝霞さんでも釣れました。


長いのは長いので実際に釣れますし、その形状の異質さからも非常に面白いのですが、しかし、何より作るのが大変(^_^;)。
そこでちょっと短い85mmや70mm前後のものを作って試していました。(当時のラインナップがまだケースに収まってました。)

そんな中、たまたま宮城アングラーズヴィレッジ(MAV)さんで使った「85」が激ハマり状態になる場面に遭遇しました。「おっ、やっぱりこの長いのスッゴク釣れる!」と確信しました。
当時MAVさんのローカル大会でこれを使っていたところ、「それ釣れますね〜」と声をかけてくれたのが、今やこの業界では超有名人になった○ブルアーのS井さんでした。(その頃は"○れない君"というハンドルネームでブログを書いてらっしゃいました。S井さんとはそこからのお知り合い状態に。)
この頃の名前は、今の「Mくら」ではなくて(みいらが作ったクランク、ということで)「ミラクラ」と呼んでいました。


そして、その後も改良が続き、色々なタイプを作っていきました。
MAVさんでは、当然長いものが結構釣れたのですが、短いのも試していて、45mmサイズが何故か爆発的に釣れることもわかりました。チーフのY田さんにサンプルをお渡しして釣ってもらったところ、釣りのお客さんの前で8連荘だか9連荘したとか・・・。これをきっかけにMAVさんからまずは「45」が世に放たれました。
この際に名前を変更。「み(M)いらが宮(M)城アングラーズヴィレッジさんのメ(M)インポンドで爆釣するために作ったクランク」ということから「Mくら」と命名しました。



その後もあれこれ作ってみる遊び心は収まらず、長いクランクを作るのが楽しくて、「もっと釣れるのが作れるのではないか」と色々と妄想が広がりました(笑)。
そんな中で、「(長ければ)太くても釣れるかも」と考え、今のMくらのラインナップでいうところの「FAT」(太くて、アタマからお尻までほぼ同じ太さ)が完成。実際に小菅さんで使ったときにこれがまたよく釣れました。「これもありだな」と。


このFAT、釣れるには釣れるのですが、いかんせん重い・・・・。太いがゆえにボディー素材のバルサの量が多くなり、その浮力を打ち消すためのオモリの量を増やす必要性から全体が重くなり、スプーンの管釣りのタックルで投げるにはちょっと苦しい感じでした。
そんな中で、「お尻が太くてもアタマを小さくすれば全体のバルサ量も減って浮力が落ちるので、オモリも少なくてすむなぁ」と考え、アタマが細くてお尻が少しぽっちゃりしている「A Little Fat」(通称ALF)形状に至ります。

このような過程でたどり着いた「ALF」なのですが、副産物として「スッゴク釣れる!」という最大の"収穫"を得ることにつながりました。正直言ってこれは偶然です。(この「偶然」にたどり着くまでに、一体何個のMくらを作ったことやら ^_^; )
ルアービルドを職業としてやっているかたですと、かなり明確な泳ぎのイメージをもってそれを実現できるような形状だったりウエイト配分だったりを具現化するのでしょうが、私は素人。色々試す中でこの「アタマが細くてお尻がぽっちゃり」が生み出す絶妙なロールアクションと水押しが今までのルアーにない集魚力を生み出すことにたどりついたのです。
リップの形状も、色々と試したのですが、バリエーションを作れば作るほど、(ボディー形状とウエイトとの組み合わせもあいまって)「何がいいのか分からない(どの部分が釣れる要素を引き出しているのかわからない)」状態になってしまい、結局長めのストレートリップで固定しました。しかし偶然にもこれがまた「釣れる相乗効果」を出してくれたと思っています。


そんなこんなで、私の「こんなので釣れたら楽しいだろうなぁ」という妄想が色々な形になって今のALF形状になっています。上記の通り最初から簡単に生まれた形ではなく、「回り道」しながらたどり着いただけに私自身非常に愛着があります。


最近ではこの「ALF」が主力であることには変わりありませんが、それでも(アタマからお尻まで同じ細さの)「Slim」形状や、アタマ側が太くてお尻がほっそりしている「ノーマル」形状は今でも十分戦力になっていて、こちらを好んで使って下さるかたもいらっしゃいます。(本当にありがたいことです。)