このブログは、旧・はてなダイアリー「檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編」(http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama-memo/)のデータを移行・保存したものであり、今後(2019年1月以降)更新の予定はありません。

今後の更新は、新しいブログ http://m-hiyama-memo.hatenablog.com/ で行います。

人と概念:暫定

まとめになってないし、裏を取ってないけど、とりあえずバラバラと書いておく。後で確認してリンクとか付けよう。人名はできるだけ片仮名書きするが、発音が見当もつかないのは原綴。[追記]人物リンク集 - 檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編参照。[/追記]

トゥラエフ

最近、気になりだしたのはウラジミール・トゥラエフ(Vladimir G. Turaev)、フランスにいるらしいけど、名前は旧ソ連系だな。TQFT、結び目、量子不変量、低次元幾何あたりが専門領域か。コボルディズムを小さく切って解析する方法を使っているようだ、その簡単なケースが輪切り図とトゥラエフ移動(小島さんの本ISBN:4254116020)。この手法は図式の書き換えや正規化に役立ちそうだ。

ストリートとケリー

最近やっと[JSV96] "Traced Monoidal Categories"のコピーを入手した。このなかで例に取り上げられていたのは、行列の直和に関するトレース(普通のトレースではない)で、クリーネ・スターを使って表現できる。これは、カザネスク/ステファネスク/ハイランド/長谷川の定理の応用として知っていたことだが、話題としては面白い。

どうでもいいが、2005年のロス・ストリートの還暦祝いはStreetFestって“祭り”だったらしい。ストリートはオーストラリア圏論グループ(バタニンもいるかも?)を率いているが、ケリー(オーストラリアにいた)の弟子らしい。そのケリーの[KL80]はマクレーンの還暦に捧げられたようだ。

東欧の人々

ステファネスクには何度か言及している(Network Algebra, UML-RT)。カザネスクはステファネスクの師匠スジだと思う。エルゴット、ブルーム、Esikなども東欧の人のようだ(たぶん)。ブルームはエルゴットの選集を編集している。Iteration Theories(Bloom/Esik)は読んでみたいが高い、、、

ハイランドと周辺の人々

マーチン・ハイランドは本来は論理学者なのかな? コンピューティングサイエンスでもとても有名だけど。長谷川さんはおそらくハイランドに教わっているだろう。角谷さんて人は長谷川さんに教わったらしい、ハイランドの孫弟子ってことか。MS研究所のニック・ベントンもハイランドの弟子だと思う。プレモノイド圏はハイランドとベントンが一緒に書いているし。ハイランドやベントンはエジンバラだと思うが、MS研究所もエジンバラで、地理的には近い(お隣?)みたい。

アブラムスキーと周辺の人々

オックスフォードのサムソン・アブラムスキー(Samson Abramsky)は、以前は領域論、並行処理、ゲーム・セマンティクスとかやっていた。対話圏(interaction categories)なんてのもあったな。最近は、Bob Coecke 、ロス・ダンカン(Ross Duncan)と量子計算/量子論理をやっている。

セリンガー(selinger)も高水準量子計算のリーダーだが、ラムダ計算や継続に関してもイロイロやっている。

マーク・ホプキンスとコゥゼン

マーク・ホプキンスは生きているらしい(笑)。物理のほうが本職か? "markwh04 AT yahoo DOT com"で彼に届くかもしれない。

マークはデクスター・コゥゼンとパリクの定理の論文を書いている。コゥゼンといえば、クリーネ代数を定義したり、正規言語の代数を公理化し、その完全性を示したりした人だ。問題意識とか手法とかはユニークで面白い。が、どうも記述スタイルが僕の趣味に合わない。とても気になるけど苦手なタイプ。

日本人:白旗、長谷川

コンパクト閉圏の論文を書いている珍しい人・白旗さん。彼の問題意識はコンパクト線形論理だったのかな。任意の圏A上に作ったCompact Multicative Linear Logic CMLL(A)の完全なモデルが自由生成コンパクト閉圏F(A)であり、それは別な構成によるG(A)と同じだということを示している。つまり、次の3つの構成法が同じだということだろう。

  1. 論理系CMLL(A)をもとにした一種のリンデンバウム構成
  2. 忘却関手 CompactClCat→Catと随伴になる自由構成
  3. ケリー/ラプラザにより与えられた具体的で幾何学的な構成

さらに、F(A)=G(A)は、“Aの拡張であるコンパクト閉圏全体の圏”の始対象になる。アブラムスキーの高水準量子論理でも、圏に対するシーケント計算を使っている。ただし、アブラムスキーの文脈ではシーケントは不十分で、証明ネット(スライスの寄せ集め)を使っている。

長谷川さんは言うまでもなく、我が国計算科学のホープだ。

所感

僕が、クリーネスターや不動点を経由してトレース付きモノイド圏/コンパクト閉圏に興味を持った理由のひとつに、マーク・ホプキンスの指摘がある。曰く、「形式言語理論は場の量子論だ」

トレース付きモノイド圏は、ブレイドや結び目と明らかに関係している。結び目のジョーンズ多項式作用素環から出てきたらしい。作用素環といえばフォン・ノイマンノイマン量子力学 -- 一方で、ブレイドっぽい図式を駆使してアブラムスキー・グループは高水準量子計算を構成している。それはファインマン図式とも似ているし、[JSV96]はペンローズヒエログリフテンソル計算にも影響を受けているし。

システムとコボルディズムの関係は、コラディニ(Corradini)、ガダッチ(Gaddacci)、ケイティス(Katis)、サバディニ(Sabadini)、R.F.Cウォルターズ(R.F.C. Walters)も指摘していた。その指摘はTQFTを彷彿とさせる。幾何学的定式化ならば、プラット(Vaughan Pratt)、ガウチャー(Philippe Gaucher)、ゴーバルト(Eric Goubault)、グランディスMarco Grandis)などもやっている。

TQFTはコボルディズムの上で構成されるし、低次元トポロジーと関係し、結び目の量子不変量を与える。思うに、Kleenean TQFTとでも呼ぶべきTQFTのバリアントがあり、それが形式言語理論を与えるのだろう。system with boundaryが位相空間の代わりとなる。入れ子オートマトンが現れるが、これはバンドルみたいなものだろうか。