檜山正幸のキマイラ飼育記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2008-06-23 (月)

モノイド閉圏、オダンゴ、留め金、池袋

| 09:43 | モノイド閉圏、オダンゴ、留め金、池袋を含むブックマーク

「バエズとステイのロゼッタストーン論文と現代のヒエログリフ」で紹介したロゼッタストーン論文では、絵図・絵算(pictorial calculation)が使われています。それほど変わった描き方ではないのですが、留め金(clasp)という小物が面白いので紹介しておきます。

内容:

  1. 要約・モノイド閉圏
  2. オダンゴ図
  3. 指数と留め金
  4. 左指数、右指数、池袋

●要約・モノイド閉圏

非常におおざっぱに、モノイド閉圏のおさらいをしておきます。

通常のモノイドとよく似た積(monoidal product)を持つ圏がモノイド圏(monoidal category)です。デカルト積(cartesian product)、つまり直積を持つ圏はモノイド圏の例です(「デカルト圏入門」を参照)。集合圏Setはデカルト圏の例であり、もちろんモノイド圏の例でもあります。

モノイド積(デカルト積とは限らない)を「×」で表すとします。対象Bによるモノイド積 (-)×A に随伴があるとき、それをAによる指数(exponent, exponential object)と呼び、普通は(-)A と書きます((-)は対象を表す無名変数です)。BAを、矢印を使って (A→B) と書くこともありますが、矢印は他の意味で多用されるので、この記法は混乱しがちです。普通の矢印「→」に代えて、先がマルになった「--o」のような形を使うこともあります。つまり、BA = (A --o B)

モノイド圏Cのどんな対象Aに対してもその指数(-)Aが存在するなら、指数演算(exponentiation)が定義可能です。指数演算を持つモノイド圏をモノイド閉圏(monoidal colosed category)、または単に閉圏(closed category)と呼びます。

一般的な概念 特殊化された概念 典型的な具体例
モノイド積 デカルト積(直積)集合の直積
モノイド圏 デカルト圏 直積を考えた集合圏
指数 デカルト指数 関数集合
モノイド閉圏 デカルト閉圏 関数集合も考えた集合圏

指数と閉圏に関しては次のエントリーでも書いています。

●オダンゴ図

バエズ&ステイの図式法は、基本的には箱と線(boxes and wires)を使うものです(「デカルト閉圏におけるお絵描き計算の基礎」も参照)。ただし、箱が四角ではなくて丸印になっています。f:A→B, g:B→C, h:D→E として、f;g と f×h は次のような感じです。

僕が上のような絵を描いていたら、次男が寄ってきて「あー、オダンゴだ」と。「オダンゴかいて何してんの?」と聞かれたので「計算」と答えると、「オダンゴが全部で何個あるか計算するんでしょ、足し算すればいいだよ」と教えてくれました。それ以来、バエズ&ステイ流の描き方を僕はオダンゴ図と呼んでいます :-)

●指数と留め金

以下、指数には記号「--o」を使います(理由があります;すぐ下を読めば分かります)。

オダンゴ図には、留め金(clasp)という小物が登場します。C(A×B, C) = C(B, (A --o C)) (ここの=は同型)が随伴を与えるとして、f:A×B→C に対するカリー化 f^:B→(A --o C) を次のように描きます*1

Aのワイヤー(向きが逆になります)とCのワイヤーを束ねている小物が留め金です。この図式法のミソは、(A --o C) という記法と絵図が一致することです。

さらに面白いのは、C(A×B, C) = C(A, (C o-- B)) という記法を導入して、左右が逆になった留め金が導入できることです。左右対称な記号「--o」と「o--」が、絵図のそれと一致します。

多くのケースでは「--o」だけで十分なのですが、モノイド積×がまったく可換ではないこともあります。「まったく可換ではない」とは、対称構造(対称性;symmetry)も組み紐構造(ブレイディング;braiding)も導入できないときです。この「まったく可換ではない」ケースでは、(A --o C) と (C o-- A) は別物として扱う必要があります。

●左指数、右指数、池袋

左からの掛け算 A×(-) の随伴が A --o (-) 、右からの掛け算 (-)×A の随伴が (-) o-- A ということになります。A --o (-) が (-)A の意味だとするなら、(-) o-- A は A(-) とでも書くことになるでしょう。

左からの掛け算と右からの掛け算が別物である圏では、左指数と右指数が必要になります。(A --o (-)) = (-)A が左指数、((-) o-- A) = A(-) が右指数です。左指数が右肩指数で、右指数が左肩指数ってことになります。なんて紛らわしいんだ! でも前例はあります。池袋駅東口に西武線、西口に東武線です。

*1:この図の画像ファイル名はオダンゴカレー(odango-curry.gif)です。