檜山正幸のキマイラ飼育記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2010-07-02 (金)

パズルのネタ元と答:ぬあんと、コンヌ御大

| 13:20 | パズルのネタ元と答:ぬあんと、コンヌ御大を含むブックマーク

この2つの記事のネタ元と答をバラします。次の論文です。

著者(共著)はアラン・コンヌ(Alain Connes)です。すごくえらい人には敬称が付けにくいので、原則「コンヌ」と記しますが、敬称を付けるときは「御大」ということで。

Characteristic 1, entropy and the absolute point について書きたいことはまだあるんですが、とりあえずはパズルの答を。


掛け算から足し算を作る方法は、上記論文に驚くほどバカ丁寧に書いてあります。予備知識を少なくしようと、大変な気の使いようです。が、おそらくTeXのマクロに埋め込まれている日付を直してないのでしょう、今年(2010年)の論文なのに、日付は1997年。そのへんはコンヌ御大、まったく気を使ってないようです。

アラズモガナかも知れないけど、以下にコンヌ&コンサニ論文の引き写しをします。原文と微妙に違っていますが、本質的な違いはありません。

まずはサクセッサの公理を再掲します。掛け算は「×」を省略して並べる(ときに空白をはさむ)だけ、xの逆数はx'と記しています。

  1. [sの公理1] sは全単射である。
  2. [sの公理2] s(0) = 1
  3. [sの公理3] s(x s(yx')) = x s(s(y)x')

このなかで、全単射性は引き算を作るときに必要なだけなので、「引き算いらね」として[sの公理1]を使うのはやめます。

以下、定義する足し算を A(x, y) と書きます。

  1. [Aの定義1] y = 0 のときは、A(x, y) := x
  2. [Aの定義2] y ≠ 0 のときは、A(x, y) := y s(xy')

y ≠ 0 ならば、y'(yの逆数)は存在するので、Aはwell-definedです。

上記のごとく定義したAに対して、次を示します。

  1. [結合律] A(A(x, y), z) = A(x, A(y, z))
  2. [単位律] A(x, 0) = x
  3. [可換律] A(x, y) = A(y, x)
  4. [分配律] x A(y, z) = A(xy, xz)

単位律

[Aの定義1]から即座に、A(x, 0) = x は出ます。特に、A(0, 0) = 0 です。可換律があれば、A(0, x) = A(x, 0) = x ですが、可換律がなくても、[Aの定義2]から、A(0, y) = y s(0 y') = y s(0) = y 1 = y となり、他の法則に頼らなくても次は成立します。

  • A(x, 0) = A(0, x) = x

分配律

分配律は意外に簡単です。

z = 0 のケース:

   x A(y, z) 
 = x A(y, 0) 
 // [Aの定義1]
 = x y


   A(xy, xz) 
 = A(xy, x 0)
 // x 0 = 0
 = A(xy, 0)
 // [Aの定義1]
 = xy

よって、
 x A(y, z) = A(xy, xz)

z ≠ 0 のケース:

   x A(y, z) 
 // [Aの定義2]
 = xz s(yz') 
 // yz' = x(yz')x' を使う
 = xz s(xyz'x')
 // z'x' = (xz)'
 = (xz)s(xy(xz)')
 // [Aの定義2]を逆向きにたどる
 = A(xy, xz)

可換律

[sの公理3] s(x s(yx')) = x s(s(y)x') のyを0にすると:

  • s(x s(0)) = x s(s(0) x')

[sの公理2] s(0) = 1 と使えば:

  • s(x) = x s(x')

この公式を使って可換律を示します。y = 0 のときの A(y, x) = A(x, y) は単位律から自明です。単位律は可換律に依存してないので、ここで単位律を使ってもOK。

y ≠ 0 と仮定して:

   A(x, y)
 // [Aの定義2]
 = y s(xy')
 // 上の公式
 = y (xy')s((xy')')
 // 結合律と (xy')' = x'y
 = yxy' s(x'y)
 // yxy' = xyy' = x と可換律
 = x s(yx')
 // [Aの定義2]
 = A(y, x)

結合律

結合律が一番難しいです。まずは予備的な計算。

 x ≠ 0 を仮定して:

   A(A(x, y), z)
 // [可換律]
 = A(A(y, x), z)
 // [Aの定義2]
 = A(x s(yx'), z)
 // [Aの定義2]
 = z s(x s(yx') z')
 // z'の位置を変える
 = z s(xz' s(yx'))

 z ≠ 0 を仮定して:

   A(x, A(y, z))
 // [可換律]
 = A(A(y, z), x)
 // [Aの定義2]
 = A(z s(yz'), x)
 // [Aの定義2]
 = x s(z s(yz') x')
 // zの位置を変える
 = x s(s(yz') zx')

x, zがゼロになる特殊ケースは別に扱うことにして、x ≠ 0 and z ≠ 0 を仮定した上で次が示せればいいことになります。

  • z s(xz' s(yx')) = x s(s(yz') zx')

[sの公理3]を記号を変えて再掲すると:

  • s(X s(YX')) = X s(s(Y)X')

X := xz', Y := yz' と置くと、YX' = (yz')(xz')' = yz'zx' = yx' なので:

  • s(xz' s(yx')) = xz' s(s(yz') zx')

この等式の両辺にzを掛ければ求める等式となります。特殊ケースは個別に確認してみてください。